第2話 途中下車

 将来の夢を持つ年頃って、いつだったっけ? 


 大きくなったら何になりたい? そんな適当な問いから始まって、最初は仮面ライダーとかで、ちょっと知識が増えたらプロ野球選手とかになって、そして現実との帳尻が合ってきたら公務員とか、妙に地に着いた夢になる。


 僕の夢だって同じようなものだった。


 さすがに運動神経はよくなかったら、仮面ライダーもプロ野球選手もなかったけど、その類似品としてなりたかった将来の夢は漫画家だった。


 けど、それはあくまで理想の夢で、叶えばラッキーだ!って程度のもので、実際にはどうやればなれるのかも分かってないほど現実味のないものだった。


 だからその夢が現実になっても、僕はずっと夢の中にいたのかもしれない。


 そんな無責任な表現をすべきではないのかもしれないけど、どこか明確な意思があったわけでもなく、ただ偶然に乗り合わせただけのもので、目的も目標も、ましてや志なんてものさえもなかったように思える。


 それでもその夢を見ていられた理由はただ一つだけ。


 楽しかったのだ。ただただ、それだけだった。


 けれど、それだけでは多くのことが自分の中で処理が出来ないまま、偶然乗り合わせたその乗り物は自転車からバイクになって、自動車になって、電車になって、新幹線になった。


 そのことに気が付いたとき、途中下車は僕一人では出来なくなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る