はっぴーばれんたいんっ!!

バレンタイン前日


『《狐舞サキ/深山早紀》#バレンタイン 明日のバレンタインに向けてチョコを作るよ《ミラライブ三期生/実写》』


【コメント】

:実写キター!

:料理回かぁ

:ここにきてまさかの料理は下手っていうオチが!?

:絶対上手い

:ほしい…


「はい、ということで今回は実写でお送りします!適当に色々雑談しながら明日サリーに渡す友チョコを作っていくよー!」


画面に映し出されているのは、自宅のキッチンとそこに立つ私の姿。


身バレをきっかけにVR計画が実行されて以来、Vとしての配信も生での配信も需要があるということで目的に応じて使い分けてたりする。


アバター無しで配信するということに始めは少し恥ずかしく思ったりもしたが、今ではもう吹っ切れて普通に配信できるようになっている。


「えー、もちろん今回の配信でサリーへのチョコを作っているということを当人は知りません!そして、絶対に配信を見に来ないようにと念押ししてあります!明日はサリーを家に呼んで、サプライズでチョコを渡そうかと思っております!」


【コメント】

:ちょ…こ…?

:ナニソレオイシイノ?

:ワシらは所詮、先の時代の敗北者じゃけぇ…

:あーあ、敗北者が…

:去年は一個もらえた(母チョコ)

:母をカウントしてる時点でもう

:彼女にもらえたらそれで十分っすわぁ

:なんかおるぞ

:運営BANしろ


「コメント欄で色々言ったり言われたりしてる人がいますが、とりあえず作っていきますよぉ!!そうだね…まずはチョコの準備かな!」


そう言うと、私は大きな金属製のボウルにお湯をたっぷりと注ぎ込む。その上に小さめのボウルを浮かべ、チョコをその中に入れれば湯煎の準備は完了だ。


「チョコはこのまましばらく放置かな。そうそう、実は今回ね、全く完成形考えてないんだよね。どうせ配信しながら作るんだったらみんなの意見を元にして作ろうかなって思ってさ」


【コメント】

:チョコケーキとか?

:造形の話じゃないの?

:龍とか

:友チョコw

:シンプルにハート型とか


「龍!?もうそれプロの領域じゃん!?うーん…普通にチョコ作ってもインパクトに欠けるからなぁ…やっぱチョコケーキが安パイかなぁ」


そう言って、台所中かき回して材料を色々集める。


「卵とグラニュー糖と薄力粉、牛乳と無塩バターを用意します。まずは卵を白身と黄身に分けて…」


台所の縁にコンコンとぶつけてヒビを入れ、パカッ。ペットボトルを使うと簡単に白身と黄身を分けられるらしいのだが、生憎空いてるペットボトル容器がないので殻を使っていい感じに分離させる。


「まずはメレンゲ!そのためには…全力で混ぜる!」


泡立て器を持ち、ボウルの中の白身を全力でぐるぐるとかき混ぜる!


コツは、空気を混ぜ込むイメージ。そして、とにかく早く、速く混ぜること!


【コメント】

:あざやかな手付き

:卵代 ¥300

:いや草

:手慣れてんなぁ

:メレンゲとか、男の俺でも腕パンパンになるのに…

:はやい…

:え、機械使わんの…?


「機械?機械なんか甘えじゃあ!自分の手で、想いを込めてかき混ぜるからこそ愛の詰まった美味しいお菓子が出来上がるんだよぉ!うぉぉぉぉぉ!!」


グラニュー糖を数回に分けて入れつつそのまましばらく混ぜていると、液状だった卵の白身が綺麗にクリーム状に。


「はあ…えーっと…次は卵黄を入れて…うん、混ぜるんだよ。しかも確かさっきより速くやらなきゃいけなかったような気が…」


【コメント】

:おつかれww

:しんどそうw

:だからミキサー使えってw

:まさか一人で手動で全部やる気か?w

:腕ががががが

:なんか、みんな菓子作りの知識あるの草


「ふう…いくぞー!うおぉぉぉ!!」


かき混ぜる。ただひたすらにかき混ぜる。


腕が痛くなってきた。


左手に持ち替えて混ぜる。


そもそもこんな配信に需要があるのかわからなくなってきた。


画面に映っているのは、ただ女子大生が生地を混ぜてるだけの映像。


誰がこんなの見て得するんだ?


てか恥ずかしい。なんでひたすらにぐるぐるしてるところを人に見られなきゃなんないんだ。


「配信切っていい?」


【コメント】

:どうした唐突にwww

:なんでやw

:切らないで ¥5000

:なるほど ¥10000

:そういうことか ¥3000

:こういうこと? 10000


うおおおお!?


「違うよ!?誰がスパチャ投げろって言った!?お金の無駄遣いやめな!?…あっ」


ダメだ、ミスった。


そう思ったときには…もう遅かった。


【コメント】

:了解 ¥10000

:もはや確信犯なのでは ¥10000

:うわーだまされたー ¥10000

:やらかしたな ¥5000

:あーあ ¥2000

:禁句を…w ¥10000


「あーもういいや!投げたきゃ勝手に投げろ!こちとらいちいちツッコんでる余裕なんかないんじゃ!」


スパチャの確認をしながらも、私は生地をずっとこねこねしてる。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



生地を作る工程を全部実況なんてしてられないので、ある程度説明をすっ飛ばしながらひたすらに材料を加えてまぜまぜ…。


完成した生地を容器に入れてオーブンで数十分間焼き、焼き加減をチェックしてから取り出す。


「おおお!めっちゃ綺麗にできてるよ!ほら見て!初めてにしては上出来じゃない!?」


私の手元にあるのは、完璧に仕上がったふわっふわのスポンジケーキ。我ながら最高の出来だと思う。


【コメント】

:完璧じゃ

:なぜ失敗しない

:初めてなのに…

:俺の作り方とは何が違うってんだ…

:失敗しない理由はただ一つ、『サキちゃんだから』

:全面的に同意

:サキちゃんがケーキ作りごときで失敗するわけないんだよなぁ


ふむふむ、コメント欄のみんなもいい出来だと思ってくれてるみたいだね。


「じゃあ、次は溶かしたチョコレートを全面にかけて…と。とりあえずは完成!あとは冷やして固まってからデコるだけだね!明日の配信で最終形をお披露目するから観に来てね!じゃあ今日はここまで!みんな、大好きだよーっ❤」


『《狐舞サキ/深山早紀》#バレンタイン 明日のバレンタインに向けてチョコを作るよ《ミラライブ三期生/実写》』



そしてバレンタイン当日。



『《狐舞サキ/深山早紀/サリー》#バレンタイン はっぴーばれんたいんっ!!《ミラライブ三期生/実写》』


「どもー!あなたの恋人、サキだよー!!そしてっ!」


「ども!何も知らされずに家に呼ばれたサリーでーす!」


【コメント】

:何も知らないのか

:サプライズなんね

:てぇてぇの予感

:わくわく


「さあさあ!今日はバレンタインということでね!」


「こんな日に配信見に来てるってことは、みんなの今日の成果は0だったんだってはっきりわかるね!」


「サリーよ、それだけは言っちゃいけない」


【コメント】

:…

:べ、別に

:そんなことないし?

:ごめん、彼女にもらった

:はいサリーちゃんアウト

:彼女持ちは死ね

:帰れ

:ばーかばーか

:みんなひどくて草ww


「まあまあ、今日サリーを呼んだのはね、ちょっとしたプレゼントを渡そうと思って!!」


「チョコ?」


「まあ、そんなとこ!聞いて驚け見てもっと驚け!なんと私、サリーのためにケーキを焼いてみたのです!!」


「おー!!わざわざ私のために!?めっちゃ嬉しい!ぼろぼろの生ゴミだったとしても私は涙を流して食べるよ!」


「それってどう考えても嬉しさから来る涙じゃないよね!?はい、これだよ!」


そう言って、隠してあった白箱を取り出して梨沙に手渡す。サイズは一辺30cmほどの立方体。もちろん、中には昨日作ったチョコケーキが入っている。


「でかっ!開けていい?」


「もちろん!早く開けてみてー!」


「おーけー!オープンっ!!…。……」


【コメント】

:すげ

:店のやつやん

:メッセージカードまで…

:ていうか龍

:え、やば

:造形こまけえ

:プロやん

:プロ以上じゃね


そう!昨日の晩、結局頑張って龍彫ったのだ!


「まあ、龍とはいえチョコの塊をナイフで削るだけだからね。見た目は結構いい感じだけど実際の苦労はそうでもないんだよ」


「そうでもないわけがないよね!?私がこれ作ろうと思ったら一週間以上はかかるよ!?」


最終的な造形としては、真ん中にチョコで作られた東洋風の龍。その手前にホワイトチョコで『Happy Valentine’s day, Sally!』と書かれたプレート。外周にはムース状にしたチョコとチョコチップでそれっぽい装飾をしただけ。


「どう見てもお店で何千円もするやつなんだけど!?」


「ないない。材料費は多分1000円もかかってないよ?」


「そういう問題じゃなくて!!」


【コメント】

:予想通りっちゃ予想通りだわな

:いつもの

:安定の

:めっちゃ美味そう

:これ一人で一晩で作るとか…

:やっぱりバケモン


「とりあえず一口食べてみ」


「え、食べるのが憚られすぎてこのまま持って帰って永久に飾ってたいんだけど?」

「食え」


せっかく作ったのに食べてもらえずに放置とか一番辛いやつなんだけど。


「じゃあ一口…」


フォークを差し込んで、一口食べる梨沙。もう、これだけで一枚の絵になれるくらい可愛い。


「どう?」


「美味しいに決まってるでしょうが!!!!!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「そういえば、同期の二人とかにはチョコあげたの?」


「同じようにホールケーキ作って、8等分してそれぞれの名前入れたメッセージカード乗せてミラライブ本社に持っていったよ。社長が言ってたけど、それぞれのマネージャーさんがみんなの家まで持っていってくれるんだってさ」


「女子力と行動力がバケモンすぎる」


【コメント】

:いつもの

:サキちゃんファンの人たち、狂喜するんだろうなぁ

:このままの勢いでリスナー全員分のケーキ作ってくれ?

:視聴者5万人超えな件

:えっぐいw


「さて、今日の目的は達成したわけですが!この後どうする?」


「どうって…私はこのまま雑談配信でもしてたいかな」


「お、いいねー!今夜は寝かさないぞっ!」


「センシティブが過ぎる」


「なんで!?」


このあとめっちゃ雑談した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



バレンタイン特別ストーリーであります。

お菓子作りもできる早紀…というより、神龍みたいな感じの龍をチョコとナイフだけで作る早紀。バケモンが過ぎる。


どうだろう、てぇてぇは薄め、ネタもそこまで無し、ただバレンタインだから書いただけのお話は。なんとなく使命感ってやつで書いただけ☆


さてさて、皆さんの今日の戦果はいかがですか?彼女からもらった人、友達からもらった人、親からしかもらえなかった人…。

人それぞれのバレンタインですが、そもそもバレンタインなんて日本のチョコ企業の陰謀が発祥なんです。元々はバレンタインさんとかいう名前の聖人の誕生だったか死没だったかの日で。そんな日をこんなに大々的にイベントにするんだったらもう祝日にして学校休ませr(殴


まあ、冗談はさて置きお知らせでも。サキがパラレルワールドにてVRゲームを始めました。ぜひそちらもチェックしていただけると嬉しいです!


https://kakuyomu.jp/works/16816452218560553435

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