奇妙な動物園3
調べる場所だと図書館かな。ワトソンが調べに行ったがあの調子だと時間がかかる。もっ君と美咲は自販機を治そうとしている。大きな音がしているが壊したりしないよな?
一方俺は、ノートを読んでいた。先ほどのメモ以外にもいろいろ書いてあるからな。
ページを捲ると腕に当たったのか置いてあった万年筆が落ちた。ここを作った奴の物だろうけど高そうだ。椅子からどき、ペンを拾う。ふと、椅子の裏をみると金属製の箱があった。鍵がかかっている。さすがに壊したら不味いよな…一応持っておくか。
これ以上ここにいても仕方がない。俺はワトソンの元に向かった。
「おーい、なんか見つけたか?」
「特にはなにも。ここの本は動物に関することが多いみたいだ」
そういうとワトソンは一冊の本を渡してきた。えっとなになに?動物の視界について、か。
「全く同じものを見ていても人間とある種の動物たちとでは目の仕組みの違いによって異なった世界が見えている。
動物の見る仕組みは、大きく分けて2種類の網膜にある細胞が大きく関わっている。一つ目は、感度が低く明るいところで色を認識する錐体細胞、もう一つは、色はわからないがが暗いところで物の形を認識する桿体細胞。なんだこれ」
「つまり形を認識する細胞と色を認識する細胞は別ってこと。例えば鳥、多くの鳥は「赤・緑・青・紫外線」を認識する4色型色覚を持っており、少数だが、大型の鷹などは人間の約2.5倍ほど解像度で見ることが出来る、みたいなかんじだな」
「へ~、人は赤・緑・青の三色の光を感受することができるんだな。他にも紫外線や蛇みたいに熱をみることができる奴もいると」
「猫についても書いてあるな。猫は2種類の色を認識する2色型色覚のため赤色と緑色が混同して見える。また、明るいところでは、人の約6倍ほどぼやけて見えていますが、暗いところでは人よりもハッキリと見えています」
「暗いほうがはっきり見えるんだな初めて知ったな。そうだ、俺はちょっと外に行ってみようと思う。探す所も時間もないからな」
「いいけどどこいくんだ?」
「とりあえずは猿の海かな。他の動物の話を聞くのありだけど、コウモリが言っていた大切な物ってのも気になるし」
「わかった。こっちはもう少し調べていくよ」
海に行く途中に庭園を軽く見るのもありだろう。少し寄り道して行くか。
入り口に向かう途中に自販機を見たがあの二人はなにやってるんだ。自販機を殴って治るわけないだろ。
「んで、暁は既に外にいったぞ」
本を調べ終え、一応二人を呼びに来たが、自販機は鍵が壊れていた。自販機の中にはなにも無かったらしく、暁がいれたであろうお金のみ出てきた。
「俺も猿の持っている大切な物ってのに興味はあるがとりあえずは他の動物の場所に行こうと思う」
コウモリが言っていた情報ではまともな奴はいなさそうだったが、まあ奴の言っていることは半分くらい嘘だろう。
「美咲ともっ君はどうするんだ?」
「俺は図書館を調べておくよ。まだ全部調べきれてないでしょ。ここを作った奴がこの休憩室を拠点にしていたのは間違えないから他にも何かありそうだし」
「私は…蛇の所に行ってみようかな。襲われるかも知れないけど危なそうなら逃げるし」
「んじゃ、俺はミミズクの所にでも行くか。博識ならいろいろ知ってそうだし」
美咲が心配だがおそらくは大丈夫だろう。こいつは動物園に遊びに来てるのになぜか拳銃を持ってきてるし。まあ、俺も持ってるからあれなんだけど、銃刀法守ってないな。
「へ~これが庭園か。いろんな花が咲いていて綺麗だな」
俺は皆と別れたあと園内の中央に位置する花園へとやってきた。花園には色とりどりの花が咲き乱れている。しかし、咲いている花に違和感を覚える。全く統一性がないのだ。春夏秋冬季節の全ての花がデタラメに咲いているのだ。それに、花をよく見てみると、花にみずみずしさがない。どうやら造花のようだ。
「見かけ倒しか。それでも…おっと」
なにもないところで躓いてしまった。持っていた荷物から高く澄んだ音が聞こえた。今ので持ってきている酒が割れてないといいのだが。
しかし、この後奴らと飲むからって持ってきすぎたな。まあ、瓶なんてそう簡単には割れないだろう。それよりも早く猿の海に向かわないと。
「はぁ、皆と分かれちゃったな。確かに時間がないかも知れないけど久しぶりに会ったんだからもうちょっと一緒に回ってもいいじゃない」
私だけ年齢が離れてるけど3人で勝手に盛り上がって。少しは私の事も考えてほしいな。
美咲が檻の前に行くと、そこには「蛇の檻」と書かれたプレートがかけられている。檻は黒い布で覆われていて蛇の姿を見ることはできない。
鍵がかかっているのか扉は開かず、蛇がでないようにガラスで覆われている。どうしようかな、拳銃はあるから多分襲われても大丈夫だけど檻の中にいかないと喋ることもできない。いや、蛇が喋れるかわからないけどさ…
鍵はどこにあるんだろう。近くに落ちてたりは…ないな~
まさか檻の奥には…ないな~
まさかまさかプレートの裏には…あったよ。え、なんでプレートに張り付けてあるの?というか別に入る必要性ないよね…うん。
黒幕を少し捲り中をみる。蛇がいる様子もない。奥の方に小さな箱が見える。取手もあるしなにかあるかも。
鍵を開け扉を開く。中から規則的な呼吸音が聞こえる、中に何かいるのは確かなようだ。寝てるのかな?
足音を立てないようにゆっくり進んで行く。扉を開け中に入ると急に奥から唸り声が聞こえた。それと同時に何かズルズルと這うような音がこちらに向かってきた。腰から拳銃を抜き構える。
そしてその音が近くまで来たとき、そのモノの姿を目にした。大きな蛇の形をした生き物…ですがその背中には羽が生えている。
「ちょっ、でかいよ!」
それは美咲を視界に収めると雄叫びをあげ襲いかかってくる。拳銃を発砲するも皮膚が固く弾丸が貫通することはない。
幸い動きは遅いからなんとか戦えるだろう。うまく奥の箱の中身を奪って逃げたいところだけど…。
「ちょっと厳しいかな…誰か来てくれればいいけど……」
「ええっと、そうだね~、うーん」
長いさっきから何分待てばいいんだ。
時は少し遡り、ワトソンがミミズクの檻の前まで来た。中でミミズクがうーん、うーんと唸っているのが見える。なにか考え込んでいる様子だ。
「うーん、うーん、思い出せない。さっきまで覚えていたはずなんだけどなぁ。」
「おい、なにを思い出せないんだ?」
話しかけるとミミズクはワトソンに気が付いた。
「おや、新入りさんかね?まだ私たちのようにはなっていないようだが、
ん?私たち?私たちはどうしてここにいるんだったかなぁ?」
コウモリが言ってた通り忘れっぽいやつだな。
「ああ、ちょっと待って、思い出した思い出した。私も君とおんなじだ、ここに迷い込んだ、そして閉じ込められた。私はもう出ることは諦めた、でもせめてここに来る人たちの手助けがしたいと思っていたのに。私の記憶はもう消えかけている。君たちが望むなら君たちの時間と引き換えに有益な情報をもたらす事ができるかもしれないし出来ないかもしれない。」
と言い、じっと君たちを見つめる。どうやら君たちの質問を待っているようだ。
時間はかかりそうだがいろいろ知ってそうだな…
「なあ、ここはなんなんだ。お前達はなぜここにいる」
「う~んと、ここはある男が作った動物園だ。あの男は、ええと、人の姿をしているが人ではない。……その力で、単なる暇つぶしでこの動物園を作り上げた。私や君はその暇つぶしに巻き込まれたわけだ。急いでここから出なければ、私と同じになってしまうぞ。」
変わり始めた自分の体、空の檻、喋る動物達、やはり俺たちはここの動物として捕らえられたのだろう。それも目的もなく単なる暇潰しで…
「ここに出口はないのか」
「君たちが入ってきたところからは出られぬ。もう知っているかもしれんがな。北に獅子の像がある、あそこが出口だと言う事までは知っている、
だが私にはその出口をどうやって開くかはわからない。というか思い出せないだけかもしれないがな」
「コウモリがあの像には意味がないと言っていたがそれは嘘だったんだな」
「ああ、あのコウモリな、まさかあいつの言うことを全部信じているんじゃないだろうな?あいつは昔から気まぐれで嘘つきだ。まぁ本当のことを言うこともあるがな」
「昔からの知り合いなのか?」
「ああ、あいつと猫は人間だったときからの知り合いだよ。今ではそれぞれ檻が離れて会えないがね」
少し悲しそうに笑うミミズクを見て、三匹を会わせてみたくなる。大切なものと引き離されるのは辛いからな。しかしここの鍵は特別製で俺の鍵開け技術を使ったとしても開きそうもない。
「マスターキーを見つけてくる。そうしたらお前達も逃げれるだろ?」
「…ありがたい。私の知ってる事なら全て話そう。それと……コウモリのやつもああ見えて悪いやつじゃないんだ」
「知ってるよ。なかなか面白い冗談をいうやつだったし。まあ、時と場所を考えてほしいけどな」
ワトソンとコウモリは目を合わせると笑いだした。
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