第14話 魔軍も撃退
「魔族が、連合軍を作って攻撃してくるとは、想定外だったわね。しかも、人間の軍も、まさか竜神族まで加わっているとはね。」
「それでも、持ち堪えてくれたんだ。感謝しても仕切れないよ。」
2人は、息子と娘、シンスイとタイスィアの報告を聴きながら、2人に優しく語りかけた。実際、魔族を含めた大軍を、許容限度内の損害で食い止め、さらには度々反撃し、押し返してもいた。
やや押し気味とはいえ、消耗戦に入りかけていた。損害は、相手方が圧倒的に多いとはいえ、元々の兵力が圧倒的に少ないのだ。
それも、2人とその親衛隊、そして、同盟諸国軍の介入で均衡が崩れると、魔軍は各地で崩れ始めた。総崩れとなるには、そう時間はかからなかった。
「考えることは同じだな。」
「そうね。」
戦いの大勢が決定した頃、振りかえったシンが遠くを見る目をして、
「考えることは同じようだね。」
「私達も、隙をみて魔王城に乗り込んで、奇襲したものね、よく。どうするの?」
「策に乗ってやろうか?」
城の奥に二人が入ると、本来なら二人が座るべき二つの玉座に、見知らぬ男が座っていた、その二つに無理矢理という感じで。。さらに、二人の周囲に数十人の気配も感じた。二人には、息子と娘の2人しか付き従っていなかった。
「お前が、勇者トレアを欺いた奴か?」
「どうして、そうだと思うのかね?」
銀髪の整った顔の男は、微笑みながら質問した。
「全体を唆している奴というか、総元締めがいる事は分かっていたし、その容貌も情報があってね。あいつは野心が大きすぎたが、馬鹿ではないし、私を知っている。その彼女が、あんなことをしたのは、余程の奴が唆したはずだ、あんたクラスのな。と思ったのさ。」
「彼女のことをよくご存知ですね。云われている通りですよ。」
テイカがシンの腕を抓った。
「まあ、ご夫婦の別れの場、時は与えられませんが、お許し下さい。では。」
彼が、右手を挙げると、周囲からシン達に襲いかかってきた。
「うわ!」
シンとタイカに向かった先頭の4人が、一瞬で真っ二つになり、黒焦げになり、裂け、潰れた。それでも、彼らは怯むことはなかった。が、何かの連続音が聞こえ始めた。盾を構え、防御障壁を作った彼らだったが、初めの数人が倒れただけだったとはいえ、あっという間に守勢に追いやられた。しかも、時折、誰かが、盾を、魔法障壁を貫く銃弾に倒れた。
「卑怯者!」
誰かが叫んだ。銃弾の中に、魔法で強化された物が含まれていたのである。秘密の別の通路から、ガドリング銃、小銃を持った一隊が駆けつけていたのである。そのことが卑怯なのか、普通の銃弾の中に魔法で強化されたものが含まれていることについて言ったのか。彼らが、そのどちらだと言う前に、二人は斬り込んでいた。
火器を持った一隊を、秘密の通路から進めていたのである。
数人が、二人に躍りかかった。他の戦士は、それを援護するように、火器を持った兵士達や二人の子供たちに向かった。形勢は圧倒的に不利だと分かっているようだったが、時間を稼ぐつもりなのだろう。そして、二人に向かった戦士達は二人を殺すことしか考えていなかった。どう逃げるかなどは、これっぽちも考えていなかった。絶妙なコンビネーションジャンプで、剣、槍、矢、魔法の攻撃をたたみかけるように放ち、その彼らに必死に支援、身体強化、魔法力増大、回復の支援魔法を送る後方の聖女?達。
「フン!」
シンに圧倒されていた彼らは、頃合いを見て放たれたタイカの魔法の一撃で、既にかなり傷ついていたから、皆床にひれ伏した。回復を求める彼らの目には、なお、彼らに支援魔法を、と懸命に手を伸ばす聖女は、シンに背中から拳をつき貫かれながらも、詠唱を唱えようとしている姿が目に入った。しかし、声は、詠唱は口から出ることはなかった。
それ程の時間は、かからなかった。侵入者は、血の海に沈み、床に倒れて動かなくなっていた。
「さて、とだ…、情報が取れそうな奴を探して、回復させないと…。」
「とか言って、女を物色しない!」
「姉さんこそ。」
「何よ!いつ私が…もう昔のことを…。それに、なによ、それじゃまるで男漁りをしていたようじゃないの!」
魔王時代のことを言われて、彼女は文句を言った。
「もう、父上も母上もいい加減にして下さいよ。」
「そうですよ。ここは、私と兄様がやりますから、後のことを頼みますよ。」
子供たちに呆れられて、二人はさすがにばつの悪そうな笑みを浮かべた。
戦勝会も含めて、やらねばならないことは、いくらでもあることを思い出した。
分かったよ、という顔をして、二人は指示を出し始めた。
戦勝会が、大々的に催された。まずは軍のであるが、近いうちに国全体でやらなければならなかったし、その予定である。軍の戦勝会の喧騒から逃れ、後は子供たちに押しつけて、シンとタイカは自室で静かに酒を酌み交わしていた。
「これで終わりではないわね。始まりよね。いい加減、静かに暮らしたかったのに。」
「邪魔な連中を、俺達に始末させたって所だろうからな。本命が、ラスボスの登場かな?でも、姉さんを絶対守るからね。」
「私が、あんたを守ってあげるのよ!」
どちらからともなく、顔を近づけ、唇を重ね、互いの中に自分の口の中に含んでいた酒を注ぎ込んだ。
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