50.修行開始

 「銃を扱いたいといってもまずはそれに慣れることから始まるな。というわけで」

 「? うわっ!」

 ルチアからいきなり銃を投げられ、クロエはその重さに驚愕した。 



 「ちょっと! いきなり投げないでくださいよ!」

 「重さは知っておいて損は無いよ」

 「確かに……」

 「あと、あとで本読んで復習するのもいいけど、銃の手入れとかのために部分とか教えて……」

 「解体とか手入れとか魔法でなんとかなりません……?」

 「あ、確かに!」

 「今までやってなかったんですか!?」

 「……気づかなかった」

 三大魔女と崇められ、奉られるルチアにもこんな人間的なところがあったのかとクロエは内心感心しながら、解体魔法をかけていた。



 「……とまぁ、銃の内部や手入れ方法はいいとして、いきなり本物を扱うのもなんだから、これ使おう」

 そう言って、ルチアはとあるものを取り出した。一見すると形は同じだが、透明であり、内部がはっきりと見えた。いきなり取り出されたそれにクロエは困惑して聞いた。



 「というわけでまずはこの水鉄砲で訓練を始めるよ」 

 「水鉄砲」

 「初心者に銃を扱わせるわけにはまぁいかないし、最初は撃つのは水で、あとは銃を触って慣れようか」

 「……なるほど、分かりました」

 クロエはルチアから水鉄砲受け取り、いつの間にか用意されてた的に向かって、放った。

 水は的のだいぶ上の方に行き、真ん中に当たらなかったからかクロエはしょんもりとする。

 そんなクロエを見てルチアは慰めた。


 「まぁ、最初はこんなもんだよ。的をよく見て、真ん中に標準を当てるように狙っていくことが大事だよ」

 「なるほど……! 分かりました!」

 クロエは再び水を入れ、また水鉄砲を構えた。



 一方、ミスティから体術を習っているサフィとマーシャは柔軟体操をしていた。


 

 「はーい、そこまで、2人ともまだまだ硬いわね」

 「いってて……何でいきなり柔軟体操を?」

 「何事も準備は欠かさないからね。柔よく剛を制するというように体術は体全体を使うから」

 「なるほどね……」

 「それと同時に基礎体力もつけていくわよ! クールダウンが終わったら、筋トレ10回!」

 「……結構スパルタですね」 

 「自分の体を使うもの当然よ、ストイックにやらなきゃね」

 「はい!」

 ストイックなミスティに2人は音も上げずしっかりとついて行った。



 「速度が少し遅いよ! ちょっと早めに」

 「はい! 1! 2! 1! 2!」

 「速度いいよ! そのペースで! あと100回!」

 クレセから剣を習っているリリィは練習用の剣を与えられ、素振りの練習をしていた。

 少々直感的なクレセが上手く教えられるのかという懸念はあったが、ハルが教え方教本なるものを纏めていたためクレセもしっかり教えることができた。



 「にしても、お前の師匠の強さの秘訣は何だ?」

 「本読んでるだけなんですよ」

 「強いな……」



 「ルビィ、まずは短剣の持ち方及び隠し方から入りましょう」

 「なぜ、隠し方が?」

 「短剣は奇襲用によく使われますので。いいところ、懐や腿といったところですね」

 「……セレネさんはどこにそれを……」

 「内緒ですよ」

 セレネから短剣を習っているルビィはセレネに短剣の扱い方をまず教えられていた。



 「短剣は即座にブスッと刺すことが大事です。見えないからこそ短期決戦なのです」

 「思い切れと?」

 「はい」

 セレネの意外にアバウトな教え方にルビィは困惑した。ルビィはまず、短剣に慣れるために家から果物をいくらか持ってきて、それらを高速で刻むことにしたのだった。



 そんなこんなで彼女達が修行を始めて早1ヶ月が過ぎていった。

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