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 今日久しぶり……久しぶりか? 柚希はいつも傍に居るから久しぶりには思えなかった。まあそれだけ彼女が俺にとって何より身近な存在って感じなのかもしれない。

 隣を歩く彼女の横顔を見つめながら俺はそんなことを考えていた。

 さて、これから俺の家に来るわけだが、その前に柚希の家に向かっていた。荷物を置いていかないといけないし、着替えなども用意しないといけないからだ。


「今日は何をしようかなぁ♪」

「はは、本当に嬉しそうだね」

「当然だよ。凄く、すご~く楽しみ!」


 あぁ、この笑顔に癒されるよ本当に。

 相変わらず俺の彼女は可愛い、なんて何度思ったかは分からないことを実感しながら柚希の家に到着した。するとちょうど乃愛ちゃんが家から出てくるところだった。


「あ、お姉ちゃんにお兄さん」

「あら、乃愛はこれから洋介の家に?」

「うん。よう君の家にお泊りするのも久しぶりだなぁ」


 乃愛ちゃんも様子から本当に楽しみにしているのが伝わってくる。

 家から出る直前、乃愛ちゃんが柚希を手招きして呼び寄せた。俺としては少し気になったものの、お姉ちゃんである柚希に何か相談があるのかもしれないな。


「……それで……その……かな?」

「うん……だよ……だから」


 かろうじて聞こえるけど何を話しているのかは分からない。

 話が終わったのか柚希が乃愛ちゃんの体を抱きしめ、背中をトントンとしていた。その様子は落ち着かせるというよりは励ましている? 応援している感じにも俺には見えた。


「ありがとお姉ちゃん。それじゃ行ってくるね。お兄さん、お姉ちゃんをお願い」

「分かってるよ。いってらっしゃい」

「うん!」


 タタタっと駆け出して行った乃愛ちゃんを見送った。

 柚希はずっとその背が見えなくなるまで見つめていたが、一体何の話をしたのかもしかしたらの予想は出来ている。ま、その予想が当たっているにせよ外れているにせよ上手く行くことを願っておこう。


 柚希の家に上がり、リビングで準備が終わるのを待たせてもらった。しばらくすると私服に着替えた柚希が降りてきた。ノースリーブに膝程度までのズボンでとても涼しそうな姿だ。


「お待たせ」

「おう」


 一日泊まるだけなのでそこまでの荷物ではないが、鞄を持った柚希と手を繋いで歩き出す。暑い、本当に暑い、体育祭の余韻が僅かに残っているのかマジで暑い。でも俺たちは決して手を離すようなことはしなかった。


「なあ柚希、コンビニ寄ってアイスでも買わない?」

「いいね。いこっか」


 少し方向転換してコンビニへ。あ、ちなみに俺を見上げる形で柚希が口にする「いこっか」が最高に可愛くて好きです。

 最寄りのコンビニによってアイスと、ついでにジュースも買って俺たちはコンビニを後にしたのだが、ちょうどクラスメイトがみんなで打ち上げに向かっている瞬間を目撃した。


 何人かがこちらを見て指を向けてきたが、柚希が早く行こうと手を引いたのでそのまま俺たちは歩いて行った。さてさて、何を言われたのかは気になるが今は柚希との時間を楽しむことが大切だな。


「さっきの話、気になる?」

「あ~乃愛ちゃんの? 何となく分かるけどさ」


 何となく分かる、それは嘘ではなかった。

 おそらくは洋介に関係すること、柚希が励ますようにしていたのはおそらくそういうことなんだろうなって予想は簡単に付くだろう。上手く行くことを願ってる、そう柚希に言うと彼女はそうしてあげてと言葉を返した。


「どうぞ」

「お邪魔しま~す!」


 そんなこんなで家に着いた。

 母さんが帰宅するのはたぶん遅くなるだろうことは連絡で来ていたので、夜遅くまでは柚希と二人っきりということだ。当然のように俺の部屋に荷物を置き、リビングに戻ってきてすぐだった。


「おっと」


 待ちきれない、そんな感じで柚希が抱き着いて来た。

 顔を上げて瞳を閉じているその様子から何を望んでいるのかは分かった。そんな柚希に応えるように唇にキスをすると、もっともっととせがむように柚希からも強く唇を押し付けてきた。


「ちゅ……ぅん……はぁ……っ」


 悩まし気な声を漏らしながらもしばらくキスを続けた。

 流石に深いキスはしなかったが、顔を離した柚希はもう少ししたそうだった。とはいえ今日は長い、それを分かっているのかえへへと笑みを浮かべてこんなことを口にするのだった。


「続きは夜だね♪」

「……うん」


 本当に、一つ一つの言動がドキドキさせてくれる女の子だ。

 一旦お互いに色んな熱を冷ます意味合いも込めて買ってきたアイスを食べることにした。テレビを付けるとちょうど今人気のちょっとお色気よりのアニメが放送していた。空とならともかく、柚希とこういうのを見るのはどうかなと思ったので変えようとしたのだが柚希がそれを制した。


「これ知ってるよ。空も見てるよね」

「あ、うん……実を言うと俺も少しは」

「じゃあ見ようよ。あたしもちょっと気になるし」


 そっか……それじゃあ見ることにしよう。

 アイスをパクパク食べながらアニメを見ていると、流石お色気系のアニメということもあり結構際どいシーンがあった。決してR18のようなシーンはないが、声優さんの演技もあってそれなりにエッチではあった。


「……ねえカズ」

「どうしたの?」

「あれ、なんかいいね」


 おや、それは一体……。

 よしと頷いた柚希が立ち上がり、座っていた俺の足の間に腰を下ろした。以前にもこういうことがあった気もするが何を……柚希は俺の手をそれぞれ掴み、持ち上げるようにして自身の胸へと誘った。


「柚希さん!?」

「……これ、興奮する?」

「あ……あの……」


 愛する彼女を足の間に座らせ、その体の感触を楽しむこの体勢……はい、柚希の言葉通り嘘偽りなく興奮した。両の掌に伝わる至高の柔らかさ、それをしばらく感じていた俺は当然こう呟いた。


「柚希さん、これ我慢できなくなるから危険ですわ」

「そだね。私ったらカズと二人になるとエッチになっちゃんだからもう!」


 頑張って自重する!

 そう言って俺の隣に改めて腰を下ろした柚希はガッシリと腕を抱きしめてきた。こうしていれば俺の温もりを感じて我慢できるからと、柚希は照れくさそうにしながら笑みを浮かべた。


「柚希は……」

「なに?」

「エッチだと思います」

「そう……だよねぇ」

「でもそういうところも好きだ」

「あ……ふふ、あたしもそう言ってくれるカズが好き!!」


 スリスリと頬を擦りつけてくる柚希の姿に俺は幸せな気持ちになるのだった。体育祭が終わった後、まさかこうやって柚希と過ごすことになるとは去年は思わなかったなぁ。確か去年は終わってすぐに空の家に行ってゲーム三昧だった気もするし。


「あたし、今この瞬間去年の空に嫉妬してる」

「え?」

「空に聞いたけど、去年の体育祭の後は空の家に行ったんでしょ? 徹夜でゲームして二人で仲良くさ」

「あ、あぁ」


 今ちょうど俺が思っていたことだそれは。

 段々と唇を尖らせていく柚希だが、過去の空に嫉妬してるってのはそういうことなのかな。


「あたしがまだカズのことを知らない時に、こんなに今あたしの好きな人と仲良くしてたなんて! ああもう許せない! がるるるるるっ!!」

「あはは、本当に柚希は可愛いなぁ!」

「わぷっ!?」


 いつぞや誰がその胸元に抱きしめられたように、今度は俺が柚希を思いっきり抱きしめた。驚いた声を上げた柚希だったが、すぐに甘える柚希ちゃんモードを発動しスリスリと顔を当てては匂いを嗅いできた。


「はぁ……幸せぇ」


 蕩けた笑顔を浮かべる柚希に、俺もどうしようもないほどに幸せだと伝えたら更に凄い顔になった。ま、こんな柚希の顔を見れるのは俺だけの特権だ。今もこれからも、そしてもっと先の未来も……きっと。

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