聖騎士デュソーの旅(1)
聖騎士デュソーは聖王ラウマの命を受け、勇者を補佐する仲間の一人を引き入れるために
勇者の資格者であるカノンの世話役に任命されてから七年もの間、ランスの村とシャイロンを往復するだけの生活が続いた彼は実戦感覚の衰えを感じていた。聖王の命によりこの先も勇者カノンのパーティーの一員として同行することが決まった以上、まずは失われた感覚を取り戻さればなるまい。
先日、ガルガリア王国のローアン辺境伯領からアストラールの聖都シャイロンへ移動する道中で
馬車の
勇者の資格者をそんなところで死なせたとあっては、聖騎士の名折れだ。死をもっても
また、デュソーはカノンの成長を見守る同業者として極力意識しないようにしていたが、ともに襲撃されたルーアに異性として好意が芽生えていた。十数年ぶりに味わう感情だ。彼女の命こそ失われなかったものの、デュソーが気を失っている間にルーアとカノンの間に何かが起きたらしく、底抜けに明るかった彼女の心は固く閉ざされてしまった。
おそらく、もう二度と彼女に会うことはないだろう。
それでも不甲斐ない自分を今一度
単身のデュソーが目指すのは、アストラールの聖都シャイロンからはるか南西にあるグランの森だ。
彼が考える仲間の候補はただ一人。かつて先代勇者シャインのパーティーメンバーとして共に戦った
「(
そんな
「おーい、デュソー!」
空を舞う大きな影はロック鳥のクリムだった。もちろんパンネルも一緒だ。彼はぶんぶんと大きく手を振りながらも、クリムのダイナミックな動きを見事に
「これはパンネル殿。
「偶然通りかかって、というのは真っ赤な
それだけ言い残すと、パンネルはクリムとともに
天敵の姿が見えなくなった後も怯え続ける馬を
それから二刻も馬を走らせると、街道の右脇に低い柵で囲われたハレイの家並みが見えてくる。彼は門番の中年男性に素性を告げて入れてもらい、馬を預けて村にただひとつの宿屋である『小熊の安らぎ』を訪れた。
事前に待ち合わせていたわけではないが、パンネルならば酒場にいるはずだという確信がデュソーにはあった。そして予想通り、小柄な彼は一階の酒場でワイングラスを手に待っていたようだ。
外見的にはおよそ似つかわしくないが、彼は”やまびこ族”の立派な成人だ。そして、下戸のデュソーとは正反対の大酒豪なのである。
「もう二刻近く待ったぞぉー。ほら、すでにひと瓶空けちゃったよ」
デュソーが相席すると、彼は空のボトルを軽く振ってみせる。
「そうか、待たせてしまってすまない」
飲酒時の
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