第2話  二つ名

「ーーで、兎に負けたと」

「あいつら汚いんですよ! か弱い乙女を集団で襲ったんですよ!!」

「一角兎は仲間を呼ぶから注意するようにって前に言わなかったかな?」

「ぴゅー」

 口笛吹いて誤魔化したら、

「こらー」

 アリスさんに頬っぺたをつねられた。

「痛い、ごめんなさい」

「やっぱりエマに討伐系の依頼は無理だったか」

 うん、無理だね。

 困った顔のアリスさんが私に新しい依頼書を出します。

「それじゃあ、いつものように素材集めの方をお願いね」

「そうしてもらえると助かります」


 ハンターの依頼には主に二種類ある。

 指定の魔物の討伐と素材集めだ。

 前回の依頼は討伐の依頼、そして今回の依頼は素材集め。

 討伐系の依頼は直接魔物と戦うが素材集めの方は魔物との接触がなければ基本的には楽な方だ。


 何より私には探知スキルがある。

 私を中心に一キロ圏内の魔物や人の位置がわかる。

 このスキルで魔物を避けて進むことができる。


 拾った木の枝を振りながら森の奥へと進む。

 お、とこっちの道には魔物がいるな。

 迂回して、到着。


 お次は、鑑定、と。


 鑑定スキルはその名の通り、鑑定するスキルだ。それ以外に説明のしようがない。


「ひけし草にひやし草にそれからいやし草……うん、あいかわらずふざけた名前だけど依頼達成かな。さて、帰りますか」




「あいかわらず、素材集めだけは完璧ね」

「一言よけいですよ」

 私だってやろうと思えば魔物とだって戦えます。ですが、前世が日本人だったせいもあり、生き物を殺めるのに若干の抵抗があるのも否めません。

 ですから、私は主に探知や鑑定などの補助スキルをメインに覚えました。

「怒った?」

「怒ってません。それよりも報酬を下さい」

「はいはい。あいかわらずがめついな」

 私はアリスさんから報酬の銅貨三枚を貰いました。

 この世界の貨幣は金貨、銀貨、銅貨です。

 銅貨三枚あればだいたい三日間ぐらい暮らせます。

「どうも」

「嬉しそうね」

「はい」


 私が報酬で得たお金でランチ(兎肉のステーキ)をしていると同業者が来ました。


「この席、空いているかな?」

「どうぞお好きに」

「では遠慮なく」

 同業者ことSランクハンターのセシリアさん。初対面ですが、彼女の名前はFランクの私でも知っています。

「君もハンターかな?」

「Fランクハンターのエマです」

「私の名前は、ってその顔は知ってそうだな」

「Sランクハンター【氷炎】のセシリアさん」

「その呼び方は恥ずかしいからやめてくれないか」

「ちなみに私にも二つ名があります」

「き、聞いてもいいかな?」

「【万年Fランク】のエマ」

「そ、そうか」


 どうですか、初対面の人をドン引きさせてやりましたよ。












 



 











 

 

 






 


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