静月のお話

「ほら、八峡って」

「学校に来た時から」

「悪い噂しか無いでしょ?」


「そうね」

「神童殺しなんて」

「そう蔑まれたのを聞いたわ」


「あさがお寮に来て」

「八峡とはじめて出会った時」

「挨拶すらしなかったんだよ」

「あーっ!こいっつ!もぉ!!」

「なんて怒ってみたりしてさ」

「あーあ、やっぱりいやーな奴」

「なんて、思ってた」


「最低ね」

「どういう神経してるのかしら」


「でもさ」

「八峡って」

「結構頑張り屋なところがあってさ」

「八峡って先生に絞られてるでしょ?」

「ほぼ毎日」

「グラウンドでいっぱい倒されて……」

「それでも立ち上がって」

「必死になって戦って……」

「私はさ」

「どんな人間でも」

「頑張ってる人には報われて欲しい」

「そう思うんだ」


「……けど」

「悪い人間だったら」


「……其処まで」

「八峡は悪い人間じゃ無いと思う」

「だって」


「……寝惚けて階段を下りた時」

「たすけてくれたから、かしら?」


「ん、うん」

「……それが理由」

「それだけ?なんて」

「言われるかも知れないけど」

「それが大事、だと思う」

「それに」

「璃々ちゃんだって」

「八峡が悪い奴だったら」

「お見舞いなんて来ないでしょ?」


「……わ、私は、違うわ」


「えー?本当?」


「ほ、本当よ」

「私、ウソなんて吐いた事ないもの」


「あ、それこそ嘘っぽい」

「ねぇねぇ、なんで?」

「もしかしてー、恋、的な?」


「……あ、そういえば」

「最近」

「街で新しい飲食店が出来たのを見かけたわね」


「え!?あ、そうそう!」

「ドーナツのお店っ!」

「璃々ちゃん、帰りに寄ってかない!?」


「えぇ、寄りましょう」

「………ふぅ」


「……あれ?」

「さっき」

「何の話をしてたんだっけ?」


「思い出さなくて良いわ」

「さ、行きましょう?」


「あ、うん!」

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