第153話 役を演じるシオンとヴィクトリアン

此処はマルタ島 

城塞で騎士たちがそれぞれの言語でそれは賑やかに話している。

「最近 またイスラムの海賊どもの動きが活発だ」

「イタリアの村がまた襲われたそうだ」「商船も襲われたぞ」


水に少しばかりワインを入れたものを口にしている。

これは衛生上の理由でもある 安全な水というのは貴重

他にも彼等の為に蜂蜜入りの甘いレモネードなどもあった。

たまにアーモンドミルクなども


「そういえば あのオスマン帝国の皇帝 皇帝の乳母という者は?」

「身体の方は復調したようだが かなり怯えている

家族の孫娘シュルーク姫に連れの女性の方は落ち着いているが‥」


そこに朗らかにシオンが声をかける。

「水は足りておりますか? 

それに焼き菓子とチーズにザクロやイチジクの果実もあります」

シオン、長い黒髪を後ろで一つに縛り 印象的な青い瞳 綺麗な面立ちをした少年


「夕飯は シオン?」騎士の一人が下働きの少年シオンに話しかけた。

「はい、騎士様 コックの話だと港から良い魚などが届きましたから 

魚の煮込み料理にそれからウサギか鶏の予定です」


そこに一人の女が話かけてきた 麗しい貴婦人

「ごきげんよう騎士様たち 差し入れを持って参りましたわ」


「ウイストン子爵夫人 相変わらず美しい」 「まあ、騎士様たら」

「あ、シオン これらを配って頂戴 クレタ島のキャラメルにワインですのよ」

金の巻き毛、猫を思わせる緑色の瞳の貴婦人は

使用人に持たせた箱を指さして指図した。


「はい、奥様」シオンは微笑して箱から取り出して手早く配ってゆく。


「シオン、以前は私の元で働いて‥」「はい奥様」

「貴方は仕事が下手で困った子だったわ シオン」「はい」


「だから鞭で身体に覚えさせてあげたけど また鞭は時々は必要かしらね」

「奥様、それだけは‥」「うふふ」


小さな声でシオンは話し出す「やりすぎだよヴィクトリアン」

「あら、シオンさま それぐらいしないと おほほ」

シオンはウイストン子爵夫人ことヴィクトリアン


彼女の服にある携帯用の小さなベルトの鞭に目をやるシオン

「また鞭を使いたいようで本当に楽しそうだねヴィクトリアン」「おほほほっ」


という訳でシオンの口元が歪んでいた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る