第142話 サラの呟き ヴァレッタ隊長とサラ

騒ぎの後‥ヴァレッタ隊長は船室に戻っていた。

ガレー船はゆっくりと左右に揺れている。

小さな机と椅子 椅子に座ったまま、ため息がまた一つ


海に落ちていったシオン


魔物で吟遊詩人の姿をした少年シオン


彼は無事だろうか?

シオンは言った 『僕は死なない』 


それはまるで今回の事を知っていたかのように‥


部屋にはシオンが置き忘れたリュートがある。

「シオン」ため息と共に呟くヴァレッタ隊長


「…誰だ!」気配に気が付きヴァレッタ隊長は振り返る。


「シオンちゃんの事を心配してくれて有難う ヴァレッタ隊長」

少女の穏やかな声


其処に居るのはシオンによく似た長い黒髪に海のような青い瞳の美少女


「シオンの妹 サラだったか」「うふふ、私はシオンちゃんの分身のようなもの」

「それは一体どういう意味だ?」ヴァレッタ隊長の問いにサラが言葉を返す。


「私がいるのはシオンちゃんが消えてないってことよ」サラ


「無事なのか?」「うふふ」


「シオンちゃんが選んだ選択で一番これが無難だったの

焼き殺される可能性もあったから…でも」サラ


「でも?」「思っていたより、ちょっとシオンちゃんの傷は深いかも」


「しばらくは姿を現さない」そう言ったサラの声はシオンの声と共鳴した声

シオンとサラの声が重なる そして、束の間にその姿もシオンに代わる


「あ‥」驚くヴァレッタ隊長の前でシオンの姿からまたサラの姿に代わった。

戻ったのだった。


今度はシオンの声でサラが言う

「しばらく忘れていてください ヴァレッタ様 僕はまた、姿を現すけど」


サラの顔 綺麗な美少女の顔

片眼には黒いくぼみ‥片眼の青い目だけがヴァレッタ隊長を見る。


「リュート預けておきますね うふふ」

そうしてゆっくり空間に溶けるようにサラの姿が薄くなり消え去る。




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