第101話 二人の王子と仏蘭西(フランス)の王宮

此方はフランスの王宮

「では父王はご無事で過ごされているのでしょうか?」

「父上‥厳しい取り調べとか、まさか拷問とか」

二人のまだ幼い王子が涙を浮かべて 安否を問うた。


「‥‥」交渉の中心人物のフランソワの母ルイーズ皇后は沈黙したままである。


「いえ、御心配には及びません スペイン王であり神聖ローマ皇帝カール5世陛下は

フランク王国から続く フランス王国

高貴なヴァロア朝の王 フランソワ陛下を乱暴に扱う事はありませんゆえに」

リラダン総長がやんわりと断言する。


「しかし、厳しい詰問などは‥」

と此処で何故か吟遊詩人であるシオンはぽつりと漏らす


「住まいなどのお暮しは不自由されておられませんでしょうか?

それにお食事など もしや、実は普段は石牢屋などに?」

涙を浮かべて貴婦人たちが言う

「ああ、敵に囲まれ、どんなにか‥」これまた貴婦人


悪運が強く、世渡りが上手い王の事を知る家臣たちは

何とも言えぬ顔をしている

「スペイン王宮で貴婦人や貴族をたぶらかすなどのいつも悪さを‥」

「間違いない」「貢ぎ物・・いや贈り物を貰っているとも商人から聞いたが」


「そうですね 確かに取り調べは‥」シオン

「まああ、なんて事でしょう!」涙を流す貴婦人の一人


「シオン」リラダン総長 

「正確には『取り調べ』という『茶会』に『遠乗り』でしたが‥」シオン


「国務の為にもフランソワ陛下には戻って頂かないと」家臣


「大事な父王の為に 身代わりの人質ですね」震える声で王子の一人

「……」涙を浮かべ 震える幼い王子たち 

父と同じ名を持つ長子フランソワと次男アンリ


王の解放 その為に二人の王子はスペイン側の人質となるという


「身の安全は保障されます 扱いも王族として相応しく」


今度は家臣や貴婦人たちが長子のフランソワ王子たちを取り囲み、慰めの言葉を口々にしている

次男の王子には忘れられたように誰もいないように思えたが‥


そこに金の髪をした妖精のように綺麗な女性

うら若いそれは美しい貴婦人が

次男のアンリ王子を心配して涙を流しながら抱きしめる

「王子さま」「あ、あ‥あの」


後には次男アンリがアンリ2世となり、この時の年上の美しい貴婦人

彼の生涯で深く愛したデイアーヌ・ポワテイエを愛妾にするのは後々の話であり

アンリ2世の妃にはカトリーヌ・ド・メデイシス(メデイチ)となる事もまた‥





※22年11月11日11時半前後 初稿 修正





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る