第11話 ミラの覚悟
さらに歩くこと二刻、空を見上げると陽が傾き始めていた。日暮れまであと二、三刻といったところか。
ミラを
そう思案していたカノンは、折よくすれ違った行商の馬車を呼び止めた。勇者としての評判を損なわないよう、
「すみません、ここからグラダまではどのくらいでしょうか?」
「シャイロンから来たの? なら、ここでちょうど半分くらいかしらねぇ」
二人はカノンの紅い髪と瞳を見るなり、ぎょっとして顔を見合わせたが、すぐに奥さんが返答をくれた。
カノンは「
「あぁ、いや。こちらこそ気を
微妙な空気を
そこに素早く反応したのがミラだ。彼女が「違いますっ!」と強気に否定すると、一同の間には再び微妙な空気が流れた。カノンはなんとも居た
行商の夫婦は男性がバルコ、女性がユリアという名だった。彼らによれば、ここからグラダまではルートがニつに別れるらしい。
中間地点を越えたところにあるホスの森を直進で突っ切るか、はたまた
「女の子も一緒の二人旅なら、なおさら
バルコは世話焼きな性格らしく、各ルートについて事細かに教えてくれた。
道が再び合流した先にはキャンプ地となっている
「歩くのがしんどかったら、明日の朝にはシャイロンから別の行商が通ると思うわ」
ユリアはミラに告げた。ついでの便乗という形で、少額で荷台に乗せてもらえるだろうとのことだった。
魔王が
「気を付けて行くんだぞー!」
はじめの気まずい空気はどこへやら、すっかり打ち
彼の馬車が遠ざかるのを見届けてから、カノンはミラに有無を言わせぬトーンで宣言する。
「よし、森を突っ切ろう」
大きな目をさらに見開き、ミラがドン引きしている。先ほどの話を聞いてまで森を突っ切る馬鹿は確かに一般の人間にはいないだろう。
「ここのモンスターはだいたいザコ敵ってことだろ? 削れる時間は削りたいってのはそうだけど、ダンジョン入る前に慣らしといたほうが身のためなんじゃねーの」
カノンは表情を変えずに続けた。
ミラは
聖女の称号を冠するミラは、神官たちに混ざり、
また、彼女が身につけている聖衣は、勇者の補佐にあたる選ばれし聖女が代々
一見すると何の
試練のダンジョンがどのようなものかは見当もつかないが、街道沿いの森ひとつ突破できないようでは話にならないことは間違いない。カノンは今のうちにミラの実力を見ておきたかった。
道なりに歩き続けると、すぐに
カノンは背負っている大刀の
おそらく今回もカノンとしての余裕がなくなった
「ミラ、覚悟はいいな?」
「は、はい・・・っ!」
カノンは、大きな声で返事をしたミラの横顔を
普段は可愛らしいミラの表情は、勇者を
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