第144話 パシャ(高官)の一人 ウルグ・アリと‥

イスラムの海賊 

イタリア生まれの少年ジョバンニ 神父になるはずだった彼は


イスラムの海賊に少年の頃に囚われ、最初は低下層の奴隷 ガレー船の漕ぎ手だった

だが、今では力ある海賊の一人として さらにはオスマン帝国の高官パシャ、軍の幹部にまで出世した 今の名前はウルグ・アリ


船の上で青い海を眺めながら束の間 静かな時間の中にいたのだが‥

「最近、あの子ネズミどもが来ないな‥サラにそれから

サラの兄らしき少年 吟遊詩人のシオンだったか」


彼らと交わす懐かしい故郷イタリア語での小気味よい楽しい会話に

笑い声とリュートの歌声

シオンが時折持って来るイタリア産のワインにチーズに‥

「本来なら、イスラムに改宗した俺にとって酒はまずいが‥」


「魔物の綺麗な子供たち‥」


何か物足りなさと一抹の寂しさが胸の奥にある この感情は‥?


「当分、お二人は来れませんのですよ ウルグアリ様」

後ろからの声 何処か毒を含んだ妖艶な女の声がした。


振り返ると一人の女が立っている。


金の巻き毛に猫を思わせる緑色の瞳 妖艶な美女が其処にいた。


「お前は?」ウルグアリが問いかける。

「ヴィクトリアンと申します 偉大なる幸運の天使に愛されたウルグアリ様」


「シオン様たちに頼まれたワインなどをお届けに」「そうか 有難う」


「お前も魔物なのだな」

「うふふ なんなら、夜の床で確かめ見ますか?お慰めしますわ」

ヴィクトリアン、美貌を持ち彼女の完璧な肢体が見てとれる。


綺麗な整った赤い唇 少しばかり舌を出して自分の唇をなめるヴィクトリアン

まるで獲物を前にした肉食獣のよう


「いや、こちらが食べられそうだ やめておく」

「まあ、そんな‥またお気が変わったら ぜひ うふふ」

微笑して、それから笑い声を残してヴィクトリアンは消えた。 

土産のワインにチーズなどを残して‥





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