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「しっかし、偶には旧友と遊ぶのも良いもんだなぁ」
「だろ? んじゃあ次はどこ行くよ」
いつぞや出会った中学の同級生の一人、千崎と俺は一緒に遊び歩いていた。一人で街中をブラブラしていた時に偶然出会ったのだ。以前は柚希が途中で合流することで久しぶりの出会いは曖昧になったけど……うん、やっぱり昔の知り合いと普通に遊ぶのは楽しいもんだ。
「適当にゲーセンで良くね?」
「決まりだな」
ニッと笑った千崎と共にゲーセンに向かった。
休日だからこそ人が多いこともあってかなり騒がしい。その中で俺と千崎は時間にして一時間ほど遊んで過ごした。
「……柚希何してんのかな」
定期的に開かれる女子会みたいなものを彼女は今満喫中だ。
例によって例のごとく集合場所は雅さんの家らしい。つまり今日は俺だけでなく空たちも暇をしていることだろう。
「なあなあ」
「なんだ?」
「あの美人な彼女さんとは上手く行ってんのか?」
「当たり前だろ。ずっとラブラブだよ」
「おぉ……自信満々やんけ」
そりゃそうだろ。
というか俺の自惚れでもなく思い込みでもなく、柚希との仲は本当に良好だ。それこそお互い一緒に居ない方が少ないんじゃないかってくらいにな。
「……やっぱり彼女が出来ると毎日楽しいか?」
「楽しいなぁ」
「だよなぁ……羨ましいぞこのこの!」
グリグリと背中に拳を押し当ててくる千崎に苦笑する。あまり自慢気に言うことでもないけど、本当に彼女が居る日々ってのは楽しい。ただ勉強の為に学校に行くだけでなく、愛おしい彼女にも会えるのだから。もちろん学校以外の場所でも同じ時間が増えるので、もっともっと彼女のことを好きになるのだから。
「ちょい下品なこと聞いてもいいか?」
「なにが?」
「……やっぱりセックスとかしてんの?」
「……………」
急に生々しくなったな……。
俺はともかく、この話題には柚希も関係する。よって、俺は素直に答えることはしなかった。まあ何も言わない俺の態度からある程度察したみたいだけど。
「リア充生活満喫してんだな……はぁ、俺も彼女が欲しいぜ」
「そっちの学校に良い子は居ないのか?」
「あぁ……前も話したっけ。まあいいか、可愛い子は居るんだけどあまり話したことがないんだよな。そもそも絡みがないし」
彼女が欲しいのならまず絡みは欲しいところだよな。何もない状態で付き合ってくれなんて言っても成功する確率は……相手が遊びか、或いは恋愛に興味があって頷くことも考えられるけど可能性は低いだろうし。
「……なあ三城、ちょっと変態的な思考かもしれんが憧れるんだよ。一緒に風呂に入ってイチャイチャもしたいし、クリスマスの聖夜を性夜に変えたいし……バレンタインにチョコを体に塗りたくって私を食べてとか言われたいんだ!」
「そ、そうか……」
そんな女の子が居るわけ……うん?
俺は少し引っ掛かったが、それからも千崎は彼女が欲しい旨のことを言い続けていた。それから色々と遊びまわり、気付けば夕方近くなっておりそこで俺は千崎を別れた。
「じゃあな三城」
「おう。またな」
いやぁ、後半はずっと彼女が欲しいという千崎の願いを聞き続けていたが……結論を言うと本当に楽しかった。さてと、こうなってくると後は帰るだけだが……やっぱり一日に一回は柚希を見たいって気持ちになる。
「まあいい、電話で話せるだけでも嬉しいしな」
俺はそう思いスマホを取り出した。
そして柚希に電話を掛けるのだった。
『もしもし?』
「もしもし?」
「……え?」
今声が二重になって聞こえたような……そこで俺はまさかと思って後ろを振り向いた。するとそこに彼女が、柚希が居たのだ。
「な、なんで……」
「えへへ。あたしも帰りだよ?」
通話を切った柚希はスマホを仕舞って俺の横に並んだ。
「カズの背中を見かけてすぐに近寄ったんだけど、そのタイミングで電話が掛かってきてさ。そんなに私に会いたかったの?」
「……だな。ちょうどそう思ってた」
「うん♪ 実はあたしも~!」
ドンと音を立てるように柚希が胸に飛び込んできた。
……そっか。同じことを考えていたのか。そう思うとやっぱり嬉しくなって強く柚希を抱きしめてしまう。
「やっぱり以心伝心だねぇ」
「だな。うおおおおおお柚希好きだあああああああ!」
「あたしも好きだあああああああ!!」
あぁそうそう、当り前だけど周りには人は居ないので大丈夫だ。
お互いに顔を見合わせ、俺たちは歩き出した。……それにしても、今になって俺は千崎の話で引っ掛かっていたのが何かを思い出した。
「……柚希じゃん」
「なにが?」
「いや……」
バレンタインではなかったが、クリスマスに……ね? 刺激的でエッチな夜を柚希と過ごしたけど、流石の千崎もあんなのは漫画の世界だけと言っていたくらいで何とも言えない。
「凄く可愛くて、んでエッチな女神みたいな子は傍に居るんだなって思った」
「うふふ~♪ カズの前だけだよぉ♪」
そうじゃないと俺が泣いちゃうって。
それから俺は柚希の家まで彼女を送って行った。そして別れ際にキスをするのもお約束で、今日に関しては窓からまさかの藍華さんが覗いていた。
「もうお母さん!!」
「いいじゃないのよ~! でも本当にラブラブね♪」
……こればかりは慣れそうにないな。
藍華さんに噛みつく柚希に苦笑しながら、俺はこれからちょっと気を付けようと思うのだった。
「和人君! 私も母として娘の可愛い姿は見たいからジャンジャンしていいんだからね!?」
「あ、はい」
だそうですよ柚希さん。
当然、柚希がまた噛みつくのもお約束だった。
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