カノン成長編9 パンネルの笑み
「やだなぁ、そんなに
するわボケ。カノンは心の中で盛大にツッコミを入れた。
その少年はパンネルと名乗り、自らを"やまびこ族"だと紹介した。つまり、彼はそもそも少年ではなかったわけだ。
やまびこ族は山岳地帯の谷間を主な生活
エルフやドワーフに比べると好奇心が
「えっと、到着が遅れたことは
早口に
「あっ」と、パンネルは何かを思い出したように声を上げた。
「まだなんかあんのかよ」
彼の弾丸トークにうんざりし始めていたカノンは、ぞんざいな返事をする。
「アーミットとそこの騎士さん。急いで手当てしないとじゃないですかぁ?」
「あ、ああ、たしかに。毒か? あいにく
「ふっふーん。僕、どんな毒にもよく効くポーションを二人分持ってますけど」
「本当か?」
たかが人間ふたりのために無駄な労力を使いたくはないし、ここは大人しくポーションを譲ってもらうべきかとカノンは考えた。
あとデュソーは
「金貨十枚でどうかなっ?」
「あ゛ぁん?!」
「あははっ! 冗談ですよぅ」
パンネルは悪びれもせず、右手の人差し指を振って笑う。
「他でもないラミア伯の頼みですから。
小柄な彼は
効果は
「よし、ちゃんと効いたな。次行ってみよーう!」
今度はデュソーの元へ。こんな状況でも、パンネルは気味が悪いほど落ち着き払っていた。
「やけに冷静なんだな」
「だって、毒の回りが早くて死んじゃったとしても、それも運命ってヤツだと思いません?」
カノンの中で複雑な感情が
「(運命、か・・・)」
「でもアーミットはともかく、デュソーはこんなしょぼい毒じゃどっちにしろ死なないと思いますよぉ。実際、気絶はしてるけど呼吸も脈も安定してますし。さすがはシャイン様のお仲間ってね!」
「デュソーを知ってるのか?」
「もちろん! 一度、シャイン様のことも助けてあげましたからねぇ。その時も
「そうなのか」
となると、このパンネルは魔王の
そんな思いから、カノンはいつの間にか彼に
「それより、ちょっと手伝ってくれません?」
パンネルの言葉がカノンの思考を
カノンは仕方なくデュソーのもとへ行き、パンネルとともにその大きな体をひっくり返した。
続いて、先ほどと同じ黄色い液体を口に流し込む。。
「ううぅっ」
「ほらね、大丈夫だったでしょ?」
と、得意げなパンネル。
そんな彼の姿を認めるなり、デュソーは騎士らしく
「久しぶりだな、パンネル
「ほんとだよぉ。あんたとアーミット、ソッコーでやられるんだもん。あとあの女の人・・・」
そこまで言いかけると、彼はニッと笑って続けた。
「ねぇデュソー、ちょっと行ってあげてよ。
それまで周囲の状況を
カノンはそんな彼の姿を見て、フンっと
「カノン様、あのことは言わないでおいてあげますね。勇者様の出世払いに期待してますよぉ?」
デュソーを追い払うなり、パンネルがひそひそと話しかけてくる。
「あ? 何のことだ?」
「何って、決まってるじゃないですかぁ。女の人が人質に取られてるところで、あんな風に
「振る舞いを見てる限り、とても真っ当な勇者様には見えないんですよねぇ。目も真っ赤に光っちゃてたし。あ、ひょっとして悪魔の手先とか?」
「なんだと?!」
瞬間的にカノンの目に赤い光が灯る。が、同時に勇者の印が反応し、彼は割れるような頭痛に顔を
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