第22話 癒やしが欲しい
言われるがままに会議室に導かれ、早速ミーティングが始まった。
「さて、この会社に今足りていないものは何だと思う?」
いきなり志成からの突拍子もない質問に、私は二の句が継げない。
ありとあらゆるものがこの会社には足りていない。
収益の柱とか社員のやる気とか・・・・・・
「足りない所がたくさんありすぎるので、この場で出し尽くすとなると一日かかります」
「アハハ・・・・・・そうですよね」
志成は苦笑いをしてお茶を濁した。
「それで、何の企画をやろうとしているんですか?」
「まだ何も決まってないです」
「え?」
「すいません。とりあえず何かやることだけは決まってます」
適当過ぎるだろ!!!
何も考え無しに社員を引きずり回すんじゃねぇ!!!!!
という心の叫びは内に秘めておいて。
「そのやる企画について、私と話して決めるつもりってことですかね」
「正解!」
突然脇に控えていた神が絶叫した。
何が正解だ!お前も何か考えろ!
「最初から他人任せなのはどうなの?」
「そんなこと言ったって、まだそんなにこの会社に居る訳じゃないからね。それこそこの会社を知り尽くしているアンタなら、良い案が出せるんじゃないかって」
「いやいやいや、私と一緒に会社の実情とか見てきたでしょ?それで何か得られたモノで考えても良いんじゃ無いの?」
神はその言葉に嘆息し、私に近づいてきた。
「そんな一日二日で何年も働いている人に追いつける訳がないでしょ。だからアンタからちゃんと話を聞いて決めていこうって思っているのよ」
「なら、他の社員でも良かったのでは?」
「貴女だからいいんですよ。既に結果も残しているし、周りも良く見えている」
志成が私の肩を軽く叩く。そして静かに微笑む。
ほんのりと暖かい。
「買いかぶり過ぎですよ」
「全く、アンタは自分を卑下し過ぎよ。もっと胸張って生きなさい」
神から思いっきり背中を叩かれた。
この二人ボディタッチ多過ぎだろ。海外かぶれか?
「・・・・・・分かりました。でもアロマジックは私独りで作ったモノではないので、その企画開発のメンバーも参加させて良いですか?」
「もちろんだ。それは構わない。貴女に人事権は一任します」
「随分と信用してくれてますね」
「まあ、中々人を認めない神が認めた人ですし、なにより自分の目で確かめて大丈夫だと思ってますから」
志成から軽くウインクされた。例の家出の件の事だろう。
あれはどちらかというと介抱しただけだから、信用されるような事案では無いような気もするが、本人がそう思っているのであれば、それで良しとしよう。
「分かりました。二人とも、度肝抜きますよ。覚悟していて下さいね」
そんな捨て台詞を吐き、会議室を去った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、どんな企画を立て、誰をチームの一員にするのか、考えることがたくさんある。
はらちゃんはアロマジックの主幹になるだろうし、そこまで動ける訳では無い。
とはいえ、アロマジックで一緒にやって来たメンバーはどの人も信頼できる。
なにより立ち上げから一緒にやって来た戦友だ。そこを疑っては立つ瀬が無い。
アロマジックチームのメンバーリソースの共有は、避けて通れない問題だろう。
であれば、はらちゃんに相談してこれからの動きを決めていくのが当然だろう。
オフィスに戻り、チョコレート菓子を頬張っていたはらちゃんに声を掛ける。
「ただいま」
「おかえり~何か言われたの?」
「新企画をやれっていうのと、その企画のメンバーを集めろと半ば強制的に・・・・・・」
「あら~大変ね。お疲れ様」
はらちゃんからチョコレート菓子のお裾分けを頂いた。
最近コンビニを中心にバカ売れしている菓子で、女性人気の高い武士をデフォルメしたキャラクター『まるごしくん』を全面に押し出した商品だ。
「ありがとう~うまい~」
「ここのお菓子メーカー、この『まるごしくん』使ってから売り上げが10倍に増えたらしいわよ」
「そんなに?!凄いわねキャラの力って」
「そりゃ、味で大差付かないなら、どれで心がときめくかで勝負付いちゃうでしょ?そうなると、カワイイキャラとかをつけた方が目を引くし、ついつい手に取っちゃうし」
「それではらちゃんも、ついつい買って、また体重を増やしていくわけだ」
「そ、それはこの菓子の形が丸いからカロリーゼロ!ノーギルティ!」
やはり、こういったよく出来た商品でも結局はインパクト勝負になっていくわけか。
このインパクトを決めるようなモノが作れれば、色々な商品に付けられて、あっという間に宣伝効果も生まれ、キャラクターグッズもバカ売れで、循環が生まれるのでは・・・・・・?
「キャラでも作ってみようかな?」
「お?このお菓子見て思った?」
「やっぱりキャラビジネスは当たってファンが定着したら延々と続けられるからね」
「でもそこまで育てるまでが大変なのよね~競合キャラはいまや無限に居るし」
「たしかに。ゆるキャラとか、そういったマスコットってそこら辺から湧き出てるレベルで存在しているしね」
ライバルとなるキャラクターが一つでも少ない領域で売り出さなければ、埋没してしまう。
やはりどこをターゲットにして売っていくかが重要そうだ。
「ところで、アロマジックのメンバー、ちょっと貸してくれない?」
「それはどうかな~まずは企画次第ってところじゃない?」
「今日にでも、私の家で作戦会議しよう。酒とつまみを賄賂にご用意しますので」
「しゃ~ない。その話乗りますか!」
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