第108話 パリ‥タンブル塔の近くで テンプル騎士の幽霊

それは‥ただの一夜の幻


パリの都にいるマルタ騎士の者達

「パリも久しぶりか」「そうですね ジャン」「はい、ヴァレッタ隊長」


ヴァレッタ隊長たちは 

パリの支部近くの教会での騎士団の仕事に貴族の一人に屋敷に招かれ

食事やワインお楽しんだ。


夜の星灯りの中で

一時的な住まいである屋敷に馬に乗って帰宅する途中で

「おや、あれは‥」「まずい、夜盗があそこの馬車を狙っているぞ」


僅かな差で、夜盗たちは馬車に襲い掛かった

御者は悲鳴を上げ、振り落されそのまま殴り倒される

馬車の扉を強引に開けて

「さあ、金を寄越しな 命は惜しいだろう」

「うわああ 命だけは・・」「きゃああ」震える主人とその妻


「綺麗な奥方だ これはいい」白く細い奥方の腕を掴む夜盗の一人


その時だった 黒い空に低いうなるような音

その後で大きな落雷


まるで狙い定めたように 夜盗の一人の身体を貫く雷

「ぎやあああ」夜盗が声をあげて、倒れ込む 


白い姿の者達が其処に立つ 鎧姿 それは‥


その幽霊は‥‥今は無いテンプル騎士団の者達


「うわあああ」「ぎゃあああ」夜盗たちが逃げ去ってゆく


白く淡く光る騎士の幽霊は 微笑を浮かべて消えてゆく


次にはようやくたどり着いた 

ヴァレッタ隊長 マルタ騎士たちが襲われた馬車の者達に声をかけた。


「は、はい 大丈夫です」「今のは一体?」


ヴァレッタ隊長はタンブル塔を見上げて


「此処はタンブル塔近くだったか‥という事は

タンブルは本来 十字軍の一つ、テンプル騎士団の砦だった場所」


「彼等は最初、巡礼者の警備を勤めていた

その職務の通り、守るべき者達を守ったという事か」


夜の静かな静寂の中で

「フランスの王に テンプル騎士団は滅ぼされたのだったな」


「無実の罪での惨殺‥王に恨みの言葉を残して」

そっと呟く隊長


それから数百年後に 最後の仏蘭西の王と家族は此処

タンブル塔に閉じ込められることになる。

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