第17話 聖槍の入手方法

「リーダー!」

 式典後、二人の男女が声をかけて歩みよってきた。1人はやや小柄だががっしりとした金髪の戦士で、女は小柄な赤髪のハーフエルフだった。

「僕は、もう君たちのリーダーではないよ。でも、マモ、カーリア。元気そうじゃないか。」

 二人は、リーナとともに追放したというか出て行った面々である。マモは剣士、カーリアは弓手だった。

「ミソバ、シオア、カスヅは?」

 二人の表情は曇った。

「ミソバとシオアは死んだよ。」

「あの二人が。」

 チークは一瞬よろめいた。

「カスヅは?」

「ある朝、いなくなったわ。荷物もなくなっていた。前の晩、ひどく落ち込んでいたわ。シオアの死を見て。」

「リーダーが正しかったよ、今思うと。でも、後悔はしていないよ。」

「勇者様のパーティーの一員ということの意味は大きいの、色々な面でね。頑張りたいの。」

「ああ。分かるさ。ただ、自分を大切にしてくれよ。」

「うん。ところでなんだが、それが…。」

 言いにくいことなんだが、と謂うような顔だった。

「なんだい?」

「リーナの聖槍のことなんだけどな…。」

 カーリアが代わって口を開いたが、すぐにもぐもぐとなってしまった。

「あの、格が高いやつのことか。しかし、あれだけの聖槍をよく手に入れられたな。あれがあれば、大いに、勇者様のお役にたてるだろうな。」

 後半は、かなり皮肉交じリだった。“まだ、未練が?”

 なぜか、その言葉に力を得たようにマモが、

「その入手方法なんだが、…謂うべきことではないんだが、…。」

 また、カーリアが引き継いだ。

「他の女とその入手で競い合っていたんだよね。ありかが分かって

、噂に毛が生えたくらいだったけど、本当だったようだけどね。だから、リーノはあれを持って帰ってきたわけなんだけど、その女は、彼女の方が一歩先に出たんだけど、帰ってこなかったのよね。その女というのが、あかつきの戦士団長の元カノ。」

 それ以上は云えないという顔だった。

「分かったよ。」

 それだけ言って、後は二言三言話して、握手して別れた。

「すまない、イーク。」

 数時間後、飲み屋の片隅のテーブルでチークは、イークに頭を下げた。イークは、大きな溜息をついてから、

「リーダーが謝ることではないよ。お互いの元カノの話だし、それに…、あいつが簡単に奪われるとは思えないよ。あいつに、もうちょっと運があったら、頭を下げていたのは、私の方だったと思うよ。」

 そうは言ったが、彼の顔は少し悲しそうにも見えた。実際、心臓が冷たくなるような感じがした。あの時、引き留められなかった自分にひどく非があるように思えてしまった。それでも、まだ、気にしているらしいチークの心も思いやる気持ちにもなった。このことは、ここで終わりにしようと思った。

「だから、私だけを連れて来たわけか。妹やカーマさん達がいたら、姦しかっただろうな。」

 チークも苦笑した。

「交渉には、君が役にたちそうだったからだよ。」

「それは光栄だけど…、しかし、疲れたよ。」

「ああ、本当にな、すまなかった。でも、助かったよ、君がいてくれて。」

 式典の後、直ぐに市との報酬交渉になった。チーク達の方は、先に契約した内容を変更するつもりはなかった。契約内容をはるかに超える仕事となり、苦労も、功績も、大きかったのだから、増額を要求して当然だと内心では思っていたのに。

 市からは、よくあることだが、戦火での被害が大きいから大幅に減額を求められた。受け入れられるものではなかった。当然である、事情は分かるとはいえ。

 すると市は、魔族を撃退したのは勇者パンだと言いだした。更に、勇者パンを追放したパーティーを優遇すると、勇者パンの不興をかうかもしれないとにおわせて始めた。それに反論し、減額は断固として拒否した。延々と交渉が続いたが、勇者パンからのメッセージが届いて、一部現物支給にすること、滞在中の市中、郊外巡回警備を行う、宿泊費が市負担で行うことで妥結した。

 勇者パンのメッセージは、魔王軍との戦いのため、直ぐに市を出ることとチーク達の功績が大きいこと、それが報われることを望むことが書かれていた。

「彼らしいな。」

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