遺書である

シネ、カイブツ


スパナを振り上げ

おろされる

避けて逃げた


自分は

不透明な怪物という

透明になりきれず

そこらの路地や柱に横たわる

不透明な怪物である

自分を見放し

世間を疎んじ

勝手に絶望した

愚かな透明になりきれなかった

怪物である


これを殺す権利は人間で

先ほどのように

なんとなく鈍器で殺されたり

気まぐれで怒鳴られたり

中途半端なせいで

自分は逃げながら生きている


人間になりたいが心臓がもたん

透明になりたいが勇気がない

不透明をやめたいが

歩いてきた軌跡をなかったことにしたくはない


服を着て擬態する

潔く脱いで透明になる

そのどちらもできず

不透明な怪物に成り下がる

悪くはないのに悪と断罪されて

今日は鉄パイプに追いかけられる


何をしたって

怒られる

言っても

怒られる


生きることに中途半端で

死にゆくことに中途半端


人間の有能さ

感情豊かなお祭り気分

透明の細やかな

綺麗におさまる写真のよう


どちらもずるいなぁずるいなぁ

人間と違って透明は自分を見ない

ああ、そこにいるの、程度

受け入れてもらっているようで

そうじゃない


不適合者

不透明は生きれない

生暖かい温もりと図々しさ

人間の攻撃を掻い潜り

透明の視線から外れる


肩身狭く生きている

いいや、どちらのふりをしながら

生きている

明日は人間、明日は透明

そんなんだから殺される


信じてたのに、やっぱりか、お前のせいで

不透明は殺される

不透明は真実ではない

どこかに忘れられた人形とか

道路に落ちている忘れ物とか

それに負ける


不透明は気持ち悪いものだ

どっちつかずの悪いもの

努力しないもの

全てに負けたもの

受け流せず

心を無にできない


気持ち悪い

だから不透明は殺される

明日は怒鳴られるかもしれない

その分、死ぬかもしれない


自分は不透明だ

現状は嫌いなのに

どっちにもなれない

だから、きっと今日は何かに殺されるだろう

これは遺書である

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