59.天使達の訪問
ハルが天使の少女と悪魔の少女と出会って一週間。その間は何も起こらず、日常にもこれといった変化は無かったため、ハル達はいつものようにのんびりと穏やかな生活を送っていた。
そんなある日のことである。ハルがいつものように読書をし、これからリリィ達の様子を見に行こうとしたとき、神々しい光が辺りを照らしたのだ。
「え!? 何事!?」
「おい、ハル! オマエまた何かやらかしたのか!?」
「……もしかして、この前の事じゃあ……」
ハルは先週起こった天使と悪魔とのゴタゴタを思い出して冷や汗を掻いた。隣にいるショコラも同じ顔をしており、2人はぎこちなく、屋敷の玄関につき、たどたどしい手つきで扉を開けた。
そこには天使の大群がおり、そしてその中心には世にも美しい女性と、この前会ったミカエルと言う少女がそこにいたのだ。
あまりの神々しさにハルとショコラはしばらく呆然としていたが、女性が声をかけた事により気を取り直した。
「この前は私の娘を解放してくれたそうで……今日はそのお礼に来ました」
「すごいでしょ、 私のお母様! 天使達の女王様です!」
「は……はぁ……」
慈母の笑みを向ける天使界の女王とその近くにいたミカエルはご機嫌な顔していた。
このまま外にいて貰うのも何だと思い、ショコラ達は応接室に案内したのだった。
「……こちらへどうぞ……」
「ありがとう」
流石に軍勢の全員を入れることは出来なかったため従者の何名かを連れて応接室に入って貰った。ショコラは近くにいたセレネに対し、お茶を持ってきて欲しいと、恐れるように言った。
「別にお茶の頼みくらいそんな畏まらなくても大丈夫ですけど……」
「……天使族の女王が来てるの……」
「はい……?」
いきなりの出来事にセレネは驚いたが、それはさておきとお茶を淹れに台所へ向かった。
「あなたがハルさんね? とても親切にしてくれたと娘が言ってたわ」
「……あ、ありがとうございます……」
「悪魔と一緒に契約されたと聞いたときはちょっと怒りそうになったけどすぐに離してくれたし、その悪魔も退治してくれたって? 凄いわぁ~」
「エ、ア、ハイ……」
絶対それちょっとじゃ無いですよね、知ってますよとハルは心の底に隠しながら返答する。
女王様とミカエルは笑顔だったが、ハルにとってはそれもまた怖いと思わせる要員だった。
しかし、そんなハルを知ってか知らずが女王はとんでもないことを言い出した。
「ハルさん、何か叶えたい願い事ってあるかしら!?」
「ね、願いですか!?」
「ええ、何でも叶えてあげるわよ!」
「そ、そんな恐れ多い!」
「まぁ、優しいだけで無く謙虚な人なのね!」
「ね、お母様言ったとおりでしょ」
確かに現状、読書時間はまぁ最初の頃よりも減ったが別に苦労はしないし、お金はあるし、悩みもないしで、特に叶えて欲しい願いは無かった。しかし、前世読んだ本の中の教訓に「欲張ってはならない」と言うものが多すぎたため、ある意味謙虚だったのだ。
未だにアウェーな空気を感じ、気絶1秒前のハルだったが、そんな時もっと気を重くする出来事が来たのだ。
応接室に屋敷の外で待機していた天使の1人が女王のところに慌ただしくやって来て報告したのだ。
「大変です、女王陛下!ミカエル王女殿下! 悪魔の軍勢が近くに!」
「何ですって!?」
「チッ……羽虫どもが!」
今天使が到底口にしない罵倒来ましたね……とハルは思いながら、窓を見る。すると、光の周りに禍々しい暗雲が立ちこめており、そこから悪魔の軍勢とこの前縛ったルシファー、そして彼女の母親らしき人が来たのだ。
「ここかい? アタシの可愛い可愛い娘を虐めたバカがいる屋敷は」
「そうよ! ママやっちゃって!」
ルシファーの母親がルシファーが持ってたよりも大きい矛で屋敷を突き刺そうとした瞬間、天使達の女王が彼女の前に立ちはだかった。
その顔は先程までの笑みでは無く、完全に怒っている顔だった。
「あーら……リリス。この屋敷に何の用かしら?」
「おや、誰かと思えばガブリエル。ちょいと娘を泣かしたやつに制裁を与えたくてねぇ……」
この言葉を皮切りに2人の戦いは幕を開けた。
ハルはこの光景を「……なんかデジャヴ」と思いながら見ていた。
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