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……大変なモノを見てしまった、そう私は顔を赤くして考えていた。
二日ぶりにお姉ちゃんが帰ってくることは知っていたので、色々と聞きたいこともあったしちょうど私も濡れていたのでシャワーを浴びようと考えたのだ。それなのにいざ風呂場に向かえばお兄さんも居て……うん、まさかだった。
「あんなに雨降ってたし、お兄さんがシャワーを借りに来てるのも変じゃないか」
まだパパもママも帰ってくる時間じゃないし、私も居なかったから二人で入ってたんだろうけど……まあ何となく、お姉ちゃんが勢いに任せて二人で入ることにしたんだろうなとは思った。
お兄さんの表情と違い、お姉ちゃんの……こう、見られちゃったテヘみたいな顔を見ればそんな想像が出来ちゃうし。
「……でもいきなりで本当にビックリしたぁ」
恥ずかしくなった頭を冷やすために、私は冷蔵庫から麦茶を出してコップに注いで飲んだ。喉を通る冷たさに火照っていた頭が冷静になる。そうなると、先ほどの光景を考えて別に誰も間違ってないということに気づいた。
……だってお姉ちゃんみたいな綺麗な人が裸で目の前に居るんだよ? おっぱいも凄く大きくて柔らかくて、もうとにかく凄いんだからそんな人を前にして我慢は出来るはずが……ないよね。
私がお兄さんなら絶対に我慢できない、むしろ手を出さないなんて逆に罪だよ。お姉ちゃんに手を出すことの方が正しいじゃん。
「そっか。別に変なことじゃないんだ」
この姉にしてこの妹あり、そんな声がどこからか聞こえた気がするけど私は特に気にすることはなかった。
まあ私ももしようくんと一緒のシチュエーションになったらそんな感じになりそうだし? というか好きな人とお風呂に入れるって幸せじゃん? ほらほら、やっぱり何も変なことじゃないしおかしくないじゃん。乃愛ちゃん納得です。
少ししてお風呂から上がったお兄さんがリビングに現れた。
「や、やぁ乃愛ちゃん」
「あはは……こんにちはお兄さん」
納得した……納得したけど、お兄さんの裸を見てしまったことは事実でそれだけは凄く恥ずかしかった。とまあこの話は置いておいて、着替えがないから仕方ないけどパパの服を着ているお兄さんは何というか……面白いね。
クスクス笑う私にお兄さんも意図を察したのか、照れるように頭を掻いていた。パパは結構体を鍛えてるからガッチリしてるんだよね。それもあってお兄さんにしては少し今着ている服はブカブカだ。
「お兄さん、今日はどうするの?」
「あぁ。服が乾いたら帰るよ」
「そうなんだ……」
ちょっと残念、そう思ったのは何だろうか。っていうか、私はお姉ちゃんが居ない間少し嫉妬した部分がある。それはお姉ちゃんを独占するお兄さんにもだけど、お兄さんを独占するお姉ちゃんにもだ。
もちろんこれは恋なんかじゃなくて……何だろうな、兄のような存在を独占されることに対する嫉妬なのかもしれない。
「お兄さん、お姉ちゃんとの二日間は楽しかった?」
「あぁ……楽しいというのもあるけど、幸せでもあったかな」
ふ~ん、まあでも何となく予想は出来てしまう。お兄さんもそうだし、お姉ちゃんの様子も凄く幸せそうだし……いや、いつもと変わらない気もするけどさ。
「それよりも乃愛ちゃん、ごめんなお風呂」
「……あ、行ってくる!」
そうだ。タオルで誤魔化したけど私も濡れてるんだったよ。お兄さんにそう言われて私が改めてお風呂に向かうとちょうどお姉ちゃんがブラを着けるところだった。
「さっきはごめんね」
「いいよ……びっくりしたけどさ」
それもそうかとお姉ちゃんは笑った。服を脱ぎながらお姉ちゃんを見ていると、大きなブラにこれまた大きな胸が包まれていく。形を整えるように手を添えて位置を調節するその姿に……私は持たざる者の怨念を感じるような気がした。
「カズと一緒だとこう……自分を抑えられなくなることが多々あるのよね」
「多々ってところじゃないと思うけど……何しようとしたの?」
これは私の単純な興味だ。お姉ちゃんは私の耳元に顔を近づけ、カタカナにすると四文字になる言葉を言った。もちろんそれが何なのか理解できるし、お姉ちゃんだからこそ出来るよねとも思った。
「そろそろ夏とはいえ濡れたんだからちゃんと温まるのよ?」
「分かってるよ。仮に風邪とかひいちゃってもお姉ちゃん面倒見てくれるでしょ?」
「アンタは本当に……ま、その通りだけど」
「ふふ、お姉ちゃん大好き」
お姉ちゃんの言葉が嬉しくなって抱き着いてしまった。胸元に顔を埋めたので柔らかさはもちろんだけど、少し下着が擦れて痛かった。それでも至福の瞬間、お兄さんがメロメロになるのも分かっちゃう。
「こら、アンタ濡れてるんだから引っ付くんじゃないの!」
「えぇ~嫌だ!」
「何でよ!」
「痛いっ!?」
ペシンとチョップをもらってしまった……。おのれ、まあでも今日からお姉ちゃんは家に居るんだし、また夜におっぱいサンドイッチを味わうことにしよう。
「ふぅ、お待たせカズ」
「おかえり」
私服に身を包んだ柚希が戻ってきた。そのまま冷蔵庫からジュースを出してコップに注ぎ、お菓子を持ってソファに座る俺の隣に腰を下ろした。
「ありがとう」
「ううん、突然だったしこれくらいしか出来ないけど」
全然ありがたいよ。柚希からコップを受け取り、喉を潤してお菓子を食べる。夕飯の前だしあまり食べ過ぎるのも良くない。母さんが弁当を買って帰るって言ってたからちゃんと食べないといけないからな。
「それにしてもさっきは惜しかったね」
「……あ~」
確かにそれは思った。でも乃愛ちゃんに見られたことが強烈過ぎて変に諦めが付く感じなのも少し変な感覚だ。
「……う~ん」
「カズ?」
恋人として、別にそういうことをするのは変なことじゃない。けど彼女の家でっていうのも少し難易度が高いというかちょっと戸惑ってしまう。それを伝えると柚希は笑いながらこんなことを教えてくれた。
「気にすることないよ。お母さんに聞いたけど、お父さんたちもお互いの家で色々したことあるみたいだし」
「……ほ~ん」
何だろう、聞いてはいけないことを聞いた気がする。チョコレートクッキーの味を楽しみながら、俺は柚希から聞いたことを出来るだけ忘れようとした。そんな俺の反応を楽しそうに見つめていた柚希はいつものように体を寄せてきた。けど、今日に関してはいつもと違ったのだ。
「……くんくん」
「どうしたの?」
柚希は顔を近づけて俺を……いや、正確には俺の着ている服の匂いを嗅ぐ。しばらくそうして柚希はこう口を開いた。
「……お父さんの匂いがしてちょっと複雑かも」
柚希、それは絶対に本人に言ってはならないぞ……って、将来もし俺にも子供が出来たらこんなことを言われる日が来るのかもしれないなぁ。父親がどういう気持ちになるのか全く理解できないけど、たぶん刃物で刺されるよりキツイんじゃないか?
「そろそろ乾いたかな」
柚希が制服を手に取って触ってみると、どうやら乾いたみたいだ。俺は制服を受け取り、康生さんの服を脱いで改めて着替え終えた。少しジメジメするような気がしないでもないけど、帰るまでの我慢だな。
「……はぁ」
荷物を持って立ち上がると柚希が大きな溜息を吐いた。そして寂しそうに俺を見つめる視線に、何となく柚希が思っていることが理解できた。
「この二日間があまりに濃密すぎて、離れるのが嫌だなって思っちゃった」
「……確かにな。それは俺も一緒だよ」
本当に、本当に濃い二日間だった。朝から夜まで、それこそ起きてから寝るまで柚希が傍に居る生活……本当に幸せだった。でも、ああやって柚希が俺にたくさんのことをしてくれたんだ。俺も何かそのうちお返しをしたいところだ。
ま、どんなに寂しくて帰らないといけないからな。それでも、柚希は俺から視線を外してはくれない。そして俺も……そんな風にお互いに見つめ合っていたからか、傍に来ていた乃愛ちゃんの気づかなかった。
「ど~ん!!」
「え!?」
「ちょ!?」
ソファに倒れ込むように俺と柚希は乃愛ちゃんに押し倒された。乃愛ちゃんは俺と柚希の二人を抱きしめるようにしており、その表情は幸せそうに笑っていた。
「お姉ちゃんが居なくて寂しかったし、お兄さんが居ないのも寂しかった。だからこれくらいいいでしょう?」
そう言った乃愛ちゃんに断る言葉を持ち合わせておらず、俺と柚希は互いに顔を見合わせて苦笑した。
「とりあえず、もう少し居ることにしてもいい?」
「ふふ、もちろん」
さてと、柚希だけじゃなくて乃愛ちゃんの相手も少しの間頑張ることにしよう。
【あとがき】
お世話になっております。
最近毎日のように投稿しているのは書きたいことが次から次へと出てくるというある意味覚醒した状態のようなものでして……でも息が詰まることもあるので番外編みたいな感じで特殊な話も書くかもしれません。
IFとして和人と柚希、乃愛ちゃんが実の兄妹として……その、IFだからこそ色々書いてみたいですねニヤリってやつです。
我慢する和人と攻める柚希って感じで。
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