第40話 オーラ?
「どうしたのよ?ずいぶん探したのよ。」
「なに、1人で黄昏れちゃっているの?」
「勇者パンが眩しかった?それとも、あの3人が羨ましかった?それともあいつのこと考えていた?」
スー、イーカ、スキアが後ろから声をかけた。
慰労祭がつつがなく終わり、後片付けも終わった。ヤクスが、広場の片隅で、1人座って空を見上げていた。
「ああ眩しかった、羨ましかった。お前達も、俺なんかの側にいなかったら、オーラが纏っていたのにと思った。あの時、俺1人でチームを出て、あいつの手を引いて二人して旅に出ていたら、とも思った。」
寂しそうに言った。3人の誰かが口を開く前に、
「多分、そいつは仲間に知らせただろうな、好機だとな。魔族のそうしたチームの絆は、強いものだ。」
皆が振りかえるとペアナ達だった。
「オーラか?そんなに落ち込むことはないさ。俺だって同じさ。鼻から無かったかもしれないが。」
「私も、王女の耀きなんかありませんわ、もう。」
「王子様も同じですわね、お兄様?」
ゴウが苦笑いしながら、
「そうだね。それに王子と言っても、末端だったしね。」
「もう~。お兄様ったら。」
「何がオーラだい?過去が、可能性が如何だって言うのよ?僕はどうでもいいよ。僕は、お兄ちゃんさえ一緒にいられれば、それでいいんだから。あ、お兄ちゃん。その困った顔は何?まさか、あの糞女と結ばれていたらなんて思っている?ひど~い!僕というものがあるながら、あんな尻軽淫乱ブス女の…。」
ミアが、サシに詰め寄って、返答を求める。サシが、しどろもどろに答えても、納得しない。何度も言い直させてから、ようやく納得すると、ミアはサシに抱きつく。2人のいつものパターンだった。
「過去のしがらみとかは、忘れてしまうことだな。」
ペアナの言葉に皆が頷いたが、
「悪いがそうもいかなくなるかもしれない。」
チークだった。
「パンから何かあったのかい?」
カーユが、妻達に囲まれながら、話しに加わわった。
「まだ具体的な要請ではないんだが…。」
カントンメンの動きが、怪しいらしい。世界統一のため動き始めるのは、時間の問題らしい。今回は、彼の行動を阻止しようとする広範な連合が形勢されつつあるらしい。今まで関係のなかった国々はおろか、魔族の諸国も糾合しようとしていた。希代の謀略家であるカントンメンに対抗するのは難しいが、彼の謀略などによる乗っ取りや自陣営への引き込みをそのままにしておくわけにはいかなかった。最低でも、邪魔程度はしたい。
「それで白羽の矢を立てられたのよね。」
とボカ。
「昔のしがらみを使って、最低つ
なぎをつけたいということ。」
カーマが締めくくった。
「できるかな?」
「命じられたら、やるだけやるしかないな。我々は、所詮傭兵だからな。」
「我も元魔王という一傭兵だからな、やっぱり。」
「私も魔族の元王女というだけの女の傭兵だものね。」
チークは、思い出したという顔で、
「あんたらは、カントンメンの軍の中にいた。あんたらの言葉には、深みがあるだろうな。それだけに、特に刺客を送られそうだな。」
「それじゃ、護衛をいっぱいつけてくれよ。」
「ああもちろんだ。」
「でも、やっぱりリーダーが一番狙われるんじゃないか?」
カーユの指摘に、
「そんな大物ではないが。」
「卑怯な魔獣使いだもんね。」
「どんな魔獣を使うのか知らんがな。」
ボカとカーマが、含み笑いしながら言った。
「多分、そうだな。カントンメンの女房は、気を付けないといけないな。化け物だって噂だ。仲間内で。」
「ブスと言うだけじゃないの?」
「じつは、美人だが大女なんだ、という話もあったぞ。」
「実は美人だが、ブスを装っていたとか。」
後者2人は、自分のパートナーが機嫌を悪くして、しばらくご機嫌とりに終始することになった。
結局、外交使節に度々同行することになった。それでも、半分以上は、断っての結果だった。かなり、彼らに関係している、影響力があると勘違いされたことが多かったからだ。そして、それらがカントンメンの謀略を阻止するのに役立ったかは定かではなかった。
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