最終話 VR計画、実行
VRというのは、最近流行りのバーチャルリアリティのことだろうか?あたかも自分がゲームやらの世界に入り込んだかのように錯覚できるという…
「これの正しい読み方は、『
「だっせぇ!!」
…ていうか、バーチャルでもリアルでもってどういうことだ…?
「今回の三期生メンバー、おかしいと思うところがあっただろう?」
おかしいと思ったところ?
「いや、特には…」
「…そうか、では質問を変えよう。コメント欄で、何か違和感を覚えてる人はいただろう?」
「えーと…」
三期生…マイカちゃんとミタマちゃん…歌…ゲーム…バーチャルでもリアルでも計画…
「Vじゃなくてもええやん?ってことですか?」
よくよく考えてみたらマイカちゃんの歌唱力半端ないしみーちゃんも馬鹿みたいにゲーム上手いわ。プロ以上とかなんとか言われてたし。
「…まあ、端的に言うとそういうことだ。とりあえずこの計画書の概要を読んでほしい」
「は、はい」
『VR計画とは、Vtuberとして配信を行うのとは別でリアルでもそれぞれの特技を活用して有名になろうという計画である。
その第一段階として、ミラライブVtuber三期生の採用条件として『誰にも負けない特技』を追加する。配信でその特技を利用する一方で、それぞれに独自の方法でその特技を世に知らしめる。例:歌が得意なのであればCDを出す、等
また、『リアルでも』とある通りVtuberとして配信する以外の活動ではアバターは使用しない。本名での活動にするか否かは本人の判断に任せるが、基本的には顔出し前提の計画である。(応募要項にも、『顔出しを厭わないこと』を条件として追加すること)』
…つまり、結論から言うと三期生はそもそも顔出し前提で集められた、ということになるのか…。そういやマイカちゃんもみーちゃんも可愛いわ。あれだったら顔出ししたらめっちゃ人気出そうだわな。
「まあ、遅かれ早かれ君達は身バレする予定だったというわけだ」
「…あれ、私加瀬さんにスカウトされたんでその応募要項見てないんですけど?契約書にはそんな記述なかったと思いますが…」
「「ははははは…」」
「笑ってんじゃねえ!!」
え、てことはマイカちゃんもみーちゃんもこの計画のこと知ってたってこと?知らなかったの私だけ?
「いや、この計画に関しては本人達には知らせていない。ただ、一人だけを除いて…な」
「一人?」
…誰だ?そもそも三期生は三人だけだ。そのうち一人だけが知ってるとすればどっち…いや、
「ふっふっふ…さすがのサキ君でもその『一人』が誰かは分からないようだね」
「あー…うん、梨沙だ」
「なんで分かったんだ!?」
「はあ…梨沙さん、入ってきて下さい」
「おっじゃましまーす!」
「…おう」
…もう、すべてを理解したあたりから私は机に突っ伏してぐでっとしておる。
そんな私を尻目に、部屋に入ってきた梨沙は私の隣の席に座った。
「ていうか早紀、いつから気付いてたの?」
「確信…っていうか気付いたのは今さっきだけどさぁ…よくよく考えてみたら色々おかしいんだもん…。今朝だって高畑さんが警察署長兼ミラライブ社長だって初めて知ったはずなのに全然驚いてなかったしさ…そもそも私がVになることをめっちゃ推してきたのも梨沙だしね…最初からこの人達の息かかってたんでしょ…?」
「おー、流石は早紀だね!早紀にDMが来る前にね、私の方に先にDM来てたんだよ。『SAKIさんをスカウトしたいんだけどDM送らせてくれないぴえん』ってね」
「その件に関しては本当にごめんなさいとしか」
後で見返してみたら一週間ぐらい放置してたもん。加瀬さんホントごめんなさい。
「高畑さんもちょっと怪しかったですもん。Vやってること知ってるんならなんで授賞式のときにあんなにマスコミ入れたんですか?って。もっと小規模にやるべきでしたよ…」
「ぐっ…」
「はあ…では、私からのお話です。今回、私が身バレしたことによってファンの人が詰めかけてくる可能性があると聞いたのですが。その辺に関してはどうすれば?」
姿勢を正して椅子に座り直し、真剣な顔で話を切り出す。
「…ああ、そうだったね。まずは、我々の方から今回の計画について正式に発表する。その後、三人にはそれぞれで顔出し配信をやってもらう。詰めかけてくる可能性のあるファンというのは『Vtuberの素顔を一度でいいから見てみたい』という人がほとんどだからそれだけでもかなり抑制できるはずだ」
「では、その『ほとんど』以外の人に関しては?私達Vtuberや、梨沙に危害を加えられる可能性があるのでは?」
「ああ、それに関しては私が署長としての権力を全力で濫用して対処させてもらうことになる」
おい、そこでドヤ顔すんじゃねえ。
「マイカ君とミタマ君にも、先程彼女らのマネージャーを通してこの件は伝えた。マイカ君は、『シラフで出なくていいなら大丈夫です』と。ミタマ君は『全然問題ないにゃ!』と快い返事をくれたよ」
…そうですかい。二人がいいなら私も文句は飲み込める。
「あ、もう一つ」
「なんだね?」
「マイカちゃんは歌上手いし、みーちゃんはゲームのプロになれるぐらいの実力です。でも、私は?特技なんて特にないですが…」
「全部」
「全部!?」
「ああ、マイカ君が今度CDを出すことになっているのだがそれは君とのデュエットで出す予定だし、マイカ君が出場するPABGの世界大会はDUO枠で登録してある。その他にも、四期生も同じような感じで募集するからそのときには君に頑張ってもらうことになる」
「頑張ってもらう!?」
曖昧すぎない!?
「え、予定が被っちゃうこともあるのでは…」
「気合で」
「馬鹿じゃないの!?そもそもマイカちゃんとかミタマちゃんみたいにプロレベルの実力の人が更に追加されるかもしれないっていうのに私がその全員と同じレベルで渡り合えるって保証は!?」
「まあ、早紀だしできるでしょ」
「「それな」」
「それなじゃねえよ!!!」
…まあ、うん。始めっから私がどう言おうと既に拒否権なんてないって分かってたよ。
「あ、そういえば私のお母さんには?」
「既に伝えてある。いやー、まさか手のつけようがなかったあの子がサキ君のお母さんとはね…」
「高畑さんがお母さんの暴走族時代の取り調べやってたの!?」
まさかそれをダシにして承諾するように脅してたんじゃないだろうな…。だからあんなに協力的だったのか…?
それを訊くと目を逸らしやがった。おい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふう…ラスト1パにゃ。サキちゃん、場所は分かるかにゃ?」
「うーん…多分みーちゃんの左にある木の裏に一人と、正面の岩陰に一人かな」
そう言うと、私とそれを聞いたみーちゃんはそれぞれの方向に一個ずつグレを投げる。
ドカァァン!!
『#1/50』
「おおおおお!!!やったにゃ!これでアジア大会制覇にゃあ!!!」
「そうだね!やったっ!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここの歌詞なんだけど…」
「んー…なら、こういうメロディーに変えたらいい感じに繋がるんじゃない?」
「お、さっきのとことの対比にもなっていい感じ!さすがサキちゃん!」
「ふっふっふ…って、ちょ、胸揉むなぁ!」
二人でじゃれあっていると、血相を変えたマイカちゃんのマネージャーさんが部屋に飛び込んできた。
「お、お二人のファーストシングルがオリコン一位を達成しました!!!」
「ほ、ほんと!?」
「マイカちゃん!やったね!!!」
「うん…サキのお陰だよぉ…」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「せんぱーい、ここの設定なんスけど…」
「あー、えっとね…あ、ここならこっちの言語を応用したほうがシンプルにまとまるんじゃない?それに、こっちだとラグが発生してバグりやすくなるからあんまりオススメできないかな」
「おー、なるほど!ならこっちも変えたほうがいいかな…?こんな感じで…」
そう言うと、画面に勢いよく文字が打ち込まれる。
「そうそう、そんな感じ!いっちゃんさすが!」
「えへへ…先輩に褒められちゃったっス…」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『《狐舞サキ》チャンネル登録者数100万人突破記念配信!色々やるよーっ!《ミラライブ三期生/記念配信》』
配信開始予定時間になった途端、おっそろしい勢いでコメントとスパチャが流れていく。コメント内容を目で追うことなど当然できない。待機人数は何十万人だったか…まあ、そんなことはどうでもいい。それだけたくさんの人が私の配信を見に来てくれているのだ。ならば、私がみんなにできることはただ一つ――――
「みんな、こんばんはー!あなたの恋人、サキだよーっ!」
―――さあ、配信を始めよう。
完
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
はい、今回で『器用貧乏な私、Vtuberになって…』は一旦完結となります。
とはいえ、これからはもう更新しねえ!ってわけじゃないので。アフターストーリー的な感じで配信内容とか誰かとのコラボとか記念日配信とか思いついたらその都度投げていく感じです。
正直に言いますと、ただ時系列やらなんやらを考えるのが面倒くさくなったので一旦切るだけです。あと、本編さえ終わらせたら毎日投稿の
といった感じで、多分これからも続くのでもし興味のある方がいましたらちゃんとブクマ貼って更新されるのを楽しみに待っててくださいね☆
それと、前ちょっと言ったけどもしかしたら『器用貧乏な私、◯◯…』的な感じで早紀と梨沙だけ固定でパラレルワールド的な別の小説書くかもです。『VRゲームを始めて…』とか『異世界に召喚されて…』とかね(適当)
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