ミタマちゃんとゾンビを蹂躙するよっ! 4
『サキちゃん触手行くにゃ!』
「分かってる!」
素早くキーボードとマウスを操作し、異形の怪物の触手攻撃を当たり判定ギリギリで回避。そのまま、晒された一瞬の隙に弾丸を叩き込む。
私が操作するジェームズの手の銃から放たれた弾丸は導かれるようにしてまっすぐにドレイク博士の眉間へ。
この数時間の戦闘で見極めたほんの一瞬の隙。それをなんとかモノにし、確実にダメージを与える。
しかし。
「みーちゃん!次、そっちに薙ぎ払い行くよ!」
確実に数百の攻撃を届かせているのに、未だにボスが倒れる気配はない。
『分かってるにゃ!』
ミタマちゃんの操作するハドソンがジャンプした次の瞬間、ドレイク博士の触手が消失する――――否、そう思わせるほどの速度で横薙ぎに振るわれる。
どう考えても見てから回避など不可能な速度。その上、その威力は恐らく必殺の一撃。
【コメント】
:なんでモーションわかるのかなぁ…
:全部一緒に見える俺はおかしいのか?
:そもそも反応速度がバグなんだよなあ
:この二人がボスって言われたほうがまだ納得できる
:何時間も攻撃してるのに一発も当てさせてもらえないボスさん涙目じゃね
:ボスがんばれ(震え声)
:ボス応援し始めたらおわりなんだよなあ
:この主人公たち何者なのよ
:多分彼らもびっくりしてる、「なんで俺らこんなに動けるんだ!?」って
:ゾンビゲーにエピタフは必須だった…?
:スタンド使い前提のゲームとは()
もちろんだが、私達二人にコメントを読む余裕などない。
ただモーションの微妙な違いを観察し、躱し、カウンター。そんな作業ゲーの配信が何時間も続いていた。
そして、遂に。
「ぐああああああ!!!」
私とミタマちゃん、二人の弾丸が同時にボスの頭部に直撃した直後にムービーに切り替わった。
「お!第二形態かな!!」
『その可能性は想定してなかったにゃ!ていうかもうコレ以上は集中力がもたないから投了するにゃ!』
体中からグロい液体を垂れ流し、肉片をぶちまけながらどんどん小さくなっていく異形の怪物。
苦しむようなうめき声を上げ続ける怪物の眉間に、二人が銃口を向ける。
パパァン!!
ほぼ同時に放たれた銃弾は狙い違わず命中し、今度こそ絶命した怪物は力なく倒れる。
もう動かないことをゆっくり時間をかけて確認し、フーっと息を吐いて銃を仕舞う二人。背中合わせにその場に座り込み、急に解けた緊張から大声で笑い合う。
私もマウスを離して腕を伸ばして大きく背伸びを。流石に疲れた。何時間も気を張りっぱなしでワンミスすら許されないなんて鬼畜ゲーはかなり久しぶりだ。
ゆっくりと暗転していく画面。
もしやこのまま特殊エンディングか?そんなことを考えつつ、ストレッチで凝り固まった身体を解しながら画面を見る。
《PUSH!『SPECIALENDING』:1P》
「――――は?」
素の「は?」が出た。あり得ないタイミングでの唐突なQTE。
慌ててキーボードを叩き始める頃にはもう遅い。
そのままエンディングに向かう流れだった画面が逆再生のように戻り、再び二人の姿が映し出される。
そして。
「…ん?何の音だ?」
「さあ…?でも、俺たちが入ってきた扉から聞こえるような…」
聞こえてきたのは、ドタドタという複数の足音。
…いや、複数なんてもんじゃない。何十、何百という足音、何かが踏まれて潰されるような音、そして聞き慣れたうめき声。
もう、この後の展開なんて見なくても読める。
「あー…ごめん」
『…サキちゃんは悪くないにゃ。こんなクソゲー作った会社が悪いのにゃ』
私達二人は、笑い声を聞きつけて集まってきた大量のゾンビによって肉片にされるジェームズとハドソン、そして画面に血の色で大きく書かれた『GAMEOVER』の文字を無心で眺めながら、そう零すのだった…。
『《狐舞サキ/山神ミタマ》ゾンビを蹂躙するよっ!《ミラライブ三期生/Vtuber》』
明くる日。
無気力に眺めていたネットニュースでとある一文を見つけた。
それは、『THE COLLAPSED CITY』の運営会社からの一言。
「先日VTuberの狐舞サキさんと山神ミタマさんが討伐したドレイク博士ですが、本来は弱体化アイテムを見つけてからじゃないと倒せない仕様になっているはずなのです…。ゲーム内のある場所で拾える『特別抗体』というアイテムを使用してからじゃないと1ダメージしか与えられない仕様だったのですが…まだまだ甘かったですね。もっと難易度上がるようにバランス調整させていただきます」
捨てた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ほい、ゾンビゲー編終了です!どっかのゲーム会社さんが作ってくれないかな、こんな鬼畜ゲー()
お知らせです。以前から近況ノート等で告知していた新作小説『撃ち抜かれた殺し屋』を4月1日から投稿開始いたします。プロローグだけ投稿済みなので、もしよろしければブクマ等よろしくお願いいたしまする。
あ、この小説に関して「こんな話書いてほしい」とかありましたらどしどしご意見くだされ。
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