奇妙な動物園4
「やっと着いた」
暁が北へ進んでいくと、三つのトンネル状の建物があり、その建物の入口一つ一つに猿の穴 猿の海 猿の山と書かれた札が掛かっているのと、猿の像が建っていた。
「猿の海って名前だけど別に水があるとか、猿がいるわけでもないんだな」
入口には厚い扉があるが、鍵はかかっていないみたいで押したら簡単に空いた。入り口には石でできた猿の像がある。猿の海のは両手で口を覆っているポーズを取っている。
穴のは目を、山は耳を覆っている。見ざる言わざる聞かざるを表しているみたいだな。
扉を開けると目の前に看板があり、「この先私語厳禁」と書かいてある。看板の裏には明るい通路が続いており、下には床の代わりに水が張っている。
足を踏み入れるととぷん、と足が沈む。どうやら下は泥のようになっているが底はあるみたいだ。ゆっくりなら進むことも可能だろう。水は丁度膝のあたりまでだが、まさか濡れることに生るとわ。
周りを見るが特には変わったものがない。若干暗く奥までは見通せないがどこまで続くのか。
中程まで行くと、通路の真ん中にカーテンのようなものがかけてあり張り紙で「一人ずつお入りください」と書いてある。一人で来ているから関係ないがなぜ一人と限定するのか……
カーテンの奥に足を踏み入れると、突然体が沈んでゆきます。抵抗するのの足は泥に沈んでゆく。先ほどまで底があったのに急になくなってしまった。
水と泥のにとられどんどん沈んでいく。息もできずにもがく。
(しまったな、誰か他のやつと回ればよかった…いや、一緒に来ていても垂れ幕の指示に従い一人で入っただろうな)
どれほど沈んだのか急に水と泥の感覚は消え、かすかな浮遊感とともに硬い床へと放り出される。
「た、助かったのか」
目を開けるとそこは2m四方の小さな部屋で、目の前には猿の像があった。
部屋の天井を見ると泥が波打っている。どういうわけか重力を無視して浮いている。俺ははあそこから落ちてきたのだろう。
ギリギリ触れることができたが手で触れても押し出され、こちらから泥に入ることはできないようだ。
猿の像は入口にあったものと同じ材質、大きさでできている。ただひとつ違うのは、その猿の像は口を隠しておらず、手をだらりと横におろしており、口の中には黄色い玉がひとつだけ転がっている。
「なんだこれ」
これがコウモリの言っていた大切な物なのか。
黄色い玉固定されておらず簡単に取ることができる。
しかし、黄色い玉を取ったとたん、喉を激痛が襲う。息がつまりその場でうずくまる。
しばらくするとその痛みは収まった。痛みに耐えるため閉じていた目を開くと、そこは先程までいた部屋ではなく、あの口を抑えた猿の像がある入口だった。
あの部屋からでる方法もわからなかったからちょうどよかった。突然の激痛には驚いたが無事に黄色い玉も得ることができた。しかしなにに使うのだろうか。
他の奴らに黄色の玉の事を話さないとな。俺は一度休憩所の方に向かって歩き出す。
そこで違和感に気がついた。いつのまにか四足歩行になっている。鼻も若干きくようになってきた。体を見ると…完全な犬となっていた。
(なっ、もう完全な犬になったのか…あれ?声が)
黄色い玉の代償、猿の大切な物と引き換えに俺は声を失ってしまった。
時は遡り、暁が溺れてる頃、ワトソンは猿の穴に来ていた。獅子の像を先に行ってもよかったが、ミミズクがある情報をくれたからな。
「あそこには三匹の申の像がありそれぞれ三つの玉を所持している。赤い玉、青い玉、黄色い玉だ。赤い玉には再生の力があり、青い玉には呼び覚ます力、黄色い玉には魔を退ける力があり、おそらくここからでるのに必要だろう。だが気をつけたまえ、それを手に入れるには必ず代償が必要だ…
代償は・・・ええと・・・すまん。思い出せんな」
脱出に猿の大切な三つの玉が必要なのがわかったのは大きい。獅子の像は軽く見たが特には変わったものはなかった。おそらく三つの玉を揃えて持っていく必要があるのだろう。それにノートに書いてあったマスターキー、どこにあるかわからないがこれも見つけなければ。
入口には厚い扉があるが、鍵はかかっていない。
入り口には石でできた猿の像があり、両手で目を覆っているポーズを取っている。
扉を開けると、土でできた暗い廊下にぼうっと明かりが灯っている。明かりは弱々しく少し先までしか見えないようだ。
ワトソンが暗い廊下を見渡すと、土でできた壁には穴が空いており、その向こう側には隙間が空いているようだ。光源はどうやらその隙間の下かららしい。
興味本位でその穴から下を覗くと。ものすごい熱が襲ってきた。隙間の下では煌々と輝く炎、そして燃えているのは…骨だ。いや骨だけではない。皮膚や髪の焦げる嫌な臭い。燃えている。もう姿かたちすら分からないが生き物が燃えているのだ。これはここに迷い込んだものの末路なのだろか…
通路の奥にたどり着いたワトソンは、台座の上に鎮座する猿の像を見つけた。
猿の像は入口にあったものと同じ材質、大きさでできている。ただひとつ違うのは、その猿の像は目を隠しておらず、手をだらりと横におろしており、両目に赤い玉がはめられている。
「これが赤の玉、効果は確か再生だったかな」
赤い玉は特に力を入れなくても簡単に取ることができるできた。しかし、赤い玉を取ったとたんに、目に激痛が走った。しばらくするとその痛みは収まったが、片目は何も写さなくなっていた。
おそらくはこれが代償なのだろう、さすがに両目が見えないままここをでることは難しい。
ためしに見えなくなった目に赤の玉をかざしてみたがなにもおきない。使い方が間違っているのか、赤の玉を使っても治らないのかわからないが、視力を失うとは…
ここは片方だけを持って行くしかない…できれば他のメンバーに会いたい所だが……仕方がない庭園なら誰かが通るだろう。
「くそっ、情けないな」
「さすがになんもないな」
あの後図書室でいろいろな本を読んだが生物学の本ばかりだった。強いていうなら獅子の像についての記述が多かったくらいか。ひとつだけポツンと立っているから怪しいのだが、そんなに簡単なら何人か脱出者がでてるはず。まだ誰も逃げれてないということは、きっとなにか仕掛けがあるのだろう。
とりあえずは実物を見ないとわからないから獅子の像の前にやってきたが、もっ君はその像の大きさに息を呑んだ。そこには動物園には似つかわしくない風貌の像が立っている。
獅子の像は体こそライオンの姿をしているが、その顔はどこか成端で人間味があり、その背中には翼が生えている。
この像は古代ギリシャ、もしくはメソポタミア神話に登場する怪物、スフィンクスを象ったものだろう。スフィンクスの形は文化によって違いはあるが、翼が生えているのはこの二つの文化である。
首から下げられた飾りには何かをはめるようなくぼみがあった。小さく丸い窪みだ。なにを嵌めるかはわからないが…
ん?体の様子がおかしい。さらに毛深くなった。これは熊か。意識はある、身体能力が上がっており、嗅覚なども強くなった。
あいつらに見られても俺ってわかるかな?いや、わからないだろうな。仕方ないここでおとなしくしてるしかない。
「これ、無事に帰れるのかな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます