考えるな。感じて書け

 今日も今日とて原稿を書いている。

 朝の5時に起きてそっから3時間原稿を書いた。前までは『書けるときに書く』というスタイルだったが、『時間をきっちり守って書く』というスタイルに変えてみた。いわく、プロ作家の中に「そういう規則性が大切なのだ」と言う人がいたので試してみたわけだ。

 とりあえずメリットとしては、朝のほうが頭が冴えること。

 1日の始まりなので「仕事で疲れてるから」などの言い訳ができないこと。

 あとは「健康的な生活を送ってる」と実感できること。

 ぐらいだろうか。いままで『夜のほうが創作力が高くなる、故に俺の作家性がガンガン出る原稿になる』と思っていたが、そんなことはないかもしれない。朝早く起きて原稿を書こうが、夜遅くに原稿を書こうが俺は俺である。俺の個性は時間帯によって左右されることなどない。どんな時間、どんな場所、どんな書き方をしても俺は俺だ。どこまでも無二唯一でオンリーワンのナンバーワン。それが俺である。


 調子に乗った。今日の分を書き上げて気分がいいのだ。ランナーズハイならぬ、ライターズハイってのも世の中には存在することをご理解いただきたい。誠にすまねぇ。ともかく、この方法を試したおかげで僕の作家性(個性?)を、自分が納得できる形で自覚できたのかもしれない。


 さて、ここからはタイトルに関わる話だが、他にも変えてみた部分があったりする。それは『執筆の進め方』だ。プロットやらキャラ設定の作り方は今までと同じだけど、実際に原稿を書くときの『執筆の進め方』を変えたのだ。ここで言う『執筆の進め方』ってのは、キーを叩いているときの『スタンス』みたいなものだ。

 一作目は思うがままに書いて、二作目は好きを詰め込んで書いた。三作目は物語の構造を意識して書いて、四作目ではとことん時間をかけて書いた。それぞれに成功と失敗はあれど『執筆の進め方』に関して言えばどれも同じ『スタンス』だった。そして僕の『執筆の進め方』における『スタンス』は『考えてから書く』というものだった。

「なにを当たり前なことを」と思うかもしれないが、僕の場合『考えてから書く』ってのには色々な意味合いが入っている。例えば、先の会話が想像できたら書く。面白そうな掛け合いが想像できたら書く。みたいな感じだ。つまり「自分の中で納得」するまで手を動かさないのだ。

 しかしこの方法で全てが上手くいく、というわけもない。「いけそうだ!」って思って書いてみたら「ダメだった」ことは何度もある。その度に消して、消した部分を考え直すハメになる。なのですごく時間がかかるし、ダメだったときのメンタル磨耗具合がやばい。メリットとしては上手く描けたときに「これは面白い!」という絶対的な自信を持つことができる。ただその場合、他者からの指摘を受け入れにくくなる危険性がある。思うにこの方法(考えてから書く)は、使いどころが限られるのかもしれない。


 話が流れそうなので、無理やり戻す。そう、『執筆の進め方』における『スタンス』の話だ。前までは上記したような『考えてから書く』という『スタンス』だった。が、今回からは『とりあえず先に進める』という『スタンス』で書くことにしている。

 これに関しては説明もへったくれもないのだが、とにかく書くのだ。もちろん「思うがままに書く」ってわけじゃない。書きながら考えて、考えながら書く。しかし考えすぎてはいけない。「感じて書く」ってのが近しい表現かもしれない。考えるな、感じろ。

 なので自分で納得できないセリフ、キャラの言動、描写を書いてしまったとしてもすぐには直さない。大筋のプロットに沿っているなら、気にせず前に進める。もちろん苦痛は伴うし、気持ち悪さもある。ただ、そのおかげか「直す」という行為の億劫度合いが減ったように思う。いままでの『考えて書く』というスタンスだと、なまじ自分が納得して書いているために、直す行為がとても嫌になってくるのだ。例え、直したほうがよくなると理解していたとしてもだ。


 ま、そんなわけで今回は、色々と書き方を変えて原稿を書いている。そのおかげで僕は『直すことの億劫さを減らせた』わけである。言っとくが直すことの億劫さを『減らせた』だけで、『なくなった』わけではない。面倒なものは面倒なのだ。めんどくさい。ただ、アニメ監督の宮崎駿が「世の中の大事なことは、たいてい面倒くさい」みたいなことを言っていたように思う。であればこの面倒くささは、書き手として受け止めべきなのだろう。めんどくさいけど。

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