第102話 すれ違いと中庭の噴水
僅かばかりの月日である 今、気がつけば
皇子ムスタファの想い人としてマリアは彼の大きな屋敷に住んでいる。
マリアは戸惑うばかり‥
「リヒター修道様は連絡が取れなくなってしまったわ
私の事を心配してくれる手紙は何通も来たけど‥」ため息を一つ
「代わりに迎えに来るはずの教会の方は来ない」
「ああ、マルコ 貴方は何処にいるの・・貴方を捜しているのに
今の名前はイヴァン」更にもう一つのため息をつくマリア
窓辺のバルコニーでしばらく綺麗な中庭の噴水に緑の風景を見ていたが
「お茶とお食事でございます」
「あ、はい」マリアは呼ばれた声にハッとして答え、屋敷の中へ
彼女の前には
チャイ‥甘い香辛料入りのミルクテイにナツメヤシ(デーツ)の菓子
お気に入りとなった蜂蜜入りの淡いピンク色の薔薇水などが並んだ後で
次には鶏肉の炊き込みピラフなども並ぶ
その時だった 噴水のある庭先近くで会話の声
「では、お屋敷の姫君の為に?」「ああ、そうだ」
まだ若い少年ともいえる人物と屋敷に居る中年の家臣
「欧州の本とヴェネチアの菓子をお持ちします ではまた伺います」
商人である彼が答える
「頼んだぞイヴァン」「はい」朗らかに答えイヴァンは立ち去った。
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