第3話 義理妹からの依頼 2
炎魔山(えんまやま)に着いた。
いつもならチラホラと人が居ても可笑しくはない時間ではあるが、今日は殆ど誰もいなかった。
それもそのはず。
最近この辺では名の知れた魔術師が金儲けの為に悪い魔術師と手を組み出入するようになって治安が少し悪くなっているのだ。
余程の事情があるか、実力に自信がある者しか、今はいない。
だけどそれももう少しで終わる。
和也が独自に掴んだ情報では各国の軍が一斉にそいつらを排除しようと裏で動こうとしているらしい。これでも元大魔術師として名の知れた人間。情報に関しては独自の情報網を持っている。それとは別に内部の人間それも軍でNo,3の人間が近くにいる以上、ある程度の情報は勝手に入ってくる。
総隊長、副総隊長、隊長、副隊長、分隊長……と各役職において人数はいるがそれでも育枝は上から数えた方が早いエリートなのだ。
和也にとっては自慢の義妹でもある。
「知り合いはいないみたいだけど、目の届く範囲には居て」
「わかった」
それ俺の台詞な、とは言わない。
言うと兄妹喧嘩に発展するかもしれないからだ。
ここに来る途中聞いた。
育枝は今、補助アイテムの知識と理解力を高めようとしているのだと。
そこで人がいないうちに欲しいアイテムを一式手に入れて、自分はアイテム採掘で人が賑わう前に全てを終わらせたいのだと。
なんとも利口な義妹。
そんな事を思いながら、和也は採掘を始めた育枝のお尻をぼんやりと見つめる。
「うん……いいケツだな」
本人に聞かれたらアウト。
だが聞かれなければセーフ。
「……にしてもあれでDカップにあの容姿。お嫁に行くのは時間の問題だな。性格にかなり難があるけど」
グサッ
和也の脳天に魔力を含んだ結晶石が直撃した。
「いてて……」
油断していた。
一体何事かと思い、結晶石が飛んできた方角に目を向ける。
すると、育枝がほほ笑んでいた。
手には第二波、第三波、ようだと思われる結晶石がある。
「全部聞こえてるけど?」
「すみませんでした」
和也は90度ぐらいの深い謝罪をする。
心の中で地獄耳だなと思いながら、ゆっくりと顔を上げる。
すると何事もなかったかのように採掘アイテムを使い作業を再開した育枝の姿が視界に入ってきた。
サバサバしている部分が玉に瑕だがこれはこれで育枝の魅力の一つ。
なので別にこれはこれでいい。
「俺だけ暇になったな……」
そう言って和也は近くにあった大きな岩の上に行く。
それから身体を横に倒して、暇つぶしとして育枝の採掘姿を見る事にした。
それと個人的に気になった二人組の金髪美女。
胸よし、お尻よし、の二人組である……。
――。
――――。
十五分後。
育枝がキョロキョロして周囲を見渡す。
それから和也を見つけては近くまでやってくる。
「お待たせ」
「終わったのか?」
「うん」
そう言った時、育枝の口が口パクで動いた。
『途中から尾行された。多分私がレアな鉱石を幾つか採掘したから。助けて』
和也は育枝の口の動きから読唇術を使い、正しく理解する。
育枝が助けてと言ってくるということはかなりの手練れなのだろう。
ただし、元大魔術師の和人には関係のない話ではあるが。
『敵は二人。なんとかなりそう?』
「そうか。だったら俺も採掘してくるからここで待ってろ」
「わかった」
二人は小さく頷きあい、意思疎通をする。
それから起き上がり大きく背伸びをして和也が育枝の来た道を逆走するようにして歩き始めた。
「はぁ……」
育枝は和也の背中を見送りながら小さくため息をついた。
「ホントムカつく。なんであんな奴がカッコよく見えないといけないのよ……」
日頃はだらしないし、変人。
だけどこう言った時は誰よりも頼りになる義兄。
それでいて変態。女目線からみたら最低男。
だってすぐに胸とお尻を見てくるから。
でも……嫌いになれない理由があった。
嫌いになる理由よりもそれ以上に心が惹かれる理由があるから。
そんな事を思いながら、育枝は和也の帰りの大人しく待つことにした。
念の為に双眼鏡をバックから取り出して見守る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます