第154話 暗雲の中のパリ アンリ二世とマルゴ王女の伝聞

マルタ島では 

朝の祈りの時間と食事の後 お茶を片手にして彼は部下との会話をする。

「あとで剣術の訓練だな」「はい、グランドマスター」


それからハーブの香り良いお茶を口にしながら 言葉を口にして

「故郷のフランスからの便り」「ヴァレッタ総長?」

「友人たちとパリに居る騎士団、我ら軍団の騎士たちからの便りだ」


「以前、スペインの捕虜となった王子の一人アンリ様が国を治めていたが

馬上槍試合の事故で亡くなった後、その後は王位争いとユグノー(新教徒)達との争いで国内は未だに混乱、混迷と内紛が絶えない ユグノー戦争」


「スペインとフランスの平和の為の祝い」「王の悲劇的な死となってしまいました」

再びため息の後で‥言葉を紡ぐ


「年上の王の麗しい愛妾の姫デイアーヌ・ド・ポアチエ 素晴らしい美女 

彼女は王の死後に追放されたとか」

「王の子供時代に 人質となったアンリ陛下を憐れんで抱きしめた美女」


「美女と言えば‥」

「ああ、そういえば肖像画を見たが王の娘はとても美しい姫だった」


「そうですね 

マルゴ、マルグリット王女は聡明で語学、哲学などにも優れた

多感な姫だと聞きおよんでおります」


「あの姫は誰に嫁ぐ事になるか」


「アンリ二世、王の王妃だった母后カトリーヌ・ド・メデイシス 

彼女が仏蘭西の主権を握っているようだが‥」


そこに下働きの少年シオンがお茶のお替りの為にやって来た。

「御代わりはいかがでしょうか?それとも何か別のものを?」


テーブルに置かれた手紙をそっと見るシオン

「まだユグノー派の貴族たちとの騒動は収まりそうにありませんね」呟くシオン


「シオン、お前 字まで読めるのか? 平民で文字を読める者

貴族の者でも他国の言語を複数話せる者は少ないというのに」


「会話が聞こえてきただけです グランドマスター ヴァレッタ様」

微笑するシオン


「ああ、そうか ではお茶を」「はい」


にいいと魔物の笑みが浮かぶシオン

未来の時間 王女マルゴ 彼女の婚姻は血の祝祭

サンバルテミの惨劇はユグノー達の大虐殺の事件となって‥くくっ



※モンゴメリ公との馬上槍試合での大怪我でアンリ二世は命を落とします

有名なノストラダムスの預言でも知られている事件です 老いた獅子と金の囲い

またモンゴメリ公の子孫にはロンメル将軍と英国のモンゴメリー将軍がいるとか?

カクヨム内 アンリ二世とノストラダムスhttps://kakuyomu.jp/works/16817330649966697032


※サンバルテミの惨劇は1572年8月 マルゴ王女とブルボン家のアンリとの結婚式の時にユグノー(新教徒)側の貴族の暗殺をキッカケにして起こり

多数のユグノーが惨殺される大事件となりました


余談ですが

フランスの王家ヴァロア家

この後 サリカ法で女系相続を認めない法律の為に男系が絶え、傍系であった

ブルボン家のアンリが最後の王朝を開く事になります

※事情によりマルゴ王女との間には子供はいません



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