誕生日記念配信 4

「さてさて、ここらで一旦凸は休憩にして、実はお友達諸君にサプライズがあります!!てことでちょっと待っててね~」


【コメント】

:サプライズ??

:最近恥ずかしがってか恋人呼びしてくれないの寂しい

:なんだろう

:どうせまたなんか変なことだろ()

:なんであれ楽しみ


配信画面から一度自分のアバターを消す。黒のパーカーを来ている狐耳の少女のアバター。大きい声に反応して狐耳が出るなんて設定もあったが、最近では配信開始数十秒でコメントにツッコんだりで大声を出していたりするので実質没設定みたいになっている。


次にVTuberのアバターを管理するソフトを操作し―――――――――



「さてさて、お待たせ!!てなわけでみんなへのサプライズはこちらです!!」


そう言って、つい数日前に加瀬さんから送られてきた新しいアバターを少しずつ表示させる。

なんと、早くも新衣装を仕立ててもらったのだ。

これまでの割と地味めな衣装とは対照的に、結構派手めな衣装だ。リアルの私だったらほぼ着ないであろうもの。

地雷系という表現が近いだろうか、黒を基調に白いフリルやリボンなどで装飾が施されており裾が大きく広がっているワンピース。いわゆるメイド服に近い印象だ。髪も服装に合わせてか、以前の茶髪より少し暗めの色になっている。


……。まさか私がモモカちゃん見て「こんな服着てみたい」なんて思ったからこの衣装が仕立てられた……ってわけじゃないよね。ねぇ加瀬さん?


【コメント】

:かわいい!

:イメージ変わる

:モモカちゃんとの合わせよさそう

:メイド服大好き

:こんなメイドが家にほしい

:性癖すぎる


「いやぁ、私も最初見たとき震えたよね。流石に可愛すぎて自分で自分に惚れそうだよ」


そんなことを言いながら笑ってみたり困ってみたりと表情を色々変えてみる。どんな表情にしても可愛くて、いつまででもこうやっていじっていられそうだ。ちなみに狐耳はもうデフォルトで出てる仕様に変更されたようで、ふわふわの耳がぴんと立っている。


「てことで新衣装のお披露目もできたところで凸待ちを再開していこうと思うんだけど……え?」


ふとBiscordの画面を見て困惑する。私は今ミラライブのサーバーのVCチャンネルの一つに入って凸してくれる人を待っている状態なのだが、同じVCに謎の人が来ているのだ。というかアイコンも真っ黒、名前が空白になっていて誰か分からない。


「ど、どなたですか……?」


『サキ、20歳の誕生日と新衣装おめでとう!いやぁ、気づいたらあっという間に成長してるものねぇ……』


「え、マジで誰ですか??」


恐らく聞いたことのある声だ。ただ、多分ミラライブのライバーではない。加瀬さんや梨沙でもない。ただ、絶対に聞いたことのある声……誰だ……?


『全く、実の母の声が分からないなんてどうなの?』


……。


…………?


「何やってんのお母さん!?!?!」


【コメント】

:神回ktkrwwww

:おかしいだろww

:まさかのゲストすぎるww

:実母草


うわ。言われてみたらそうだ。どう考えてもお母さんの声だ。いやそんなことはどうでもいい、いやどうでもよくはないんだけど。


「え、まずなんでお母さんがミラライブの鯖にいるの???」


『あんたのマネージャーさん?に、早紀にドッキリ的な感じで凸行ってほしいからって招待されたのよ』


「あの人マジで終わってるだろ」


なんで部外者をサーバーに招待してるんだよ……。


『大丈夫大丈夫、これ終わったらすぐ抜けるから。てか早紀、配信じゃあんな感じなのねぇ』


「配信者やってる人が親に言われたくない言葉第一位だよそれ。ガチで今胃が痛いよ」


『しょうがないわねぇ。お母さんが適当に雑談でもして配信繋いどくからトイレ行ってきていいわよ』


「なんでちょっと配信慣れしてるの???」


『あれ?知らなかった?前あんたの会社の人に作ってもらったアバター使って時々お母さんも配信してるのよ』


「マジで知りたくなかった事実すぎる!!!え、何やってんのマジで。てかよく私に気付かれないでできるね???」


『だってあんたが学校行ってる間にやってるもん。家族に配信見られるなんて嫌に決まってるじゃない』


「そうだね!!家族に配信なんて絶対見られたくないよね????」


『そういえばこの前早紀が配信でやってたASMRだけど』


「ねぇ本当にバカじゃないの!?」


【コメント】

:かわいそうすぎるwwww

:不憫ここに極まれり

:サキママのASMRはいいぞ

:サキママのASMRの安心感やばくて寝落ちに最高

:親にASMR聞かれてるのほんま草

:地獄だなぁ


「ちょっと待って、さらっとコメント流しそうになったけどお母さんASMRやってるの??」


『あら恥ずかしい。これでも結構人気なのよ?今度早紀にも直でやってあげようか?』


「それなんて拷問??」


何が悲しくて実母に直でASMRされにゃならんのか。そもそもお母さんがASMR配信者だなんて知りたくないことこの上ない事実を知らされなければならないのか。


「頼むからもう帰って、これ以上はもうお母さんのことが怖くなってくるよ」


【コメント】

:実母にASMRされる配信待ってます

:拷問すぎて草

:直ASMRいいなぁ

:実母でさえなければ最高なのに


『しょうがないわね。ちなみに私からのプレゼントの日本酒は冷蔵庫の中に入れてあるから気が向いたら飲んでみてね、それじゃバイバーイ』


…………。


「今すぐここ数分の記憶を完全に抹消したい」


すごく疲れた。

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