第124話 マルタの港(グランドハーバー)・グランドマスター リラダン総長とシオン
シオンには海戦の結末が視えていた。
彼の青い瞳に映るのは
スペイン帝国、ヴェネチア、教皇たちの多くの船が沈むゆく姿 連合軍の船
数知れない多数の爆音
爆音とともに大砲が撃ち込まれ
悲鳴を上げながら兵士たち、騎士たちが青い海へと引きずり込まれてゆく。
互いに切り裂かれる甲板の上の者たち兵士たち、火縄銃の餌食に
ギリシャの
戦の後に溺れた者たちの死体で出来た白骨の山が孤島に置かれる。
シオンが手を貸して、幾つかの船を破壊する事もできるが
それは生憎、数隻のガレー船のみ
戦局には変化はない
マルタの港、グランドハーバーで‥
「リラダン総長」シオン
綺麗な魔物、吟遊詩人シオンは優しく穏やかな表情でリラダン総長を見ていた。
「シオンか、久しぶりだな」リラダン総長
「はい、グランドマスター、総長様」シオン
海の波音が響く、海戦に出発前の慌ただしい中でのわずかな休息の時間
「地中海の交易路、地中海を奪うようだ」
「ギリシャにロドス島・・今度はヴェネチアの保有する地中海の島々」
「騎士団はキリスト教徒を守る盾、
「オスマン帝国、赤ひげの海賊どもに
商船は襲われ、海沿いの街や村は焼かれ人々の多くが攫われて奴隷となった」
「ここしばらく、被害が拡大する一方、しかも穏健派であり貿易相手のヴェネチアの保有する地中海の島々も奪われて、ヴェネチアも戦に加わる」リラダン総長
「…・・」シオンは黙って聞いている。
「以前ロドス島包囲戦では手伝ってくれたが あれは島の近くだったからだろう
今回は陸から離れた海の上」
「ロドス島包囲戦
あの時の姿は巡礼者の服 頭からかぶったフードをしていたシオン」リラダン総長
「今回はどうしても行くのですね」シオン
「教皇とスペインの王である皇帝陛下カール5世陛下の為でもある」
「お前が止めるのは私が死ぬのか?海戦で死ぬのか」リラダン総長
「…そのようには申しませんが」シオン
「総長!ブルクの方からも準備が整いました」予備声にハッとして答える
「今行く 準備は整ったか?」リラダン総長
振り返るとシオンの姿はかき消すように消えていたのだった。
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