第119話 マルタの施政院、病院の中庭と独りの老人

マルタ騎士団の施政院、病院の中庭で老人はため息をつく。


イベリア半島

カステーリア王国の女王とアラゴンの王との婚姻に

レコンキスタ《国土回復運動の戦い》でイスラムの王国は滅び去った

スペインの誕生


動乱と疫病ペストで混乱していた頃

人々は私達ユダヤ人を…多くが殺されていったのだ。


そう‥

私がまだ二十代だったあの時に


私が出会った 美しい少女サラ 

貴族の老夫婦が孤児だったサラを救い養女に

彼女の家庭教師として私は長く傍にいて‥楽しい時間を過ごし、それから


動乱の中でサラは燃え上がる屋敷にとり残され‥私は助ける事が出来なかった。


先程出会ったサラによく似た少年、吟遊詩人は何者だろうか?


「あの、お爺様 どうかなさったの?」マーニャ

忙しく看護師として走り廻るマーニャは 彼に気がつき声をかけた


「ああ、マーニャすまない今日は滞在先の屋敷に帰るよ また来るからね」

少し青ざめた表情で彼は言う

「わかりましたわ お気をつけて」マーニャ


彼が立ち去り

「ああ、そうだった 先程の吟遊詩人さんと妹のサラさんが来てるから

お茶とお菓子をお持ちしなくては‥ヴァレッタ隊長のお部屋で待っているわね」

マーニャはそう呟いた。






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