誕生日記念配信 3

「あぁぁぁ……水が沁みるぅぅ……」


イナ先輩のアドバイス通りにお水を飲んでなんとか酔いがマシになってきた。

私があんまりアルコールに強くなかったのも意外だったが、何よりユウカ先輩は許さん。ぼーっとしててはっきりとは覚えてないけどイナ先輩に何か変なこと言った気がする。全部ユウカ先輩のせいだ。そういうことにしておこう。

……今後しばらく切り抜きとかは見ないようにしよう。世の中には思い出さない方がいいことだってあるんだよ。うん。


『よっ、サキちゃんやってる?』


「居酒屋のノリで入ってこないでよマイカちゃん」


次に来てくれたのはミラライブ随一の酒カスことマイカちゃん。裏で話したり遊んだりはしているが、何気に配信上で話すのは結構久し振りだったりする。


「てかもしかしてもう飲んでる?」


『サキちゃん。私が素面で配信なんてできると思ってるの?』


「知りたくなかったよ同期のそんな事情」


【コメント】

:最後の素面配信いつだっけ

:飲酒歌枠で頻繁に喉潰してるイメージしかない

:信じられるか、こいつ最初はクールキャラでいこうとしてたんだぜ

:最後の素面配信は4か月前だってよ、終わってる


確かに私も時々マイカちゃんの配信の切り抜きを見かけることがあるが、サムネイルのマイカちゃんは大体お酒と一緒に映ってるし頬は紅潮してる気がする。こんな大人にはなりたくないね。うん。


『サキちゃんも一度社会の荒波に揉まれてみたら分かるよ、お酒でしか解決できないリーマン困難』


「そんな未解決問題みたいな言い方しないで!?てかマイカちゃんって元リーマンだったの??何気に初めて聞いたんだけど」


『あ、うん。ベンタブラック企業で働いてて一か月で退職願とウイスキーの空き瓶を上司に叩きつけて辞めた』


「そんな純度100%のブラック企業存在するんだ……」


『あ、そだそだサキちゃん誕生日おめでと~!今後飲酒歌枠コラボしよっ!』


「わぁ酔っ払いとのキャッチボール難しいなぁ。歌コラボはいいんだけどお酒飲んでやるってなると喉が心配だよ、マイカちゃんそれでいっつも潰してるイメージあるし……」


『あのねサキちゃん、筋肉を付けるためには筋トレするでしょ?喉もそれと一緒で一度破壊して再構築した方が強くなるんだよ』


「少なくとも酒で破壊するのは絶対違うし定期的に喉潰れて配信できなくなるのはVとしてかなり致命的すぎる気がするんだけど」


【コメント】

:マイカちゃんと一緒だとサキちゃんがボケる隙ないのほんと草

:なんだかんだで常識人なのが災いしてる

;もはや完全に酔い覚めてそう

:いつか素面マイカちゃんとコラボしてくれ()


「あ、コメントで言われて気づいたけど確かにマイカちゃんにツッコミ入れてたら酔いがどんどん覚めていく」


『そうなのよ、私もおつまみのみんなと漫才してたらどれだけお酒があっても足りなくなっちゃう』


ちなみにおつまみというのはマイカちゃんのファンネームである。初配信の次の配信でファンネームを決める時にお酒を飲んでいて、流れとノリで「みんなと話してたらつまみなくても酒が進むわ、てかみんながおつまみみたいな感じだしもうファンネームこれでいい?」みたいな感じで雑に決まったらしい。終わってるとしか言いようがない。


「てか今日私ツッコミしかしてない気がする、てか今日のメンツが今んとこバケモン揃いなだけだとは思うけど」


『え?でもさっきのイナ先輩の凸のとき……あ、いやなんでもない忘れて』


「え何、正直自分でも何言ってたかはっきり覚えてないんだけど私何か変なこと言ってなかった?言っちゃいけないこととか失礼なこととか言ってなかった?」


『あ、大丈夫大丈夫。むしろありがとうございますというか切り抜き楽しみだなというか』


「えぇ……怖いんだけど……今からでも切り抜き禁止にしようかな」


『それは世界にとって重大な損失だから私が全力で止めます』


「そこまで!?」


【コメント】

:ウワァテガスベッター

:間違えて切り抜き動画UPシチャッター

:確かに重すぎる損失になってしまう

:これだからサキちゃん推しは辞められない

:定期的に飲酒してくれ(懇願)


「順調に切り抜き作業が進んでるようで何よりだよちくしょう!!!!」


『あ、私が贈ったお酒は飲んでくれないの?』


「あー、申し訳ないんだけどこれ以上は怖いから一旦今日はやめとこうかなって。イナ先輩にもいろんな種類のお酒を同時に飲むのは辞めといた方がいいって言われたしね」


『うわ、サキちゃんがまるで常識人みたいなこと言ってる。鈴子先輩かよ』


「最大級の悪口やめてもらっていい???あとどこからどう見ても常識人なんだが!?」


『冗談はよしこさんだぜ』


「時々マジでマイカちゃんの年齢がわかんなくなるんだよなぁ」


『初配信の自己紹介に書いてあったでしょ、もう数百歳って設定だって』


「設定ってはっきり言っちゃったらダメなのよ」


【コメント】

:悪口に先輩を引き合いに出すなwww

:初期設定なんてあってないようなもんだろ

:サキちゃんも前に「狐って設定」って言ってたぞ

:クーポンからの歌姫からの酒カス芸人とかいうレインボーロード

:そう考えると二期ってすげーよな、全員初期設定通りのキャラなんだぜ


『ま、私があげたお酒は今度オフコラボでもして一緒に飲もうか。うへへ』


「なんでみんな私とのオフコラボを取り付けようとするんだ」


『そりゃ当たり前でしょ、よっぱっぱ~なサキちゃんをリアルで堪能できる機会なんてもうご褒美でしかないんだから』


「だからそういうこと言われると怖くて躊躇っちゃうんだって!!!」


『あ、お酒なくなっちった……。んじゃ、さいなら~』


「あ、ちょっと急に……ってもういないし……。毎度ながら思うけどよくあの性格で最初クールキャラでいけると思ったよなマジで」

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