02『ジョーズ』とにもかくにもまずはコレ。
【作品情報】
『ジョーズ』 1975年/アメリカ
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:ロイ・シャイダー ロバート・ショウ他
【あらすじ】
観光を主要産業とする海辺の町、アミティ島で、女性の死体が発見される。警察署長のブロディは大型のサメによるものと断定し、以降の被害を防止するために海を遊泳禁止にしようとするが、観光収入が減少することを懸念した市長は取り合わず、封鎖ができずにいるうちに次の犠牲者が出てしまう。
犠牲者の母親がサメに懸賞金をかけたことで逆に人が集まってしまい、対応に追われるブロディは、海洋学者のフーパーを呼び寄せる。
島に集まったハンターの一人がサメを退治し、脚光を浴びるが、フーパーは調査の結果一連の被害を出しているサメは別物だと見抜く。しかし市長は信じず、サメの脅威は去ったとして大々的に海開きを行ってしまう。
観光客でビーチが埋め尽くされたその日、サメの襲撃は起きる。その結果自分の息子にも危害が及んでしまったブロディはもはや待ってはおられず、地元の漁師、クイントと共に自らサメ討伐に乗り出すのだった。
……めちゃくちゃ面白かった。
サメ映画を見ていくにあたってまずは元祖のコレを見ておこう、という程度の気持ちで見たのだが、最後まで夢中になって観てしまった。
感想を一言でいうならば、濃い。
サメ映画について、前回の概要で触れたように「人間が被捕食者の立場になるというリアルな恐怖」がウケた要因だ、というような程度の認識しか持っていなかったのだけれども、この映画はそれだけで説明できるものではなかった。
確かにその側面は大きい。序盤から中盤までほとんど姿を現さないにもかかわらず(実はこれは撮影に使用したサメのロボットが壊れたことによる苦肉の演出らしいのだが)、逆に「海の中に底知れない恐怖の存在がある」と思わせるだけの迫力がある。緩慢に近づいてきて一瞬で人を水中に引きずり込む、その瞬間には本当にひやりとさせられる。
しかし、その恐怖がすべてではないのだ。
サメの凄惨な襲撃シーンに至るための下地となる「観光収入に依存して町の運営を行っているために危険の可能性を認識しつつもそれから目をそらしてしまう」市長と、「市民の安全のため海を封鎖したいが元々よそ者(主人公のブロディは元はニューヨーク市警だったという過去がある)のために発言力が弱い」ブロディの相克などにはそれぞれの立場や人間性に基づいた人間ドラマがしっかりと感じられるし、サメを退治するために漁師クイントの船で出港する際にはまるで冒険物のような明るい音楽が流れ、思わずわくわくしてしまったりする。
つまり見方によって、様々な魅力を持つ作品なのだ。そしてそれは、単純に「熱中できる映画を作る」という情熱のなせる業なのではないか、と思う。
肝心のサメとの死闘シーンと、それを踏まえたラストシーンについても、原作の小説からは大幅に変更され、名作小説「白鯨」を下敷きにより勇壮な、ドラマチックなものに変わっている。これについては原作者と監督の間でごちゃごちゃもあったようなのだが、エンターテインメントに徹するという意味では正解なのだろう。
まとめると。
この映画は一つのジャンルに収まりきるスケールではなく、多面的、多層的な「面白さ」をこれでもかと放り込んだ結果、一大エンターテインメント作品として名を馳せたものだと思う。
ジャンル自体を流行らせる──もっと言えば新しい一ジャンルを打ち立てる作品というのは、これほどパワーに溢れているものなのだ、と再確認した。
本当に、大満足した。それだけに、次回以降が心配ではあるけれども。
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