最終話.いつまでも続く
夜桜を見ながらハルは1人何か思いにふけっていた。
チラリと少し離れたところで見ると、皆の世話を甲斐甲斐しく焼くセレネ。その近くには楽しそうにお喋りをする、マーシャ、リリィ、そしてクロエ。と思いきや飲み物をこぼし、ルビィとサフィに呆れられるレイラ。そしてそこから少し離れたところではクレセが桜の木に登り、ルチアとミスティは今日も仲良くイチャついていた。
春はこの光景を見ながら、なぜか知らないが一筋の涙が光ったのだ。そして感極まったように呟いた。
「なんか、幸せだなぁ……」
「どうした? ハル」
「え、ショコラさん!?」
気がつくとそこにはショコラがおり、ハルの涙は引っ込んでいた。ショコラは不思議そうに聞く。
「どうした? お前が泣くなんて何かあったのか?」
「ううん、ただね、幸せだなぁ……って思ったの。でも……」
「でも……?」
急に言葉に詰まったハルにショコラは寄り添うように聞いた。ハルはその暖かさに安堵したのか先程よりも多くの涙を流し、途切れ途切れに言う。
「ちょっとだけ不安なんだ。いつかこの日が終わるんじゃ無いかって」
「ハル……」
ショコラはハルを抱きしめ、そして優しく答えた。
「大丈夫だよ。もしもその時になったら一緒に行ってやるさ」
「ショコラさん……」
「だからさ、あっちでも楽しそうにやろうぜ」
「……ショコラさん!」
ショコラが満面の笑顔でそう言うとハルも涙はまだ流れていたが、顔は笑顔になっていた。そこに住民達がやって来て、2人の様子をうかがった。
「あれ、ショコラ様にハル様ここで何をしてたのですか?」
「まぁ、ちょっとした話し合いだよ」
「うん、なんか幸せだなって!」
「あ、それ私達も一緒だよ!」
「ね、ここに来てから楽しいことしか起こってないし」
口々に「ここに来てよかった」という住民達の声を聞いてハルはまた泣き出した。しかし、その涙は嬉し泣きの涙だった。
その翌日。
ショコラはいつもの通りにハルの部屋を訪れる。そこには久々に何か書いてあったのだろう原稿と机に突っ伏し眠っているハルの姿があった。
ショコラはその原稿を取り、その内容を見る。原稿を見ているうちにショコラは吹き出した。そして、読み終えるとそっと原稿を置き、こっそりとハルの部屋から出て行った。
原稿に書かれてあったのは異世界に来た読書好きの少女が様々なトラブルに巻き込まれ、そして、本で解決したりゆっくりとスローライフを送るというどこかで聞いたことがある話。
そして、その本のタイトルは
――私は、読書がしたいだけ!――である。
私は読書がしたいだけ!~本読みスローライフがしたかっただけなのになんでこんなことに?~ ラッテ・カフェ @lattecafe
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