第16話 湖上のライムスター
カノン一行は、ホスの森を抜け出した。無事とは言えなかったが、一本道のため迷うことはなかったし、三度の戦闘によって多少なりとも実戦感覚は養われたはずだ。
空が真っ赤に染まっている。日暮れまでもう一刻もなかった。
半刻ほど歩き、
カノンの指示にふふっ、と笑うミラ。正直、カノンとしては音なんて聞かれても構わないのだが、聖女という立場もあることだし、この辺は気を
さらに半刻で陽が沈み始める。代わって地平線から昇るのは、夜の到来を告げるライムスターだ。
旅の相方がデュソーであれば多少の無理はきいただろうが、相手がミラである以上はこのあたりで野営地を決めるべきだろう。野営の経験がないカノンとミラでは、テントを張るのにも手間取るかもしれない。
カノンは、野営に
「ハールン湖ですね」
「知ってんのか?」
「はい、何度か
ミラは肩をすくめ、はにかんだ。
「シャイロンから往復したら丸一日かかるだろ。わざわざ来るようなところなのか?」
「アストラールでは神聖な湖とされているので、時々ですけど
まだ真っ暗にはなっていないが、湖面にはライムスターが反射し、
「今はその時期ではないんだな?」
「ん〜、もう少し先ですね。真夜中ちょうどに、ハールン湖の真上にライムスターが昇ることを『ライムナイト』と呼ぶんです。アストラールでは聖なる夜の一つとされてます。一週間前からシャイロンではお祭りが
「そうなのか」
大忙し、とは言いながらもミラは
カノンは、これまでゆっくりと景色を
「(そういや、ドランはどうしてっかなー)」
カノンは今やうっすらとしか
テントの設営を始めたその時、ミラが声を上げる。彼女が指さした方向を見ると、水辺の
「あらっ、先客がいらっしゃいますね! ご
「いや、もう少し先に進んで、適当なところで設営しよう」
「あれ〜? カノン、
こうして顔を
「んん? あなたたち、旅の途中かしら?」
茶番に
カノンもただ一つの違和を感じなければ
そばに立たれれば多少なりとも感じるはずの"気配"が、彼女にはなかったのである。
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