「きゅ、九百、きゅうじゅう、ッはち」

「九百、九十、きゅ、ぅッ」

「はッ―――あッきゅ、きゅうひゃくッ」

「―――三千ッ!!」


「はいズルしない」

「まだ千回、あと二千回」


「――――一億ッ!」


「飛ばし過ぎ」

「強欲過ぎるズルだよソレ」


「はっ……はッ」

「こ、これ……素振り」

「三千、きつッて」


「喋りながらでも良いから振り続ける」

「一週間はこのメニューだから」


「へぁ!?」


「士柄武物は神胤を宿す武器」

「しかし、その神胤は無限じゃない」

「だから神胤を流しながら素振りをすると」

「士柄武物が神胤を吸収してくれる」

「結構年代物の士柄武物だから」

「蓄えるのに一時間は掛かるかも」


「へ、ぇ……あ?」

「え?これ、一時間ッ!?」

「いま、もう三時間は振ってるんすけどッ!」


「士柄武物の供給は一時間程度で満タンだけど」

「キミは洞孔の展開率が低い」

「それでも三時間もあれば士柄武物に神胤が宿すには十分すぎるけど」

「キミに覚えて欲しいのは其処じゃない」


「は、え?」


「祓ヰ師になって一年足らず」

「キミの動きを見せてもらったけど」

「臨核はロクに機能していなかった」

「通常の祓ヰ師が炎を吐き出すのだとしたら」

「キミのはせいぜい、マッチに点いた火程度」


「結構、酷い、事、言います、ねッはッあ!」


「だから、まずは」

「神胤の流れを意識してもらう」

「其処からどうすれば出力を上げれるのか考えて貰う」

「これを覚えれば、常に士柄武物に神胤を流した状態で」

「相手と戦う事も出来る」

「つまり、士柄武物がガス欠になる事は無いし……」

かつを常時扱う事が出来る」


「か、つ?……って」


「士柄武物の能力を引き出す事」

「士柄武物はそれを握り続けた宿主の意志が宿る」

「人を斬る意志を得た士柄武物は人を斬る事に特化し」

「岩を断つ意思を得た士柄武物は岩をも斬る力を得る」

「その能力の解放を〈闊〉と呼ばれた」


「ッ……ちょ、なんすか、それ」

「かっけぇ………それ」

「俺、何時使える様になるんすか?」


「手が止まってるよ」

「そうだね、私の指示に従ってれば」

「一か月以内に使わせる様にしてあげる」


「マジすかッ!」


「……まあ、挫折しなければ、ね」


「……ちょ、なんすかその含み笑い」

「流石に、これ以上キツく、ならない、すよね?」


「だから手、止まってるって」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る