第9話 恥ずかしい!!!
遅くなってしまい、申し訳ありません。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「にひひひ…」
部屋で一人PCに向かってニヤニヤしてるのはもちろん私だ。
それでは、私が配信の最後に考えていたことを説明しよう。
まず、あんなことを言ってからコメントする間もなく配信を終わったらどうなるか。
何故か知らないが私の声はカワボらしいので、リスナーさんたちは恐らく『尊い』という感情をどこかで吐き出そうとするだろう。でも、配信は終わってるからコメントはできない。
じゃあどこで吐き出すか。そりゃもちろんシイッターだ。きっと多くのリスナーさんが「サキちゃん尊い」みたいなシイートをしていることだろう。
それを見た人は少なからず私に興味を持ってくれるだろう。
そうすればチャンネル登録者も次回からの視聴者も鰻登りなのでは…ということだ。
「…」
…待って、今考えると恥ずかしくなってきた。
さっきの画面には『2.2万人が視聴』と書いてあった。
配信中はそんなこと考えてなかったが、2.2万人もの人に私の声が聞かれていたのだ。もちろん最後の言葉もだ。
ヤバい、恥ずかしい。「愛してる」なんて言葉、初めて言ったかもしれない。しかもそれが2万人に聞かれてた…?
「うぅ…ヤバい…」
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい
ピロンッ♪
「ひっ!?」
恥ずかしさのあまりベッドに伏せて枕に頭をグリグリさせていた私は、唐突に鳴ったRINEの通知音にびっくりして飛び上がった。
「えーっと…」
恐る恐るスマホの画面を確認すると、
『Sally
…早紀さんや、あんた最高すぎやせんか?』
「梨沙の馬鹿あああああああああああああああ!!!!」
そーいや梨沙にも配信見られてたわ!え、うわ、どうしよ、明日どんな顔して会えばいいの?無理無理無理無理無理なんだけどおおおおおおお!!
「早紀!ご飯だから降りてきなさい!」
「は、はーい…」
今そんなこと考えても仕方ねえ!とりあえず今日やることは全部終わった!明日のことは明日考えればよいのだ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「はああ…」
これは、もちろんいつもの待ち合わせ場所で梨沙を待つ私のため息である。
「もう…なんで今日に限って梨沙遅れるかな…」
そう、普段は昨日と同じく梨沙が先にここに着いていて私が後から来る流れなのだが…
「愛してるよ」
「ふにゃ!?」
突然そんなことを耳元で囁かれて飛び上がった私がびっくりして振り返ると、そこには悪戯っぽい笑みを浮かべた梨沙が立っていた。
「い…いつの間に…っていうか心臓に悪いからやめてくれない!?」
もう…いくら同性とはいえいきなり耳元でそんなことされたらドキドキがヤバいんだけど…
「ん、昨日の仕返しね」
「ほえ?」
昨日?梨沙にそんな悪戯した記憶はないけど…。…あ。
「昨日イヤホンで配信聞いてて、終わったと思った途端のアレだもんね。さすがの私も耳が溶けるかと思ったよ?」
「ああああああああ!!やめ、やめてぇ!恥ずかしいからぁぁ!!」
昨日のことを思い出して、耳を塞いで蹲ってしまう。
自分じゃよくわからないけど、きっと顔は真っ赤になってる!
「マジで黒歴史すぎるって…」
「早紀?」
「な、何よ…」
「あの後配信終わってからシイッター開いた?」
「ん…?開いてないけど…なんで?」
「あー…やっぱりか。ほらこれ」
未だ蹲ってる私に、梨沙が自分のスマホを渡してくる。
画面を見てみるとそこには『日本のトレンド 一位 狐舞サキ』と。
!?
「いやー、早紀なら絶対有名になれると思ってたけどまさか私も初配信でいきなりトレンド一位になるとは思わなかったなぁ〜」
トレンド一位…?なんでだ…?やっぱり最後のアレか?アレのせいなのか?
「ねえ早紀、聞いてる?」
「はいぃ…」
「うん、とりあえず遅刻しちゃうから歩きながら話そっか。立てる?」
「肩貸して」
「……よかろう」
色々と驚きすぎた&恥ずかしすぎるせいで足に全然力が入らない。
正直、歩みがゆっくりすぎるのでこのままだとどちらにせよ遅刻は免れなさそう。
「はい、そろそろ受け止めきれそう?」
「うーん…まだ実感はないけどなんとなくはね…」
「むぅ…高校のとき文化祭の売上一位になったときはそんなでもなかったじゃん」
「あれは私じゃなくてみんなの力だからね?あとクラスが学校で一番になるのと自分が日本で一番になるのじゃ全然違うからね?」
「…どう考えても9割早紀の力なんだけど…」
「ん?なんか言った?」
「別に?じゃあ今回もさ、早紀じゃなくて拡散してくれた人とか観に来てくれた人の力もあるって考えれば、ね?」
「でもなぁ…」
「でも?」
「やっぱり最後のやつだけは恥ずかしすぎる…」
「むっ、過去のことをうだうだ言うなんて早紀らしくないぞ!今から講義だってあるんだし、今晩も配信するんでしょ?スパッ!と気持ち切り替えなきゃ!」
「……ふう……。……スパッ!」
「よし、その調子だ!」
「ふう……よーし!やっちまったことは仕方ねえ!今日も頑張るぞぉ!」
軽く騙された感じもあるが梨沙の言葉のお陰ですっかり元気になった私は、ガッツリもたれかかっていた梨沙からちょっとだけ離れて歩き始める。
「おう!その意気だ!」
「ねえ梨沙」
「なぁに?」
「ありがとね」
慣れない配信やらのアドバイスをくれたり私を支えてくれている梨沙にはホントに感謝しかない。ちょっと恥ずかしいけど、やっぱりこういう気持ちは直接はっきり伝えなきゃね。
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