心身共に重傷なお嬢


「………ん」

「く……ッふ」

(体、痛い)

(ここ、は)

(病室?……学園?)


「お嬢様」


「……ぁ」

「け、もり」

「貴方、一体……」


「お嬢様」

「良かった」

「意識を取り戻したのですね」

「任務を完了した後」

「三日ほどお嬢様は眠っていたのです」


「ぇ……わ、たし、が?」


「はい」

「危篤状態でした」


「………でも」

「私は、生きてる……」


「はい」

「あぁ……本当に」

「良かった……」


「……そんなに」

「心配してくれのね」


「当たり前です」

「お嬢様は私の恩人ですから」

「貴方に一生の恩を返す為に」

「私はお嬢様の元に居るのです」

「お嬢様が死ねば」

「私も共にしましょうと」

「そう思う程に」


「……大袈裟ね」

「は、ぁ……まだ」

「体が、痛い、わ」

「………界守」


「はい」

「如何なさいました?お嬢様」


「私は……あんな雑魚に」

「此処まで、苦戦してしまった」

「命に瀕する程に弱くなってしまったわ」

「……どうしましょう」

「このまま」

「ソノコが使えなくなったら……私は……」


「お嬢様……」

「……率直に申し上げます」

「きっと」

「お嬢様が術式を使えぬと知れば……」

「御当主様はお嬢様を見限るでしょう」


「………えぇ」

「そうね、お婆様は」

「そういう人だから」


「……けれど」

「例え御当主様が見限ろうと」

「私は貴方の傍に居ます」

「ですから自暴自棄となってはいけません」

「弱さは悪い事ではありません」

「自分がどう強くなれば良いのか知れる」

「弱さとは強さの近道です」

「ですから」


「……貴方の言いたい事は分かるわ」

「慰めている事も……」

「大丈夫、なんて言いたいけれど……」

「正直……この先」

「私はどうするべきか、決め兼ねている……」

「界守」

「贄波家から見限られた私は」

「一体どう生きれば良いのかしら?」


「お嬢様……」


「……ふふ冗談よ」

「えぇ……冗談ですもの……」


「……おじょッ」

「……申し訳ありません」

「連絡が入りました」

「……はい」

「はい、界守……え?」

「ですが、お嬢様は今……」


「……界守」

「良いの」

「お婆様でしょう?」


「………はい」

「すぐに、顔を出せ、と」


「……そう」

「お婆様の言う事は絶対」

「こんな、包帯だらけの私でも」

「駆け付けなければならない」

「……私に面向かって」

「吐く言葉は分かり切っている」

「恥晒しなど、そんな言葉が」

「目に浮かぶ様ね」


「そんな事」


「ねぇ、界守」

「お婆様の元へ行く前に……」

「少しだけ」

「お婆様の意向に背かない?」

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