第31話 とんでもない中にきてしまったのかも
「二人とも、ある意味、同じことで悩んでいたんだな。それで、何をやっているんだ、姉さん、カマ?」
チークが言った二人とは、ズウとナマのことだった。同じことというのは、お互いの思いということだった。姉と妹のやっていることとは、
「私が裸になっているのだ。お前も裸にならなければ、おかしいだろう?」
「私の裸しか見ないと意宇のは、不公平じゃない?平等になるべきじゃない?」
チークの服を強引に脱がし始めたのだ、二人とも。
女達が大浴場で入浴している中、恥ずかしそうに入ってきたナマに、
「ほおー。」
「王女様は、着痩せするタイプだったんだ。」
というのが、全員の感想だった。
「あたしは、あいつの王女の身替わりでしかないんだよ。」
ポツリとだが、思いあまってでたような言葉だった。“やっぱ、そう思うわよね。”
同じ、年齢からも、生まれからも、第一王女であるはずが第二王女とされていたこと、それに対する反発と言動、同じ黒髪に、小柄でボーィティッシュな感じなどの容姿など共通点が多かった。
「奴は、彼女を助けられなかった後悔から、私を助けてくれた、孤立無援になっていた。そんな義務もなかったのに、満身創痍になって。そのあとも酬いることもできない私につくしてくれた。私の中に彼女を見ていて…。」
彼女の哀しげな表情から、何を思っているのかがすぐ分かった。
「それが何か問題があるのか?」
ペアナだった。
「今、共にあるなら、それでよいではないか?我とハーンは敵どおしだったし、かつて別の恋人もいた。傷を舐め合って、今ここにおる。それでも、構わぬと思っておる。」
「そうよ!」
「あいつなんか、恋人を殺さなきゃならなかった。それで、私達を愛してくれた。」
「それが憐れみだろうとなんだろうと、私達の心は通じ合っている。だから、それでいい。」
スー、イーカ、スキアが強調した。
「傷の舐めあいだって、身替わりだって、それだって構わない、愛ではないというわけではないと思う。元魔王様のペアナが言うように。」
カーマの言葉に、
「元は余分…、いや、その通りか?」
「いいえ!ペアナ様は、今でも私達の魔王様です!」
苦笑するペアナを無視して、ボカが、
「そういう引け目なしに、彼と話し合えばいいのよ。」
と。
「俺は、ナマ王女様に、あいつを見て…。」
とズウは悩んでいたらしい。
ヤクが、異世界から来た者同士、そして、恋人たち殺し、恋人から半ば自業自得で捨てられた3人とともに過ごしていること、ハーンがペアナとは、ともに逃げ出した者どおしということを強調した。
チークが、
「ナマ王女に、かつての王女様を見ていたから悪いと、自己を責めずに、話し合うのがいいのでは?」
カユがとどめに、
「兎に角、やってみる、話してみることさ。うじうじするくらいなら、やってみることだ。大抵は、進めば何とかなる。失敗したら…、まあ、諦めればすむことさ。俺は、いつもそうだった。」
多分、二人は話し合いをしている。もう、逃避行の中で肌を重ねているが、違う思いで重ねることになるだろうと、チークは思っていたが、
「だから、なんで皆で裸にならなければならないんだ?」
すっかり裸にさせられたチークが文句を言った。
「決まっているだろう。わたしと肌を重ねるためだ。」
「私と重ねるのよ。嫌だなんて、思っていないよね?そんなこと思っていないことは分かっているけど。」
「私とだ。同意しているではないか?」
「もう、姉さん達は…。もうこうなったら…。」
彼はヤケを起こした、半ば。自分から押しまくりたくなった、押し流されるのではなく。慌てる二人をベッドに押し倒してしまった。その後は、主導権を争うように、組んずほぐれつになっていった。
ズウとナマは、罵りあったり、謝ったり、卑下しながら、自分なんかはと言ったり(これは主にナマだったが)しながら、静かに、涙を流しながら、抱きしめて、互いに腰を動かして声をあげていた。
「みんな。リーダーとして申し訳ない。ポリシーとして、危ない時には逃げるを言ってきたのに、戻れない、逃げられない、危険な中に皆を連れて来てしまったようだ。」
チークが、皆を集めて、そんなことを言い出したのは、ズウとナマが、
「代わりだっていいから、私を愛してよ!」
「あいつを見てるけど、お前も愛してる、だから、一緒にここまで来たんだ。」
「私だって、そうよ!」
と言い合いながら、抱き合った翌日のことだった。
前線に近い、半壊した領主の館を補修して、前線本部代わりにしているところの大広間に、主要メンバーを集めての場だった。
「我々の地方は、主戦場ではないし、そのまた副次的な戦線らしい。別働隊だ、来るのは。しかし、それでもかなりの数、軍らしい。勇者パンの主力の軍は、新たな魔族の軍を破ったが、今度は別の軍が現れて、対峙しているらしい。」
だから、援軍は期待できない。逃げる訳にもいかない。危険だが、戦うしかないという状態になっている。重要度が小さいから、また、侮られているから雑多な軍、使い捨てにして構わない連中を中心に投入するつもりらしい、というところが、僅かに救いだが。
「何処にいても、捲き込まれているようだから、仕方がないわな。」
カユだった。
「チーク兄さん。私らは、親父さんに拾われて、兄さんや姐さん達のお蔭様でやってこれた。ここで、一応貴族になったし、このくらい仕方がないと思っているよ。」
ミカエラであり、クロもシロも肯いた。
「この仕事は、死と隣合わせだしね。」
イークはスージァと見詰め合って、死ぬときは一緒だから、と二人だけの世界に入っていた。
「我もそうだが、逃げてきた者ばかりじゃ。この辺で、踏みとどまらねばなるまい。」
ペアナだった。肯くものが多かった。
「まあ、そういうことでいいじゃないか?それで、どう戦うんだ?」
カユが、あくびをしながら言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます