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「……あ~」
「ふふ、気持ちよさそうだね?」
夕飯の後、約束したように俺と柚希は一緒に風呂に入っていた。
今日の夕飯は柚希特性のホワイトシチューと鮭のムニエルをメインとした食事だった。シチューのクリーミーな味もさることながら、鮭のムニエルもまた食べたいと思ってしまうほどの美味しさだった。
たっぷり味わって食べたいのに箸が止まらず次から次へとパクパクと食べていた俺を柚希はずっと楽しそうに見つめていた。何度も思ったけど、本当に美味しい料理を作ってくれる彼女の存在ってのは幸せだ。
「……あ~」
二度目の気持ちいい声が出た。
夕飯を済ませてこうして一緒に浴室に居るわけだが、柚希に背中を流してもらった後だ。頭と前側を洗い一足先に浴槽の中に入らせてもらっていた。ぐでぇっとのんびりしながらお湯に温まって柚希を眺めている。
「……なんか贅沢な光景だなこれって」
「えへへ、そう? カズならもっと見てもいいんだよ~?」
浴室に入った時点で俺と柚希は身を隠すものは手にしていない。つまり俺もそうだし今体を洗っている柚希もその身を惜しげもなく俺に見せていた。シミ一つない綺麗な白い肌、ぷるんと揺れるFカップのバストも丸見えだった。
「……じぃ」
「カズのエッチ! でも、もっと見せちゃう♪」
……この会話だけだと俺たちとんでもないやり取りしてるよな。
こうやって風呂でイチャイチャするのもいいが、夏だと油断していると風邪を引いてしまう可能性もないわけではない。なので柚希は俺の反応を楽しみつつ、すぐに体を洗ってしまうことにしたようだ。
「ふんふんふ~ん♪ ふふふ~ん♪」
湯気が立ち上る浴室に柚希な鼻歌が響き渡る。
俺もそんな柚希の鼻歌をBGMにしながら体を温めていた。体を洗い終え髪の毛も洗った柚希は俺の隣に腰を下ろすように湯船へと入ってきた。
「……ふはぁ~♪」
気持ちよさそうな柚希の声に今度は俺が苦笑する番だった。
「えへへ、好きな人とお風呂に入るってやっぱり幸せだね」
「そうだな。俺今凄く嬉しいもん」
たぶん顔に出ている以上に心は嬉しさで騒ぎまくっているはずだ。こうして柚希と一緒に風呂に入るのは初めてじゃないし、これ以上のことだって既に経験している。それでもこうやってのんびり恋人とお風呂を楽しむ……うん、最高に幸せだ。
「ねえねえカズ」
「うん?」
「あたしのおっぱい浮いてるよ」
「……………」
ぷかぷかと柚希の胸がお湯に浮いている。
自然と伸びた俺の指はツンツンと柚希の胸をタッチした。指の先から伝わる柔らかさに比例するように、少し沈んでは弾力と共に押し返される感じがした。
「おっぱいばかり夢中にならないで私の方も構ってよ~」
そしてギュッと抱き着いて来た。
何も着てないからこそ肌と肌が擦れてお互いをこれでもかと感じることが出来る。しばらく抱き着いていた柚希が離れ、えへへと笑って満面の笑みを浮かべた。濡れていて色気を感じる一方、その色気の中に絶妙なバランスで両立した愛らしさが大変素晴らしい……はぁ、柚希と過ごせば過ごすほど魅力を知っていく。
新しい魅力を発見すれば、次にはその魅力が更に上乗せされていくのだから不思議なものである。
「それにしても、今年は気を付けてた甲斐があったかな」
「何を?」
「汗疹」
「あぁ……」
汗疹なぁ、俺も何度か経験があるから良く分かる。
痛いんだよな汗疹って。しかも出来る場所によっては地獄の苦しみを味わうことになるし……つうか塗り薬もかなり沁みて痛いんだこれが。
「去年さ、胸の……ここに出来たの」
自身の胸を持ち上げ、その持ち上げて見える皮膚の場所に指を当てた。
「ケアはしてたつもりなんだけどヒリヒリするなって思ったら汗疹が出来ててさ。何をするにも擦れて本当に大変だったの」
「なるほどなぁ。流石にその部分は男だと分からないけど、俺は昔に股の間に出来たことがあって地獄だったわ」
「あぁ股づれかぁ。あれも辛いみたいだよね」
昔……まあ一昨年もなったっけか?
治るのは結構早かったけど、あの間は歩き方も変になるし柚希が言ったようにちょっと擦れただけで痛いのなんの……出来れば二度と経験したくはないかな。
「……ツンツン」
柚希が頬を突いてくる。
目を向けるとサッと逸らし、前を向いてジッとしていた。俺もやり返すように柚希の頬をツンツン突いてみる。するとこっちに顔を向けた柚希はやっぱりにぱぁっと笑顔を浮かべた。
「……なあ柚希」
「どうしたの?」
「なんでそんなに可愛いの?」
本当に素直にそんな言葉が漏れて出た。
どうしてこの子はこんなに可愛いんだろうか。何をしても可愛いし、何を言っても可愛い。もう柚希に対して可愛いって言葉しか出てこない俺は異常なのだろうか。いや違う、本当に柚希が可愛すぎるのだ。
俺の問いかけに柚希はえっへんと胸を張って口を開いた。その様子はあくまで当然のことを口にするように、それが絶対の事実であるかのように言うのだった。
「好きな人の傍に居れば女の子はどこまでも可愛くなれるんだよ?」
「……………」
「だってカズの傍に居るあたしがこうじゃん? 自分で言うと自意識過剰に思われるかもしれないけど、カズのことを考えてるあたしってどこまでも綺麗に可愛くなってる気がするの。ふふ、カズもそう思ってくれたからそう言ったんでしょ?」
……本当にこの子は。
俺は唇をお湯に浸けて、ブクブクと泡を立てるように息を吐き出す。照れてしまった俺を柚希は抱きしめ、よしよしと頭を撫でてくるのだった。
「あ、そう言えばカズはSNSやってる?」
「うん? あぁ少しなら」
SNS、今の時代においてほとんどの人がやっていることだろう。
自身の近況を呟いたり、何か面白い情報を共有するためとか、或いは今の世界の政治的な動きを見るためなど……色んな使い道があるものだ。
俺としては暇なときにほんのちょっと眺める程度だけど、柚希は結構やっていたりするのか?
「うん。あたしも最近まではやってなかったけどね。カズと付き合いだしてから色んなことを呟いてるよ?」
「へぇ……」
「カズとのラブラブな日常を振りまくんだぁ。とはいってもちゃんと色々なことに気を付けているけどね」
確かにSNSを通じて出会い系の犯罪も増えているくらいだしな。便利になっただけ危険なこともあるし、ほんと世の中美味しいことだらけじゃないんだなこれが。
「中学三年の頃に凛と雅の三人で写真を撮ったことがあるの。その時は普段着ない服だったしマスクもしてたけど……ダイレクトメッセージでお金払うから会ってくれないかってのがいっぱい来てさ。それっきり触らなかったの」
「なるほど……」
金払うからってどこにでも居るんだな中学生に手を出そうとする大人が。
まあとにかく柚希の身に何もなくて良かったよ。小さく息を吐いたはずだけど柚希にはやっぱり気づかれていて、心配してくれてありがとうと頬にキスをされた。
当然だよと柚希に顔を向けると今度は唇にキスをされた。
「……もっとキスしよ?」
今度は思いっきり舌を絡ませるキスをした。
しばらくそうやってお互いにキスをしていると、どちらからともなく顔を離して困ったように苦笑した。
「上がろっか」
「そうだね……あう」
うん? どうしたんだ?
一緒に脱衣所に戻ったけど柚希の様子がおかしい。首を傾げる俺に向かって柚希はあははと笑ってこんなことを口にするのだった。
「あたし、パンツは穿かない方がいいかなぁ今は」
「……あ、そういう」
柚希の言葉の意味をすぐに理解した。
まあどうせすぐに脱ぐことになるし? そう言うとそれもそうだねと柚希は頷くのだった。
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