第七章「ハル、師匠になる」

27.弟子は受付な……本があるなら受けましょう

 「おー、今日もありがとうな、これお金」

 ショコラは毎朝図書館でリディルの町から発刊されている新聞を読む。いつも新聞の内容を面白おかしく見ている彼女だが、今日は違った。ショコラはそこに書かれている内容をじっと真剣に読んだ。



 「ショコラさん? どうしました?」

 「いや、昨日の事についてだが……」

 「あー、あのモンスターの」

 「うん。とりあえずお前も読んでくれ」

 「分かりました。どれどれ……」

ハルはショコラの方により新聞を読む。そこには昨日のモンスター騒動が大きく取り上げられていた。



 「ウーリーの森にてモンスター大量発生と言う前代未聞の騒動。ここ100年はモンスターは出現していなかったが昨日突如として出現する。騒動次第は勇敢な人間4人によって収まったものリディル当局は森に行って原因を調べると共に警戒を強める模様。私達勇敢な人間だって」

 「安心しろ、読書の時間が減るとか言いそうだから既に取材は断っている」

 「ありがとー!」

茶化したハルだが、ショコラは未だどこか釈然としない顔をしていた。そんなショコラを見てハルは少し不安になる。



 「……ショコラさん? 何かあるんですか?」

 「うーん……ちょっと今日森の方に行ってみるわ」

 「ショコラさん!? アナタの強さに不安はありませんけどまたなんで?」

 「どうも引っかかるんだ。それにこれもしかしたらの可能性もあってな」

 「はぁ……」 

 「大丈夫だ。お前と一緒に調査するということは無いからな」

ショコラはそう言って微笑み、ハルの頭を撫でる。ハルはそんなショコラに不安げな顔をしたものの、笑顔になり、見送った。



 ショコラは森の方に行ったが、他の住民のやる事は変わらない。クロエはいつものように執筆活動をルビィとセレネは各々の仕事、クレセは剣の修行、レイラとサフィは薬師の仕事をしていた。いつも通りの日常だったが、しかし、その平穏が長くないということはハル達はすっかり忘れていたのだ。



 「あら、来客かしら……はーい、どちら様?」

 「あのー……すみませんここにとんでもなく魔強い魔女様がいると聞いたのですが……」

 「魔女様?」

 「はい、こちらの新聞で確認して……」

 「どれどれ……なるほど……」

急に扉がノックされ、セレネは応対する。そこにはルビィ達より少しだけ大きくしたような少女2人がそこにいたのだ。一人は薄い黄緑色のロングウェーブであり、もう一人はストロベリーピンクの髪をお下げにしていた。セレネは2人を一旦応接室に通すと、図書館の方に向かった。



 「え? 客? 私に?」

 「はい。何でも偉大な魔女様がいると聞いてきたようで」

 「折角来て貰ったのに何もしないで門前払いはさすがにちょっと可哀想よね……分かったわ、セレネ応接室に案内して頂戴」

 「畏まりました」

ハルはセレネの案内で応接室に行くことになった。



 「こちらです」

 「どうも、ありがとう。セレネ仕事に戻っていいわよ」

 「はい」

セレネを去らせた後ハルは応接室に入る。そこでは先程セレネが案内した少女2人がそこにいたのだ。ハルはそれ見て(ショコラさんの案件かな)と思い応対することにした。



 「いらっしゃい。私は一応この屋敷の主人であるハルといいます。あなたたちは?」

 「私はマーシャと言います」

 「あたしはリリィです」

ハルが自己紹介すると2人もそれに続いた。

どうやらウェーブの少女の方がマーシャでお下げの方がリリィのようだ。自己紹介が終わるといきなり2人はハルに頭を下げた。



 「あの、無理は承知でお願いします!」

 「どうか、私達を弟子にしてくれませんか!?」

 「え!? どういう事?」

 「今日の新聞で丘の方に強い魔女様がいる事を聞きまして、そこに行けば会えると」

 「実は私達、魔女になる修行をしているのですが、どうにも上手くいかず……」

ハルは2人の話を聞いて何時ぞやのショコラとの会話を思い出す。この世の魔女には二つのパターンがあり、生まれついての魔女と修行して魔女になるだ。人数としては後者の方が多く、人間から魔女になるにはその者に弟子入りする事が必要と聞いたのだ。


しかし、ハルの心はとっくに決まっていた。


 「ゴメン、私弟子は取らない主義で……この家には私の他にももう1人魔女がいるからちょっとその人が帰ってからでいいかな……?」

 「そうですか……」

 「分かりました……」

と言ったハルだが本音は読書時間が減るから嫌と言うなんとも子供じみた理由である。しかし、しょげる2人を見て罪悪感があったのか、代案を言う。だが、マーシャのポシェットに入っている紙を見て、ハルは聞いた。



 「あの、気になること言っていい?」

 「はい」

 「どうしました?」

 「その紙は一体?」

 「あー、これね。確かマーシャは本を書いていて、あたしも書いているけど」

 「ちょっとリリィ! 言わないでって言ったでしょ!?」

本と聞いてハルの目の色が変わる。どうやら2人は作家を目指しており、色々と書いているようだ。しかし、ハルの方は目を輝かせて2人に言った。



 「気が変わりました。貴方たちを2人を弟子にします!」

 「ええ!?」

 「いいんですか!?」

 「うん、だけど条件付きね。私初めて弟子を取るから教え方は素人かもしれないこと、もう一つは書いた原稿は真っ先に私に見せて頂戴」

 「それなら喜んで!」

 「やったわ!」

こうして、ハルは賑やかな弟子2人をつけることになった。

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