58.図書館での解放

 ハルはとりあえず屋敷に帰ってショコラに見て貰おうと宙に浮く2人を鎖に繋いだまま、風船を持つかのように歩いていた。

 2人はその間も喧しくギャーギャー喧嘩していた。



 「ちょっと、人間! アタシとあの天使を一緒にするとか何考えてんの!? さっさと離しなさいよ!」

 「私も同じですわ。選りに選ってこんなゲスの極みと言われる悪魔と一緒になるなんて……」

 「きぃぃぃぃぃ! 言ったわねぇ!」

 「2人とも、ちょっと静かにしようね」

 「はい……」

 ハルが注意するとなぜかすぐ黙るため、そのまま放置して屋敷に戻ってきた。



 「ただいま、ショコラさんいます?」

 「お帰りー、いるけど……ってオマエ何連れて帰ってきたんだ? 元いた場所に返してきなさい」

 「ペットじゃありません!」

 「ペットじゃ無いわよ!」

 ハルはそのまま困惑したショコラを連れて、図書館の方に歩いて行った。

 図書館に着き、ハルはこれまでのことを説明したのだ。

 


 「あー……ようは読書してたら邪魔が入ったのでムカついたから魔法かけました、と言うことでいいか?」

 「うん」

 「で、魔法をかけてからというものなぜか鎖が2人に繋がれてて、自分の言うことなら聞くと?」

 「うん」

 「どの魔道書使ったんだ?」

 ハルは持って行った本の中から1冊をショコラに渡した。ショコラはハルと一緒に確認するととあるページに行き着き、ハルはそれを指さした。



 「どれどれ……っとおい、これ『強制契約魔法』じゃねえか! オマエ何唱えてんだ!?」

 「頭に血が上ってたもので……」

 「それでいいわけが通用……読書の邪魔になるなら仕方ないよなぁ……」

 ショコラはハルの両隣でむくれている2人の少女を見ながら言った。



 「……ところでこれ解呪する方法あります? この2人とにかくうるさくて……」

 「あるぞ」

 そう言って、ショコラはハルが渡した本とはまたちがう本を取り出し、そのページを開いた。

 ハルはそれを唱えると、途端に鎖は外れ、2人は椅子から離れ、宙に浮いた。

 離れた途端、悪魔と思われる少女はハルに突っかかってきた。



 「さっきはよくもやってくれたわね! 悪魔族の王女であるこのルシファー様を鎖で縛るなんて! しかもいけ好かないあのミカエルと一緒にするなんて! この外道!」

 「悪魔に外道って言われたくないけど……」

 「お待ちなさい、ルシファー。この人は解放してくれたのよ? それを仇で返すなんて……あーあーやっぱり悪魔ねぇ……」

 ミカエルと言われた天使の少女はルシファーを挑発するように言った。それを聞いたルシファーは更に激昂し、先程の戦いで見せた黒い槍をまた取り出し、ミカエルに向かった。



 「この高潔だけが取り柄の天使め! 今日こそ息の根止めてやるわ!」 

 「よそ様の家で暴れるなと教育されなかったんですの?」

 「こんの……!」

 ルシファーはその槍をミカエルに向かって放とうとしたが出来なかった。それもそのはず、再び堪忍袋の緒が切れたハルが槍を受け止めたからである。



 「図書館で暴れるなよ……?」

 「ヒッ…………! も、もう知らない! ママに言いつけてやるんだから!」

 ルシファーはそう言うとピューと図書館から逃げどこかに消えていった。それを見たミカエルはため息をつき、ハル達の方に向いた。



 「先程はありがとうございます。悪魔と一緒に縛られたことは屈辱ですが、解放しなおかつ追い払ってくれてありがとうございました。またお礼をさせてください」

 「あ……はい……」 

 そう言うとミカエルも図書館から出ていき、やがて見えなくなった。

 その姿を見てショコラはまたボソッと呟いたのだった。



 「……また騒動が起こりそうだなぁ……」

 

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