第14話 勇者の心(魔王軍3)
消滅から十二年の
しかし、彼の中には自身が誕生した黒紫色の
通常、魔王は出現とともに前魔王の記憶と意志を、本人の性格とは無関係に引き
ところがこの魔王、自らが勇者シャインであることを自覚していた。聞いていた話とは異なり、どうやら前魔王の記憶や意思も引き
覚えている限りでは、前魔王ゲラをあと一歩まで追い詰めたところで呪いのような言葉をかけられた。あれがこの事象の引き金となった確率は限りなく高い。聞いたことのないものだったが、おそらくは
「リヴァーサルと言っていたか・・・」
独り言を発したその時、生命体の気配を感じた。デーモンロードだ。
「魔王様、まさか私めの再生能力を試されたのですか?」
デーモンロードのその一言で、
魔王に攻撃された対象は一時的に消滅こそするものの、必ず復活を遂げる。その速度は個体ごとの再生能力や魔力量に
これはおそらく自分の命についてもそうであり、魔王が
「(一人になったときを
魔王は存在するだけで
勇者として人の世界を救おうとしていた私が
魔王ゲラの魂を継承したであろう新勇者は、そう遠くない未来にこの魔王の器を取り戻しにやってくるはずだ。
好機は一瞬。聖剣を奪い、自らの手で偽の勇者に聖剣を突き立ててやる。
私が勇者として復活する手はないと考えるべきだろう。私には魔王として生きるか、魔王として滅ぶか、二つに一つしかないのだ。
それだけの
とりあえずは、やたらに
「デーモンロードよ。あいすまなかった」
「魔王様、そんな
コミュニケーションの足がかりとして、ひとまず名前でも聞いておこうか。知らないと不便だしな。
「・・・名は何と言う?」
「魔王様に名乗る名前など、」
ございません、と言いかけてグレンガは思い直した。
一の者になろうというのに、名前すら覚えていただかずにどうするつもりだ?
「グレンガと申します」
「グレンガよ。我が野望のためにその身を
「は。我が弱小なる命を、魔王様の大いなる野望のために
勇者シャインは世界を守るため、魔王として戦うことを決意した。
この身体、絶対にくれてやるものか。
「我が名はゾルダ。各地に
「はっ」
グレンガは短く返事をすると、上空へと飛び立った。
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