酔っ払いの人

酒場の酔っ払いが歌うのです

山にいきる人

海にいきる人

街にあふれかえる虫のごとく

人間はどうしようもない

どうしようもないなあ

と 嘆くのです

そんな泣き寝入りするかのよう

酒に溺れて潰れた酔っ払いは

カウンタァで涙を流す酔っ払い

世界を嘆く酔っ払い

涙を流しても明日はどうにもならない

知っているから他の奴らは

優しく、優しく

困り顔で寝た酔っ払いに上着をかける

数時間もすれば酔っ払いは

煙草の煙と他人事の嗤い声に起きるのだ

腫れぼったい瞳を開き

上着をかけてくれた常連男に渡し

「ありがとう」と言うのです

その一言があるから、誰も疎んじたりしない

むしろ、つらつらと涙を流す酔っ払いを

大事にしていました

しかし、酔っ払いは肝臓の病気で死にました

酒場は、いつも通りですが

誰も酔っ払いには優しくしませんでした

世界をどう言おうと

誰も優しくしませんでした

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