第113話 代価はマルタの鷹一羽‥それに思い出話

「スペイン王であり皇帝陛下カルロス(カール)様への献上品

マルタ島の代価である鷹」呟くようにグランドマスター・リラダン総長が言う


マルタ島‥そこは南イタリアと北アフリカの中間にある孤島

何処までも広がる紺碧の空 吸い込まれそうな青の空には

優美に跳ぶ鷹たちがいる。


「どの子達も素晴らしいと思いますけど」

何処からともなく現れた吟遊詩人の少年シオン

「シオンか」「はい、グランドマスター・リラダン総長」


潮の匂いを含んだ海風が吹き渡り、リラダン総長たちとシオンを包み込む


部下の騎士たちはリラダン総長の目配せに軽く頷くと

青の空を舞い踊っていた鷹たちを地上へと呼び戻す

それから、彼等の腕に降り立った鷹たちを優しく、総長から少し離れた処へと連れてゆく。


じっと そんな様子をこの空色によく似たシオンの青い瞳が見ていた


「代価はマルタの鷹が一羽」呟いたシオンの言葉に「そうだ」総長が言葉を返す


「ご報告に参りましたよ 頼まれていた事にそれから‥」

そう言いながらシオンの綺麗な青い瞳は リラダン総長が懐から出した子袋の菓子に

食い入るように見つめていた‥。

「本当に子供のように食い意地だけはあるなシオン」

苦笑しながらリラダン総長が言う


「…うふっ」にっこりと笑顔 素晴らしい微笑でシオンが答えた。


「私の故郷の菓子にすみれの砂糖菓子 それと蜂蜜菓子と‥」

リラダン総長の言葉に シオンの瞳が輝いている


それらの菓子の御裾分けに「有難うございます総長さま まるで天使のようです!」

「あ~まったく お前ときたら、シオン あの南欧の頃のようだな」リラダン総長


「え?」シオン


「多分、お前が消したはずの私の記憶だ どうゆ訳だか思い出した

私の子供時代、祭りで出会い、何度も遊んだ あの頃のままの姿かシオン」


「‥‥・」その言葉に一瞬驚いたようだったが そのままシオンは黙っている。


「ジャン、ヴァレッタ隊長、彼とも会っていたが‥」リラダン総長


「…菓子だけでなく南欧のワインもある 

それに生ハムに魚料理とブルーチーズにパン食べるだろう?」リラダン総長

「宜しいのですか?姿の変わらぬ魔物の私ですけど」シオン


「ああ、壺に入ったミントと蜂蜜入りのレモネードもあったか」リラダン総長


「二人で あの頃の話でもしたいが、どうだなシオン」「はい、総長様」


 

 

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