第21話 完全に壊れました

“これは、弟のためなのよ。あの尻軽女がよりを戻そうなんて虫の良い話を持ちかけてきても、大丈夫なようにしないといけないのよ。元王女様達が言ったように、どうしようもなくなって弟を頼ってきたら、それを哀れに思って受け入れたら、弟にも害が及ぶものね。だから、今夜絶対…、ち、ちょっと、何故弟の部屋の前に妹がいるのよ!”

 ボカは、チークの寝室の前で、「お兄ちゃんを守るんだから…お兄ちゃんのためなんだから…お兄ちゃんに累が及ぶことを防ぐんだから…。」

としきりに呟きながら、躊躇するように立っていた。

「ボカ。あんた何やっているのよ、こんな夜中に。」

「え?お姉ちゃん?何でって…お姉ちゃんこそどうして、こんなところにいるのよ!し、しかも、その格好は何よ!」

 ボカは、自分が姉に負けず劣らず、露出が目立つ扇情的な夜着でいることを棚に上げて、姉を非難した。

「そう言うあなたこそ、化粧までして、それに、何よ、この香木の香りは?」

 これまた自分も同様なのを棚にあげて、妹を非難した。

「お兄ちゃんに夜這いをかけるつもりでしょう!お姉ちゃんはお兄ちゃんと実の姉弟なのよ!」

「う…。何よ!その言葉、そっくりそのまま返してあげるわよ。私はチークを慰めたいだけよ。あの尻軽女とよりを戻したら危険だって教えてあげるだけよ。」

「私だってそうよ。」

「それなら、こんな夜中に、そんなの格好でいるのよ!」

「その言葉、そっくり返してあげるわよ。大体、お姉ちゃん、つき合っていた相手がいたじゃない?」

「あいつは別にそんなのじゃなかったし、あいつは出て行ったじゃない。あんたのほうでしょう、つき合っていたのは?しっかりしていれば出て行かなかったのに。逃げれたからって、チークのところに来るなんて、本当の愛情に欠けているわよ!」

「私のほうこそ、そんなんじゃなかったもん。私の愛情の方がお姉ちゃんより上よ。嫁遅れているからお兄ちゃんで手をうとうなんて不純よ、不潔よ。わ、私は純粋にお兄ちゃんが好きなんだから!」

「何ですって~。私のチークへの愛を悪く言わないでほしいわね~。」

「それは私のセリフよ~、いき遅れのお姉ちゃ~ん。」

 その時、コホンと咳払いがあった。その方を見ると、スージィァが立っていた。彼女も露出の多い、扇情的な夜着を着て、薄化粧をして、香木の香りをただよわせていた。再び、コホンとは咳払いしてから、

「すみません。通らせていただけませんか?」

 自然体の穏やかな口調だったので、思わず、

「ごめんなさい。」

「失礼した。」

と言って道をあけた。

「ありがとうございます。」

何時になく丁寧な調子で言うと、そのまま隣の、兄イクの寝室の前に立ち、すました顔でなんでもないかのようにノックした。しばらくしてから、少し寝ぼけまなこでイクが戸を開けて出てきた。

「なんだい、夜中に…?あれ、スージィァ?どうした?」

 まだ少し寝ぼけまなこで、意識がはっきりしていなかった。それをチャンスと見たスージィァは、

「ちょっとお話しが…。」

と言った直ぐ後に、彼に体当たりをするようにして部屋に押し込んだ。そしてドアを締めて鍵を掛けた。思わず駆け寄って、ドアに耳を押しつけて中の音を、2人は聞こうと試みた。

「なにを。」

「お願い!」

「駄目だよ!」

との声が聞こえてきたように感じた。ドタバタという音がして、それから静かになった。

「もう駄目だよ、ごめん、スージイァ!」

「お、お兄様。あん…嬉しい…。」

という声が聞こえたようだった。

 すると、

「お前達、何やっているんだ?」

 チークが2人の後ろに立っていた。カーマとボカは互いの顔を見て頷きあった。振り向くと、

「ちょっと話があるの!」

 その気迫にたじろいだチークをチャンスとばかり、両側から腕を組み、彼を引き摺るように部屋に入り、鍵をかけた。

「何をするつもりなんだ?」

 できるだけ、冷静な口調でと、チークは思ったが、その言葉すら口に出すことすら出来なかった。素早く、姉と妹が左右から抱きついてきたが、その感触はいつの間に服を脱いだんだ、と彼が心の中で叫ばなければならないものだった。それでも声が出なかった。二人は、そのまま、当然のように彼の上のボタンを外していく、下を引き下ろしてしまった。

「私では、やっぱり魅力がないか?」

「金髪でないし、体が大きい女じゃ駄目なんだ、お兄ちゃは?」

 恨みごとを囁きながら、耳に息を吹き付ける。2人の指が、体を這い回る。

「僕たちは、兄弟姉妹なんだよ、実の。」

 ようやく声を絞り出せた。しかし、

「だか、ら?」

「お兄ちゃんの、気、持、ち、は?」

「それが聞きたい!」

「姉さんだって、ボカだって、ミソボやシーマツと付き合っていたじゃないか。」

“たしかに。”と二人はハーモニック。

「2人は、姉さんやボカから好かれたいから、危険を承知で勇者について行ったんだ!」 

 少しの間、2人は黙った。よかったと思う自分の他に寂しく思う自分がいるのをチークは感じた。何とか、後者を押さえつけようとした。しかし、彼を押さえる姉妹の力は緩まなかった。

「私だって…、だからリーノを認めたんだ、嫌嫌ながら。そして私も…。だが、あの女はお前を捨てたんだ。だから…もう…。」

「私だって同じなんだよ。そりゃ、彼のことは嫌いじゃなかったよ。でも、あんなに酷い裏切りをあの女がするのを見てたら…もう嫌なの!我慢できないの!」

「もう自分を誤魔化したくない!」

 2人を振り解こうとした。すると、半回転して床に押さえつけられた。カマが身体強化の魔法を発動して技をかけたのである。更に、抑え込みの技をかけてきた。彼も身体強化を発動して、技を外しにかかる。そうはさせじとする姉との間で、組んずほぐれつがはじまってしまった。突然、姉が技を解き、力を抜いた。反動で、彼は姉を組み敷く形になってしまった。

「このまま好きにしていいぞ。」

 恥ずかしそうに言う姉に、チークが反論しようとすると、後ろから押さえ込まれた。柔らかな、気持ちいい弾力を、彼は感じた。

「姉弟でイチャつかないでよ!」

“いい加減にしてくれ!”と叫びたかった。

「お前の気持は如何なのだ?私では、駄目なのか?」

「私を嫌いなの、お兄ちゃんは本当に?」

「2人を実の姉妹だと思おうとしたから、リーノを好きになろうとしたんだよ!」

“ついに言ってしまった。”後悔したが、同時に、やっと言えた、とも思ってしまっていた。それを聞くと、2人は一緒に彼の唇に自分の唇を重ね、舌で舐めた。“駄目だ!ごめん、姉さん、ボカ!”2人を抱きしめた。後は、2人の唇を交互に貪り、形のよい、程よく大きい4つの乳房を嘗めまわしていた。

 後はベッドの上で、3人は声を上げ、交互に一体となり、動き回っていた。軋む音から、ベッドがいつ壊れるかと思われる程。

 翌日、両脇から抱きつかれて降りてきたチークとやはり抱きつかれていたイークを見て、それは昨日までと左程変わらないようだったが、カユは大きな溜息をつき、ミカエル達3人は頭を抱えて、

「完全に、壊れた。」

と呟いた。

「まあ、俺の知ったことではないけどな。」

とカユ。

「一緒に堕ちますよ。」

とミカエル達は呟いた。



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