第10話 凸!? ①

『《狐舞サキ》今日も配信するよー!とりあえずは雑談かな?…あと、昨日の配信でのことについて少し…《ミラライブ三期生/新人V》』

3.2万人が待機中 18:00に配信予定


【コメント】

:トレンド一位様だ

:最後のアレはあかん

:冗談抜きで尊死した

:あの声であのタイミングのあのセリフは犯罪

:新人の二回目の配信でこの同接とか前代未聞だろ


「えーっと…もう既に話題に上がっていますが、まずは昨日の配信の最後のセリフについて釈明させていただきます」


【コメント】

:?

:?

:釈明?

:ああ、尊死させちゃってごめんなさいってか

:一晩にして大量殺人鬼となった女

:うむ、謝れ。そしてお詫びにもう一度あのセリフを所望する。

:アンコール!


「えっとですね、当時の私は初めての配信の楽しさのあまり少しテンションがハイになってしまっておりまして…。ふと、『こんな終わり方したら面白そう』と思いついたことをそのまましてしまいまして…大変申し訳ありませんでした…」


【コメント】

:何故謝られてるんかさっぱりわからん…w

山神ミタマ🔧:可愛いは正義にゃ!

:可愛ければ全てが許されるのだ!

Sally:私サリーさん。今あなたの家の前にいるの。


「か、可愛い言うなぁ!…ていうか待って、おっそろしいコメントが見えたんだけど気の所為?」


【コメント】

:メリーさん的なのが来てるな

:確かこの子リア友じゃ?

:まさかリア友とのオフコラボ!?

:この子昨日もいたよな


「えーっと…」


と、その時。


ピンポーン!


「ちょっと待って、マジで来たの!?」


【コメント】

:マジだwww

:来たぞww

:急展開ww

:今のところ伝説しかない


「え、マジで?」


困惑する私。今日は来る予定とかなかったはずだけど…


ガチャッ


「おっじゃましまーす!」


「あら、いらっしゃい」


「お母さんのガードが甘ぇ!」


今明らかにお母さんが玄関に出る前に自分でドア開けて入ってきてたよな!?


【コメント】

:来るぞ

:お母さんwwww

:www

:dkdk

:wkwk


ばたーん!


「うおー!早紀!元気かー!」


「馬鹿なの!?」


【コメント】

:wwwwwww

:マジかw

:マジで来るとはwww


え、ちょ、なんで来たん?


「あ、ここ座るね。あとさ、予備のマイクある?私も配信入りたいんだけど」


「あるけど…え、本気?」


「うん、リスナーのみんな、わたしが入ったら迷惑かな?」


梨沙が私がつけてるマイクに口元を近づけてそう言うと、



【コメント】

:問題ない

:大丈夫だ、問題ない

:むしろ大歓迎

:ていうかサキちゃんのせいで薄れてるけどこの子も結構可愛い声してる

:元気ハツラツって感じがよき

:マネさんに怒られたりせんの?


「そ、そうだ!マネージャーさんが許さないでしょ…あ、Biscord来てる」


もう内容など察しが付いているのだが、一応内容を確認する。


加瀬:『問題なかとです!』


「何故に九州弁!?」


「ちゃんとマネさんに確認取ってから来てるから大丈夫だよ~。あ、マイクこれだね?これをここに挿して……ちょっと待ってね、ここの設定をいじって……。どう?聞こえてる?」


【コメント】

:手慣れてるww

:配信者?

:なんでそんな慣れてんだよww

:あ、声聞こえてるよ


「よかった!じゃあコラボ中ってことがわかるように画面になんかはっつけとくね」


そう言う梨沙は勝手にネットで画像を拾って配信画面に貼り付けた。


「…これ、いいの?」


「いいんじゃない?」


梨沙が貼ったのは、某テーマパークの有名なネズミのキャラ。一応目元に黒い線が入ってはいるが…


【コメント】

:うん、アウト

:垢BANされるから今すぐ消しなww

:www

:友達のチャンネル削除させに来てて草


うおおおおおい!!


わたしはマウスを梨沙から奪い取ると、全速力でその画像を削除して代わりに戦車の画像を貼り付けてその上にポップなフォントで『Sally!!』と打ち込んだ。


「…なんで戦車なの?」


「ん?ああ、分かる人には分かるネタだよ」


「…?」


【コメント】

:英語弱い勢か、仲間だな

:そんなことよりサキちゃんが英語もできる説出てきたぞ

:まさか、ね…

:これで実は帰国子女ですとか言われたらもうお手上げだぞ

:さすがにね…

:Hello. How are you, Saki?


「I’m great. It’s all thanks to you guys!(私は元気だよ!みんなのお陰でね!)」


「そういえば、早紀って中学生の頃イギリスに住んでたことあるって言ってたっけ」


「お父さんの仕事の都合でね。私の高校受験のタイミングでこっちに帰ってきたから今は単身赴任してるけど」


【コメント】

:あーうん、だろうね

:なんとなくわかってたわ

:もはやテンプレの流れになりつつある

:何気に発音がめちゃくちゃネイティブなんだが?

:サキちゃんだから英語程度できるの当たり前なんだよなぁ

:なんか致命的な欠点が見つかったら面白くなりそうだ

:ていうか友達ほしい引きこもり設定はもう見る影もないのね


「あ、友達といえばサリーさんや、なぜ家に来たのかえ?」


「なんで急におばあさん口調?あ、そうだ!私はね、早紀の可愛さをみんなに知ってもらうために来たんだよ!」


【コメント】

:ガタッ

:ガタタッ

:よし、聞いてやろうじゃないか

宇天イナ🔧:既にてぇてぇんだけどなぁ

:一期生来てんじゃんww


「うお!?イナパイセンじゃないっすか!ちーっす!」


「早紀…1ミクロンも先輩に対する敬意がこもってないよそれ…」


宇天イナ。ミラライブの一期生にして『ミラライブの母』と呼ばれる存在。とにかく母性がすごい。というか、ミラライブにいる常識的な人がイナ先輩のみというだけの話だが。


【コメント】

宇天イナ🔧:あ、今の私はただのリスナーの一人だと思ってていいよ

:プレッシャーすごくて草

:後輩に手を出すのが早いなぁ

:どうにか常識枠を他にも確保したいんだろ

:……手遅れだろ

:……だな


「あれ?なんかわたしが常識ないみたいになってる?」


「あーもう話逸れてる!本題に戻すよ!」


「私とサリーが…対々和とかいう戯言?」


「戯言言うなぁ!!あと対々和じゃなくて尊い!!んんっ!まず、昨日この人トレンド一位になったじゃないですか」


【コメント】

:咳払い助かる

:そーいや忘れてたわ

:あまりに自然にトレンド入りしてたもんな

:待って、アレ思い出して耳が

宇天イナ🔧:あれはやばかった、いいぞもっとやれ

:視聴者の耳にダイレクトアタック!


「そうそう。それでこの人さ、今朝私に言われるまでシイッター見てすらなかったから知らなかったんだよ」


【コメント】

宇天イナ🔧:本人知らなかったのか…

:まじかよwwww

:まあ、TLに自分のことしか並んでなかったら恐怖だわな

:どっちのアカウントも全然更新されてないもんなw

:まあいいか、こっちも楽しいし

:ほほう


「んで、今朝伝える前にね、私が後ろからこっそり近づいて耳元で『愛してるよ』って言ってやったのよ」


【コメント】

:てぇてぇ

:サキサリてぇてぇ

:なるほど仕返しか

:俺も昨日死にかけたから仕返ししていいか?

:待て、これ以上は口角が

宇天イナ🔧:てぇてぇが過ぎる

:これ以上は死人が出るぞ!


「そしたら早紀、『ふにゃ!?』って言って飛び上がってさ。もう完全に腰抜けてんのよ」


「……シテ……コロシテ……」


梨沙が笑いを必死に堪えながらそう言う。

ちなみに私はこの話が始まった辺りから恥ずかしさのあまりずっと顔を伏せている。


【コメント】

:www

:てぇてぇ

:てぇてぇ

:サリーちゃん強いw

:この子もカワボだもんなぁ

:俺が同じことされたら心臓発作で緊急搬送される自信しかない

:サキちゃんwwww


「んで、トレンドのこと伝えたらもう顔真っ赤よ。大学遅刻するわけにはいかないから私が肩貸して歩いてたんだけどね」


【コメント】

:てぇてぇが過ぎる

:ニヤニヤが止まらない

:誰か、誰か絵で再現してくれ

:駄目だ、てぇてぇさのあまり目が潰れるぞ!


「しばらくして元気になってきた早紀が、私の方向いて『ありがとう』って!そこで大事なのは、その時の早紀の顔よ!今みんなが観てるアバターあるでしょ?昨日もコメントで言ったけどリアルの方も同じような顔してるのよ!しかもちょっと照れが残ってるから赤らんだ顔でね!?さすがにケモミミはないけどそんなの誤差でしかないってレベルよ!?いくら見慣れてる私でも流石にきゅんとしたよ!!てことでFA待ってます」


【コメント】

:そういえばそうだったな

:冗談とかじゃなさそう

:サキちゃんだから十分ありえる話だな

:待って想像してみたらてぇてぇってレベルじゃなかったんだが

:数億で売れる絵が描けそうじゃ

:サリーちゃん配信慣れしてんなぁwwww


「みんなは分かってる?この早紀の可愛さが!!私が知ってるだけでも52回、告白やらナンパされてんだよ!?」


梨沙が机をドン!と叩きながらそう言う。


【コメント】

:は?wwww

:台パン助かる

:53回目になりたい

:なんだ、ハーレムゲーの主人公か

:なるほど、ハーレム系なろう主人公か

:ていうかサキちゃんのチャンネルなのに友達さんしか喋ってなくて草


「あ、確かにね。私が言いたいことは言い終わったから次は早紀のターンだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る