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「……あ、そっか。あの時見えた赤いのって」

「そうなの。サプライズで見せたかったからね」


 サプライズ、なんて素敵な響きなのだろうか。

 その場でクルっと回った柚希、その仕草さえも可愛らしかった。サンタ服ということで赤を基調としているものだ。頭には帽子を被っており、サンタ服の方は肩を出すタイプで膝上くらいまでのワンピースのようなものだ。


「どうかな?」

「最高に可愛い」


 可愛いしエッチだった。

 正に聖夜に現れた天使と言うべきか女神とも言うべきか、取り合えず目の前に居る柚希がとにかく可愛くて綺麗だってことだ。


「ネットで探しててかなり可愛いと思ったの。露出は多いけど室内でしか着ないし、どうせなら可愛さだけじゃなくてエッチなのがいいかなって♪」


 そう言って柚希は下から俺を覗き込むような姿勢になった。

 肩を出すスタイルの服だと基本的にこんな姿勢になれば胸元が見えてしまう。豊かな谷間はやっぱり視線を吸い寄せられるし、こんな子が目の前に居て手が伸びないわけがなかった。


「柚希」

「きゃっ♪」


 可愛い悲鳴だった。

 とはいえ、俺はもういつぞやの過ちは繰り返さないのだ。今すぐに柚希と色々としたい気分だが、藍華さんと康生さんも居るし乃愛ちゃんだっていつ帰ってくるかも分からない。


「しないの?」

「……みんな居るからなぁ」

「……むぅ」


 ちなみに、柚希のしないのにクラッと来たのは当然だった。

 不満そうにする柚希だったが、どうにも俺から離れようとせずずっと体を擦り付けてくる。こんな風にアピールされるとええいままよ、そう言って飛び掛かりそうになるのが堪えろ和人!!


「……じゃあさ、いっぱいイチャイチャしよ? ただ触れてくれるだけでいいから」

「……分かった」


 本当にどれだけ可愛いんだよこの子は。

 俺は柚希に手を引かれてベッドの上に上がった。そのまま壁を背にするように座ると俺の股の間に柚希が腰を下ろした。俺の体に背中を預けるような彼女から感じる全幅の信頼、そしてもっと構ってほしいと体を擦り付けるいじらしさ……あぁ本当に可愛い。


「なあ柚希、さっきから俺ずっと心の中で可愛いしか言ってないよ」

「本当に? あたし、カズの前で可愛い子になれてる?」

「なれてるなれてる。というかいつもそうだよ」

「……うん。何度言われてもカズからの言葉なら嬉しい♪」


 もう構い倒したくて仕方ないよ。

 俺は柚希のお腹に腕を回すようにして、更に強く密着するように抱きしめる。指でサンタ服に触れたけどやっぱり生地は凄く柔らかかった。左手はお腹に回り、右手で柚希の頭を撫でながら幸せな時間に浸る。


「柚希、こっち向いて」

「うん」


 少し体を傾け、首を回してこちらに向いた柚希に俺はキスをした。

 触れ合うだけのキスだったが、当然俺たちがそれで我慢できるわけもなく段々と舌を絡めるような激しいキスへと変わっていった。


「大丈夫、だからもっとあたしに触れて?」

「分かった」


 ……何か試されているような気分になるなこれ。

 柚希が喜ぶように、そして俺もしたいように柚希の体に触れていく。すると柚希の手が俺の手を掴み、その豊満な胸元に導いた。そのまま押し当てて動かなくなったのでつまりはそういうことなんだろう。


「っ……はぁ♪」

「……って柚希ブラは?」

「してないよぉ当り前じゃん♪」


 ぐぐっ……本当に試練並みに俺は試されていた。

 とはいえ、俺も何とか鋼の精神力で襲い掛かりたい気持ちを抑え込む。柚希の柔らかさを堪能していると、当然のように柚希の呼吸は少しずつ荒くなっていく。チラチラと後ろを振り返っては潤んだ瞳に見つめられるという時間だった。


「……ねえねえ、声我慢するからお願いカズぅ」


 ……絶対に試されてる!!

 そのまま柚希の股に向かって手を伸ばし……っと、そこでドアの向こうからバタバタと足音が聞こえ俺の手は止まった。しばらくしていると、バタンと音を立てて乃愛ちゃんが部屋に入って来るのだった。


「まだお兄さん居たんだねぇ」

「……おう」

「? どうしたの?」

「……乃愛ああああああああ!!」

「ひゃああああっ!?」


 柚希の声に乃愛ちゃんは思いっきり怖がっていた。

 俺からは当然柚希の顔は見えなかったけど、それだけ怖い顔してたのかな。とはいえある意味乃愛ちゃんがこのタイミングで帰って来たのは有難いかも。


「……てかお姉ちゃんサンタ服って……めっちゃ似合ってるし。もしかしてイチャイチャしてた瞬間に突撃しちゃった系……だよね。あはは、失礼します!!」


 バタンと、再び大きな音を立てて乃愛ちゃんは出て行った。

 台風のように現れては去っていった彼女に苦笑していると、柚希が立ち上がってタンスに向かい毛布を取り出した。そのまま俺と柚希自身を包むようにして再び同じ体勢に戻った。


「……ちょっと気が抜けちゃった。ごめんねカズ、でもあと少しだけあたしと引っ付いててくれると嬉しいな♪」

「分かったよ。思いっきり引っ付く」


 ということで、その後はお互いに我慢も出来て実に平和な時間だった。

 本番をすることはなかったが、お互いに満足したところで体を離したのだが……近いうちに何が何でも俺の方の家に泊まりに来ることが決定した。


「それにしても最高のプレゼントだったなぁ」

「そんなに?」

「あぁ。だって天使か女神って思ったぞ俺は」

「あはは、そんな風に言ってくれるなら良かったよ♪」


 それから玄関に向かい、最後に柚希とキスを交わして俺は家を出た。

 息を吐けば白い靄が見える。それくらいに外は寒かったけれど、この寒さが少しだけ熱くなっていた頭を冷やしてくれた。


 それにしても……お互いによく我慢出来たなとは思う。

 何度も言うが本番はしていないし、それだけは少し柚希に申し訳なかった。俺だけしてもらったようなものだし……これは次の機会に気合を入れて柚希の相手をしなければならなくなりそうだ。


「よし、帰るか」


 こうしてクリスマスの夜は過ぎて行った。

 今年は本当に色んなことがあるけど、クリスマスの夜もまた大切な思い出になったのは言うまでもない。幸せな温もりと、彼女が傍に居てくれる幸福……そしてあまりにエッチすぎるアピールを我慢したのも本当に頭に残る思い出になりそうだ。




【あとがき】


二人は我慢したので特にエッチではなかったですね!

申し訳ない。

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